素直になれない二人




 イギリスが、いつものようにとアメリカの前にご飯を置く。
 アメリカがソレを見て、嫌そうな表情を浮かべながらもフォークとスプーンを器用に使い、食べ物を口に運ぶ。そして、机を挟んで向かい側に居るイギリスを見て、「お、美味しいよっ、すごく!」と、引きつったような笑みを浮かべた。

 ソレを見て、イギリスは満足そうに、微笑を浮かべ「そうか……、良かった」と、溜息と共にこぼした。
 もご飯を食べ、「美味しいねー」と言葉を発する。すると、イギリスは「そ、そうか!」と、又もや嬉しそうに声を発して、とアメリカがご飯を食べていくのを嬉しそうに見た後、「紅茶と、スコーンを取ってくるから、待ってろ」と言い残し、その場を去った。

 イギリスが去ったのと同時に、アメリカが「……う、ええ……」と呻くように言い、舌を出した。




「……ま、ずいよう……」

「そう?」

はおかしいぞ! イギリスと味覚が一緒になってきたんじゃないのか?」

「お、おかしいって……、いや、なんていうか……は美味しいと想うけれど」

「……おかしいぞ…」




 アメリカはぶつぶつと、「おかしい、絶対おかしい」と言いながらも、料理を口に運んでいく。はソレを見て、なんだか微笑ましくなり、アメリカの頭を撫でた。
 アメリカが頬を赤くして、「な、え、?」と、を仰ぎ見る。

 ──アメリカは、今、より小さい。なんていうか、ぱっとみ5,6歳に見える。けれど、やっぱり、時が進むたび、アメリカは大きくなって、の背を追い越すし、の事だって、忘れてしまうかもしれない。

 は、アメリカとイギリスのコンビが好きだ。目の前で、見ることが出来たからだろうか。夢、なんだろうけれど、その夢は今のの現実だ。夢を見ているにとっての、現実。
 頭に触れれば、柔らかな金糸のような髪の毛の感触が手に残るし、頬だって、身体だって、現実世界で触る人間のそれと変わりようがない。




「──もう、アメリカって優しいね! たまんないよ、、アメリカ好きーー!」

「俺も、の事好きだぞ!」

「アメリカーー!」

ーーーー!」




 アメリカがぴょん、と椅子から飛び降りての膝の上に座り、背中に手を回す。ぎゃああタマンナイです、本当に……!
 ぎゅっと、アメリカを抱きしめ返す。すると、アメリカも抱きしめる手に力を込めて返してくる。
 し、至福……、本当に今、死んでもいい……!

 っていうか、食事中にこんなコトしてもいいのかな、でもまあ、もう食べ終えたしね! とか色々考えながらアメリカを抱きしめていると、呆れたような溜息と共に、「お前ら何やってるんだ」と言う声が聞こえた。




「あ、イギリス、美味しかったよ、ありがとー!」

「……あ、ああ」

「イギリスー、俺もありがとー。
 で、それにしてもイギリス聞いてくれよ! が俺の事好きなんだって!」

「よ、良かったな……」

「ああ、イギリスの事も好きだよ、大好き」

「べ、別に聞いてない!」

「別に言いたかっただけだよー、アメリカもイギリスの事好き?」

「イギリスの料理の次ぐらいに好き」

「……」




 イギリスが「順位が良くわかんねえ……」と呟きながら、とアメリカの食器を重ね、テーブルの端に置く。そして、持ってきたのであろう白磁のティーカップとティーポットを机に置き、大きなお皿の上に山盛りのように乗ったスコーンを机の中心に置いた。
 ティーカップに、イギリスは慣れた手つきで紅茶を注ぎ、に差し出す。はそれを受け取り、口をつける。甘い香りと、甘い味。はっきり言えば、美味しい。




