さんさんと降り注ぐ太陽に、なんだか皮膚がジリジリこげていっているような気がする。
影に入れば、まあ涼しくなるけれど、影から出ると、猛烈に暑く感じる。
……あー……夏が近いなあ。




5時間目 自動販売機と夏




BASARA高等学園。ちなみに公立。田舎にあるため、全校生徒が凄く少ない。
故に廃校寸前だ──。そんなBASARA高等学園に通っているに、今、非常に嫌な問題が立ち上がっている。

片手に団扇、頭の上にタオルを乗せ、ギリギリまでスカートをたくしあげ、は一言呟いた。




「……あつい」




その声が聞こえたのか、隣の席の元親が、これまた右手を顔の横で振り、風を作りながら
「そんな事、しってる」と不機嫌そうに答えた。




「あついあついあついあついあーーーつーーーいーー」

「うるせえっ、これ以上暑いって言うなっ! っていうか、お前は団扇持ってるから、まだ涼しいだろうが!」

「しょうがないじゃん暑いもんは暑いんだから」

「心頭滅却しろ、心頭滅却!」

「ムリムリ、絶対ムリー! だってお坊さんじゃないし!」

「っていうかスカート、スカートお前危ないから! たくし上げるな、下げろ!」

「良いじゃん、別に……減るもんじゃないし」

「……お前、女としてのプライドは持てよ……」

「ありがとう、いざとなったら元親のお嫁さんにしてね!」

「ああ、はいはい。お前の貰い手なんて居ないだろうからな。いざとなったら俺が貰ってやるよ」

「うわーありがとー元親優しいー」

「棒読みはやめろ」




今は12時40分。絶賛昼休み中だ。
だと言うのに、のお弁当の箸は進まない。なんだか、食べる気がしない。
家から持ってきたお茶は、三時間目の休み時間に底をつきた。今、には飲み物が無い。
なので、は今、すごく! 喉が渇いている。




「ねー元親ー、元親のお茶ちょうだい」

「へ? あ、わりー、俺のお茶、もう尽きてるんだわ」

「……まじか」

「まじまじ、おおまじ」

「……元親ージュース買いに行こう、ジュース」

「ジュース? 何処へ」

「最近、入ったじゃん、学校にさ、自販機が。だから、そこに買いに行こうよ」

「ん、ああ良いぜ。って、、お前、金持ってきてるのか?」

「一応ね、一応」

「なら良いんだ」

「何が?」

「いや、金が無い! 元親買って! とか言われたら、
 俺だって金あんま持ってきてねーよ! って返そうかと思ってたからな」




そういって、「でも要らない心配だったな」と言って元親が苦笑する。
達は席を立ち、この前設置されたばかりの自販機に向かって歩き出した。




「そういえばさー」

「んー?」

「元親、この前、寝てたじゃんか、授業中に。なんで? 勉強でもしてたの?」

「あ、あれか……いや、前日の夜まで、最近発売したゲームやってたからな」

「ゲーム? ゲームやるんだ、元親も」

「まあ、やるだろ。ドラクエとか、FFとか……そういう大作系しかしてねえけど」

「そうなんだ、また今度、ゲーム貸そうか?」

「おー。楽しみにしてる。じゃあ、俺は漫画貸してやるよ。お前が読みたがっていたヤツ」

「ありがと! んじゃあさ、アクションとか、RPGとか、どういう系が好みなの?」

「そうだな、別にどれでも良いぜ。お前が一番ススめるヤツ、持ってきてくれよ」

「わかった」




何気ない雑談を交わしながら、自販機の前につく。自販機には沢山の種類のジュースが飾られており、
正直どれにしようかなーと迷った。
……迷った挙句、買ったのはよく買う、お気に入りのジュースだったのだけれど。

プルタブを開けて、近くの壁に寄りかかりながら飲む。丁度、壁が影になっていて、凄い涼しい。
「あー美味しい」なんて、一人で満足げに声を出していると、元親がジュースの取り出し口で、
「くっ、こ、このっ!」とか言って何だか悪戦苦闘していた。

何、どうしたんだろう。と思って、元親の方をひょいと覗き込むと、なにやら自販機の取り出し口の部分の何処かに、
缶が引っかかっているらしい。あー、そういうことあるよねー。そんな事を思いながら元親を眺める。




「ちょ、なんだよっこれっ!」

「自販機ですよ元親さん」

「それは知ってる。違う、俺が言いたいのは……」

「んー、みなまで言わなくていいよ。あれでしょ、自販機にひっかかってるんでしょ? 缶が」

「そうそう、取れねえんだけど!」

「ま、そういうこともあるよー。ガコガコ動かしていたら何時かは取れるよ、頑張れ!」

「手伝えよ!」

「手伝えって、どうやって。ムリだよ……」




そういいながら肩を竦めて見せたら、元親が「へえへえそうですか」と、語気を荒めて、口を尖らせた。
うわー……似合わない。

そんな事を思いながら、ジュースを飲む手を止めて、元親に目をやる。
のアドバイス通り、ガコガコと音をたてながら、ジュースの缶を動かす。

どれくらい、まあ何分かぐらいだろうけれど。そんぐらいしてたら、缶は綺麗に取れ、
元親が嬉しそうに「やった……」と呟いているのが見えた。

の横にもたれかかり、プルタブを開け、ジュースを口に運び、「ぷはー!」と声を出す。お前は親父か。




「元親おやじくさいー」

「なっ、お前! 酷いヤツだな」

「酷くないよ、普通の人はそう思うから。それを代弁したんだよー。
 うわー優しいー!」

「うわ、最悪ー」

「うっさい」

「お前、もっと女らしくしろよ」

「だったら元親はもっと男らしくなりなよ」

「なっ! 俺は男らしいじゃねーか! 凄く」

「はははは」

「乾いた笑いはいらねえよ……」

「まあ、ほら、あれじゃん。嫁の貰い手なかったら、元親が貰ってくれるんでしょ?
 だから、別に女らしくしなくても良いじゃん……まあ、でも人並みには女らしいと思うんだけれど」

「……」




元親がに、呆れたような眼差しを向け、「何処が」と語尾を上げ調子に言う。
は声を一オクターブぐらい高くして、「もうっ、酷いなあ元親はー!」と言うと、元親が「キモイぞ、お前!」と噴出した。

いや、自分でも分かっていたけれど……え、ひど。

飲み終わった缶ジュースを、自販機の横にあるゴミ箱に入れ、教室へと向かう。

元親が一言、呟くように言った。




「やっぱ、お前は普段が一番だな……」

「でしょ」





は笑った。




(続く)

なんだこの元親相手のドリームは。違う、普通に友情モンを書こうとしたんです。
学園BASARAだし、高校生だし、高校生っぽいことさせたいなーって思ったんですけれど。あれ。目標は何処へ?

高校生ー高校生ーとか思いつつ、書きました。
もし、読んでいる方が少しでも微笑ましく思っていただければ幸いです。

……主人公の性格がイヤミな感じにならないよう気をつけたんですけれど……、
なんか……もう、どうよ。


2007/06/01