「アイヤヤヤヤ! お、お前が日本の言ってた『急に現れるなんだか変な人』あるね!」

「……へ?」




<木の上で>




「知ってるあるよ、日本が我の屋敷から草履持って行った時も、ちゃあーんと見てたある!
 日本が『中国さん、頭……撫でられちゃいました』って言っていた、あの、あの……!」

「へ、なに、なにー!?」




 目を開けて、周りを見渡していた。いつもの川原ではなく、目の前に赤色の大きな屋敷みたいな物が建っている。此処は何処だろう、そんな風に思って居たら、突如として現れた中国に凄い勢いで迫られた。えええー何ー! この人!
 正直、今日も日本に会えるとばかり思っていたから、驚いた。頭撫でて良いか、という問いに対しての答えをまだ貰っていないし。
 そんな事を考えていたら、目の前の中国に「ちゃんと聞くあるー!」と怒られた。え、な、何が。




「す、すいません……、あの、何ですか」

「我の日本に近づくなあるー!」

「わ、我のにほっ……!?」

「そうある、日本は我の弟のような存在で、小さくて可愛らしくて、我が昔から育ててきていたのに!
 我もあんまり頭撫でてないのに! それどころか時折、拒否されるのに! 酷いあるー!」

「あ、あの、え? あの、ちょっ……」

「う、うううー……、酷いある酷いある酷いあるー!」

「ええー!? それって、その、八つ当たり……」

「違うある!」




 中国が凄い剣幕でに睨ん……、でいるのだろうか。瞳に涙を湛え、怒りの為かぷるぷると震えている体は、たとえ年上だとしても可愛さを感じられずには居られない。
 にへ、と思わず笑みを浮かべると、中国が「な、何笑っているあるー! ど、どうせ、我のこと、哀れんでいるあるなっ! 違うあるー! 我は日本とかくれんぼしたり鬼ごっこしたり二胡弾いたりしているあるー!」と、涙交じりの声で叫ぶ。

 いや……、え、何、どうしたの。この人は。親馬鹿したいだけなのか。
 騒ぎを聞きつけたのか、どこからか日本が「中国さん……?」と、やって来る。そして、の姿を目に留め、「さん、こんにちは」と軽く会釈をしてきた。も会釈を返す。

 中国はさっきまでメソメソと泣いていたのだけれど、日本が来た瞬間、笑顔を浮かべ日本の方へ振り向いた。日本が現れたのは中国の後ろだから、必然的に中国はに背を向けることになる。
 中国は本当に嬉しそうに、「日本ー!」と言いながら、日本の傍へと寄って行き、言葉を続けた。



「日本、こいつが日本の言っていたあるねっ」

「そうです。……私の、……知り合い、ですから、中国さんも仲良くしてくださいね」

「に、日本がそう言うなら、しょーがねーあるなー!」




 中国はの方へくるりと向きかえり、「我は中国ある!」と自信満々に言い放ち、日本を横へ並ばせてから、「日本は我の弟分あるー」と、肩を持った。
 なんという変わり身の早さ、と思ったのは内緒にして、は自分の名前を告げる。




「あ、はい……。えっと、、です」

「よろしくある、! 日本に手を出したら我が黙ってないあるよー!」

「なんだか、お兄ちゃん、っていうか……まあ、そういう存在なんですね……」




 がそう言うと、日本は目を伏せ、頭を横に振った。え、否定、ですか。
 それを見て中国は心底ショックを受けたのか、日本の背に視線を合わせるように屈み、「日本酷いあるー!」と声を震わせ、日本の肩を掴んで揺する。
 日本はもう慣れっこなのか、いつもの無感情な表情で、中国をただ、見つめているだけだった。日本が何も言わないからなのか、中国は何時まで経っても日本の肩を揺するのを止めようとしない。寧ろ激しさを増していっているのは、の勘違いだろうか。




「……あの」

「なにあるー!」

「そんな風に肩を揺らしていたら、日本も話すことが出来ないと思うんですけれど」

「ややっ、すまんある! 日本ー」

「……いえ」




 が、恐る恐るそう言うと、中国は肩を揺らすのを止めて、日本に謝る。日本は少しふらふらしたのか、たたらを踏みつつも、言葉を発した。
 ……たたらを踏む日本可愛いなあ、くそう、とか思ってしまったは本当に何処かへと行けば良いんじゃないだろうか

