俺は、小さい頃から好きなコをいじめたくなる性格だ。
好きなコの悲しそうな顔とか、泣きそうな顔とかは、あんまり見たくないはずなのに。

そのコに、俺の事だけをみてほしかったから、いじめてたのかもしれない。
時々、度が過ぎすぎて、頭を硬いもので殴られることもあったけど。

しかもその好きなコを苛めたくなる性格は、今も続いているんだけど。




好きな人に自分を見て欲しいと思うのは当然でしょ。





居た。
いつもの場所に、いつものように、王子の横に座って、嬉しそうに話している。
声をかけようか。やめておこうか。二つの感情が入り混じっている中、体だけは正直で、
いつの間にかちゃんの前に立っていた。





「おーうじー」


「ん、え?何、カイル。どうしたの?」


「あ、カイル。おはよう。」


「うん、おはよう、ちゃん。
王子ー、聞いてくださいよー。昨日、女の子に振られちゃってー。」





そういって、俺はちゃんと王子の真ん中に座った。
ちゃんが一瞬驚いたような表情を見せたが、それに構わず、言葉を続けた。





「酷くないですかー。なんか、デート中に他の女の子見てただけなのに、
頬を凄い勢いで叩かれちゃいました。酷いですよね!」


「…いや、それはカイルが悪いと思うよ、僕は。もそう思わない?」


「あー、うん。思う。だって、デート中でしょ。自分の事だけ見てて欲しいでしょ。なのに、ねえ?」


「ね。って事で、カイルが悪いよ!僕との結論。」


「えええ、ちょっと王子もちゃんも酷いですよ!
俺は悲しい!猛烈に悲しい!!」





そういって、くうう、と言葉を漏らすと、王子は「あはは」と笑って、続けた。





「僕、そろそろ行かなくちゃ。
ばいばい、、カイル。」


「さよならー、王子ー」


「あっ、王子!も、一緒に行っ…!?!」





王子が立ち上がると、ちゃんも立ち上がる。
王子が何処かへ行こうとすると、ちゃんも、行こうとする。

…面白くないなー。
そう思ったときには、俺はちゃんの服の裾を掴んでいた。

ちゃんは、盛大に…こけた。
うっわー、凄いなあ。顔から行った。地面に。


そんな事を思っていると、ちゃんがムクリと起き上がり、俺に向かって怒ったように言葉を発した。





「…な、何するの、カイル…」


「うーん、なんだろうね?」


「…顔、痛かったんだけど…」


「そっか、ごめんね。」


「……カイルってさあ、なんかに辛くないですか。」





そういって、ちゃんは「はあ」とため息を付きつつその場から立ち上がった。
そういって、俺の横に座って、言葉を続けた。





「…カイルの事は、よく聞いてたんだけどなー。格好良いとか!優しいとか!
なのに、…に酷くない?」


「そうかなー?俺は普通に接してるつもりだけど。」


「カイルのそれが普通の接し方なんですか、そうなんですか。
…も、どうでも良いけど…はちょっと悟りの域に入った、うん。本当に。」


「あはは、悟りかー。格好良いねー。」


「……あのさ、カイル。」


「んー?」


、王子のところに行きたいんだ。」


「そうなんだ。」


「裾を掴んでる手、離してよ。」


「…ヤだ。」





俺がそう言うと、ちゃんは少し困ったような表情を見せた。
だってこの手を離したら、王子のとこいっちゃうんだよね。だったら離せないって。

そんな事を考えつつ、「ちゃん、もー少し俺とお話しましょうよー。」と言う。
すると、ちゃんは「や、だから、、王子のところに行きたいし。」と言って、掴んでいる手を強引に離させて、
立ち上がって、その場を離れようとした。


…えー、やだなー、ちゃん。王子、王子って。俺と少しぐらい話したって良いのにさ。
不満を心の中で盛大に漏らしつつ、「楽しくないなぁ。」と言った。ちゃんには聞こえないように。

ちゃんが「……じゃ、さよならー。」と言って、その場を去ろうとする。わー、酷い。



ちょっとだけ、……イラついて、裾ではなく、ちゃんの手を思いっきり引っ張って、俺の方へと倒れてくるように仕向けた。
ちゃんが「おあっ!!?」とか、何とか驚いたような声を出して、予想通り
俺の方へと倒れてきた。


それを受け止める。というか。受け止めるフリして抱きしめた。
ちゃんが、「…!!?か、カイルッ!?」と、焦ったような声を出した。かーわーいーいーなー。





ちゃん、言ったよね。俺がなんで、ちゃんをいじめるの、って。」


「…い、言ったけど…。」


「何でか知りたいって、言ったよね。」


「…うん。」


「あのさー、俺って。
好きなコ、苛めたくなるんだよね。」


「…は?え、ど、どういう意味……」


「そういう意味。」





そういって、俺はちゃんから自分の身体を離して、顔に満面の笑みを浮かべた。
意味を理解したのか、ちゃんの顔が、凄く赤くなっていく。






「…え、えっと、それはその、なんていうか…。
え、のうぬぼれで無かったら、その、…え?」


「うん、そーだねー。
きっとちゃんの考えてる通り。」





ちゃんが、困惑した面持ちで、「え、ちょっ、…は??」とか、ずっと言い続けている。
かーわいーいなー。なんか、もっといじめたくなるんだけどなー。俺、ちょっと病気かも。


そんな事を思いつつ、
ちゃんの耳元に、唇を近づけて。小さく呟いた。





「好きだよ。ちゃん。」





ちゃんは、タコみたいに顔を赤くして、俺を振り切って逃げてしまった。
わー、俺ふられちゃった?…そんな訳ない。だって、顔真っ赤だったし。逆に脈アリでしょう、アレは。

返事とか、いつ聞けるのかなー。楽しみだな。



願わくは、俺の望む答えでありますように、と願いつつ。





(終わり。)


後書き。


なんだろう。カイルさんが壊れ  た  !
でも楽しかったから良い。ひらきなおってきまーす。


2006.3.30