「イギリス、紅茶淹れるの上手だね」

「そりゃあ……。色々と手順を踏んでいるわけだから、美味しくないわけ、ないだろう」

「ふーん……、また、淹れ方教えてよ、イギリス」

「ああ」




 アメリカが「に、苦いぞ! これ!」と言いながら、砂糖をどばどばと紅茶に入れる。ちょ、入れすぎーー! イギリスが「紅茶はこういうものだろうが!」と言って、机越しにアメリカの頭を叩く。
 アメリカがむっとした表情でイギリスを仰ぎ見て、の膝から降り、イギリスの方へ走って行く。イギリスが怪訝そうな表情を浮かべ、「な、なんだよ……」と声を発し、イスから立ち上がり、アメリカの方へ向かおうとしたとき、アメリカが、「イギリスのばかーーー!」と言いながら、イギリスに向かってタックルをかました。

 子供といえど、衝撃はすさまじいものだろう。立ち上がったイギリスは、アメリカのタックルのせいで、後ろへ倒れ、頭を椅子にぶつけていた。がん、と鈍い音が響く。




「こんな苦いもん、人間の食べ物じゃないぞ!」

「おま……っ、ちょ、痛……」

「イギリスは人間じゃないぞ!!」





 思わず立ち上がって、イギリスとアメリカの様子を見に行くと、イギリスは本当に頭が痛いのか、後頭部を抑えて悶絶している。その上に、馬乗りになるようにアメリカが乗って、小さな手でイギリスの腹を叩いていた。えー……何このカオス。
 声をかけようにも、なんて声をかければ良いのか分からない。少し、固まる。え、本当なんていえば良いんだろう……「仲良いね!」? ……「今さっきのセリフはやめときなよー」? もしくは、「ちょっ、マジ萌える、チビアメリカとイギリスのツーショットハアハア」。うん、最後のは絶対却下として、本当マジどうしよう誰か助けて……!

 切実にそんな事を願いながら、ただただ二人を見つめていたら、イギリスががばっと上半身を起こして、「アメリカ!」と、アメリカの首根っこを掴んで、「お前をそんなヤツに育てた覚えはないぞ!」と、怒ったように言う。
 アメリカが「俺も育てられた覚えはないぞ!」と、返すと、イギリスはぐっと押し黙り、一瞬後、「……お、おまえ……! あれだけ色々としてやったのに……!」と声を震わせた。





「あれだけって、なんだ?」

「アメリカアアアア!!!」




 純粋な疑問で、言葉を発したのだろうアメリカを叩こうとして躊躇ったのか、イギリスはアメリカの眉間にデコピンを食らわした。って、痛いから! でこぴん超痛いから!! しかも眉間……急所じゃん。
 アメリカが「痛い!」と言って、じたばたと暴れ、イギリスの手から逃げ、の近くに来る。
 そして、の後ろに隠れながら、




「イギリスなんか嫌いだーーー! ばかーーー!」

「なっ、き、きら……! お、俺だって嫌いだ、ばかぁ!」




 イギリスが心底ショックを受けたかのような表情を浮かべて、声を震わせて怒鳴る。あ、あんまり怖くないですよ……。
 はもう、何もすることが出来ず、自分の席に戻り(その間、ずっとアメリカがの服の裾を握ってついてきた)、紅茶を飲む。
 まあ、二人の問題は二人で解決しなよ、って感じですよ。
 アメリカがの膝の上によじ登り、砂糖がめちゃくちゃ入っている紅茶を口に含む。耳が、少し赤い。きっと、頬も赤いんだろう。

 紅茶を机の上において、二人を交互に見た。

 ──二人共、素直じゃないなあ。

 嫌いとか言って、本当はそんな事思ってないだろうし、実はきっと、心の中で相手の事を信頼している。だからこそ、喧嘩だってできるのだろう。相手が自分を嫌わないと、知っているから。




「二人共、本当に素直じゃないね……」




 ぼそりと呟いて、は又もや紅茶を口に含む。
 紅茶は、少しだけ冷たくなっていた。





(終わり)

イギリスとアメリカが大好きです><
っていうか、ツンデレが大好きです。たまりません。
っていうか、紅茶ストレートは麦茶みたいな味するとか思うのは私だけでしょうか……。あれは麦茶だよ……。麦茶にレモン入れたらレモンティーっぽくなるかな……。

2007/06/17