 一人、自己嫌悪に陥っていると、日本の良く通る声が耳を突いた。




「……た、いせつな、人だとは、思います。……中国さんのこと」

「っ、に、日本ーー!!」




 中国はそう言って、日本にがばっと抱きついた。日本は一瞬驚いたように身を竦め、驚いたような表情を浮かべていた。けれど、中国の「日本ー日本ー!」と言う嬉しそうな声に自分まで嬉しくなったのか、微笑を浮かべ、一言、「……はい」と呟くように言っているのが聞こえた。

 なんていうか、ほのぼのとしているなー、と思う。小さい日本と中国、何て可愛い……!
 二人を見ながら、頬を緩ませていると、中国が日本から体を離して立ち上がり、「日本、一緒に遊ぼうある! 今日はなあーんにも無いから、なんでも出来るあるよー!」と声を弾ませた。
 それに日本は「……はい。だったら、さんも一緒に遊びましょう」と言いながら、を手招きした。




「え、良いの?」

「はい。……嫌なら、良いのですけれど」

「えっ、全然! 嫌じゃ無いよ! うわー、嬉しいなあ。ありがとう、何して遊ぶ?」

「我はかくれんぼがしたいあるー!」

「私は別に何でも……さんは?」

「え、も何でも良いよー」

「二人共なんでも良いあるね! なら、かくれんぼに決まりある!
 我が鬼、さあ二人共隠れてくるあるよー!」

さん、一緒に隠れましょう」

「え? あ、うん」




 日本がの手を引っ張る。はいきなりの事に驚いて、少し足をもつれさせたけれど、すぐに体制を建て直し、日本と一緒に歩いていく。

 何処へ行くのだろう、というか此処はどこなのだろう。そう疑問を口にしたら、日本は直ぐに答えを出してくれた。



「適当に歩いて、二人で隠れても見つからない場所へ行きます。そして此処は中国さんの家の土地の中です」

「へ、へえー……え? 中国さんの?」

「そうです。私は、此処でお世話になっているんです」

「そうなんだ?」

「はい、……あそこなんかどうでしょう」

「へ?」

「隠れるところ、です」




 日本は木の上を指差す。えええー、登れっていうのか……。まあ、登ったらそうだね、見つからないだろうしね。
 でもさ、、あんまり高い木はちょっと……。
 そう思いながらも、折角日本が見つけてくれたんだし、という理由で「あ、ああ、うん、良いね、見つからないだろうしね」と言う。すると日本は「じゃあ、登りましょう」と言い、木を登り始めた。

 えええええー! ちょっと待って、肯定したのが悪かったの!? ちが、もっと安全なところにしようよー!
 そう声を掛けようにも日本はもう既に登ってしまって、の名前を呼ぶ。こ、れは……選択権は……。




「え、のぼ、登るんだよね?」

「はい」

「……」

「…………さん?」

「あ、いや、今登りますんで……」




 覚悟を決めるしかないらしい。は深呼吸をしてから、木に手をかけ、登り始める。ファイト! 大丈夫、これぐらいの高さなら、本当に、本気で頑張れば登れる……はず。多分。
 足でしっかりと木の枝を踏みしめ、「ぐ、ぬっ!」とか力みながら登る。木の枝が折れたらどうしよう、なんていう考えが頭をよぎる。いや、大丈夫だよね! きっと! 頼むから折れないで欲しい。

 ──何分もかけて、ようやく日本の居るところまで登りきる。その頃には、はぜえぜえと、荒い息を吐いていた。正直、すごい恥ずかしい。日本が、「大丈夫ですか?」と声を掛けてくる、ので、それに手を上げて「大丈夫、大丈夫だから」と答えを返した。

 少しして、ようやく息が収まってきた時、日本が「さん」との名前を控えめに呼んだ。




「なにー?」

「私は、さんと友達になりたいです」

「え」

さんのことをもっと、ちゃんと良く知りたいです」

「え、なに、どうしたの」

「嫌ですか?」

「嫌じゃないよ、嬉しいよ。凄く。も日本の事、一杯知りたいし……」

「……有難うございます」




 そう言って、日本は軽く頭を下げた。つられても頭を下げる。……でも、なんで急にそんな事を言い出したのだろうか。友達、とか。知りたい、とか。
 そう訊くと、日本はいつもの表情で、




「──さんは、言いましたよね。『頭を撫でられるのは嫌か』と」

「……ああ、うん。言ったね」

「あの後、色々と考えたのですが……、やはり知り合ってわずかなのに、頭を撫でるという行為は……、その、なんというか……は、恥ずかしいじゃ、ないですか」




 日本は視線を下に逸らし、少々頬を赤らめながら、そう言う。……なに、これは。奥ゆかしい日本人、って感じなのか。そんな事を思いつつ、日本の少しずつ小さくなっていく声を聞き逃さまいと、は耳に集中を向ける。




「……それで、中国さんに色々とお話しを聞いたのですが、よく解らなくて……。
 でも、私は頭を撫でられることは恥ずかしいけれど、あんまり……嫌じゃなかったです。頭を撫でられること、嫌かどうかだったら私は、あんまり嫌じゃないです」

「んー……」




 日本は顔を俯かせた。これは、頭撫でても良いってこと、なのかな。なんというか、言葉に隠された真意を読み取るの、あんまり得意じゃ無いんだよね……。とりあえず、撫でても大丈夫なのだろうか。そんな事を思いつつ、日本を見つめる。

 小さくて、とても可愛くて。優しい、のだろう。華奢な体。その体にこれからどれだけの苦しみを背負うことになるのだろうか。どんどんと大きくなり、大国になる。──その為に、どれだけの犠牲を払うのだろうか。そう考えると、はいつも悲しい気分になり、なんだか頭を撫でてやりたくなる。『大丈夫』と、暗に伝えたいから、なのだろうか。『大丈夫』な訳がないのに。

 は思わず日本の頭に手を伸ばして、優しく撫でる。
 日本が顔を上げて、を伺い見る。ああ、もう! 可愛いなー!




「……さん」

「ごめんごめん、でも日本が可愛いからさっ、それに嫌じゃないんでしょ? 嫌じゃないんだったらお姉さんは日本の頭を撫でちゃうよー!」

「……良いですよ」

「本当に良いのー? 調子に乗るよ」

「はい。……友達になったのですから。それに、さんのことを知りたいですし、その為の行為なら、良いです」

「や……、我慢しなくても良いよ? 曖昧に誤魔化さずとも、嫌なら言ってくれれば良いから」




 日本の頭から手を離して、戻す。すると、日本はやんわりとの手を取り、自らの手を重ね、優しく微笑んだ。




「言いましたよ」

「へ?」

「……嫌じゃないと。これでは、駄目ですか?」

「だ、駄目じゃないよ! 全然!」




 がそう言うと、日本は「なら、大丈夫です」と言い、手をそっと離した。あ、なんか名残惜しい。
 そう思った瞬間、下から中国の声が聞こえてきた。




「日本ー!? ーっ! 何処に居るあるかー!?」

「に、日本ー! そこに居るのはわかっているある!」

ー!? どこあるー!」

「もう! 二人共、往生際が悪いある! 何処に居るあるかー!?」




 中国の声は、凄い近くで聞こえたり、ちょっと遠くの方から響いてきたり。なんだか、可笑しい。
 「ややっ、日本そこあるね!?」と言いながら見当違いの所を指差したり、「ー! 出てくるあるー! 出てこないと酔拳くらわせるあるよー!」と何かのポーズを取ったり。
 
 が小さく笑みをこぼすと、日本も可笑しく思ったのか、もしくはつられたのか、ふふ、と笑いを零した。

 木の上で、中国の声を聞きながら、と日本はくすくすと笑いあっていた。






(続く)

中国が哀れとかしか言えない……。曲聴きながら書いたのでノリノリですヘイヘイフー!
中国の敷地内に木があるとか無いとかそこらへんは良くわからんです……。竹は一杯生えてそう。
題名は……もう。全然思いつきません。誰か助けて。

2007/07/09