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今日、は俺の所へ来てくれた。それだけでも嬉しいのに、は俺に手作りのクッキーをくれた。 あげる、と渡されたクッキーを、まじまじと見つめる俺に、は美味しくないかも、と苦笑気味に漏らした。 そんなことない、俺が作るよりは絶体に美味しい――。そう言おうとしたのだけれど、何故か喉の何処かにつっかかって、声が出なかった。しょうがないので、ふるふると首を横に振る。が笑った気がした。 「イギリス」 「なんだ」 「、イギリスの作ったスコーン食べたいなあ」 「……俺の?」 「そう。駄目かなー」 「っ、駄目じゃない!」 語気を荒めて言うと、「そっか、ありがとう!」と嬉しそうな声が返ってきた。 ぐらいだ。俺の料理を美味しいと言って食べてくれるのは。昔は…、アメリカも言ってくれたのだけれど、今では「まずいよ!」とにこやかな笑みを浮かべて言われる。なんだアイツは。俺を苛めたいのか。 他の奴らも、「こんなの食べ物じゃない!」と口を揃えて言ってくる。……これが食べ物じゃ無かったら、俺は何を食っていることになるんだ。 浮かんだ疑問をそのままにしておき、に「また今度……」と呟いた。 意味がわからなかったのか、は怪訝そうに表情を歪める。 「今日は準備が出来てないから……、スコーンは、また今度、」 ――お前が来たときに。 俺の言おうとしている言葉がわかったのだろう、は笑みを浮かべて「うん」と頷いた。 何故か頬に熱が集まるのを感じた。 には赤くなっているのを見られたくないから、背を向ける。ちょっと、というか、かなり変に思われたかもしれない。 そんなことを思っていると、が「でも」とすまなさそうに言葉を紡いだ。 「また、来るの遅くなるかも――」 その言葉に愕然としたのは言うまでもない。 は何時も、どこからともなく現れ、直ぐに消えてしまう。そして何年も経ってから、現れる――。 一年。日付で言えば三百六十五日。前は、長いとも思わなかった。矢のように過ぎていく日々。けれど、今は。 嫌だ、と言いそうになるのを何とか押し止め、「そうか」と一言だけ呟いた。 は「でも頑張る。イギリスのことをずっと考えてるよ。そしたら早く来れるかもしれないし!」と端から聞けば恋人同士が言い合うような言葉を呟いた。 思わずの方を向いて、口をぱくぱくとさせた。何か言おうとするが、何も言えない。考えがまとまらず、ただ頬に熱が集まるのを感じる。 「な、なななななにをっ」 「なにって……なにが?」 「ば、ばかぁっ! 俺をからかって楽しいのかよっ!」 「へ」 「そっ、そんな風に言って、どうせ他の奴らの所へ行くんだろ!」 「イギリス?」 「ばかぁーっ」 は訳がわからないと言う顔をしているが、一旦溢れた言葉はどうしても止まらない。 自分で自分に嫌悪する――どうしていつも、こんな。 「それにっ、なんで急に居なくなるんだよっ」 「えー。……さあ?」 「さあ? とか……っ、俺はいつだって」 お前のことを考えているのに。 吐き出しそうになった言葉を寸での所で止めて、の目を見つめる。 は苦笑を浮かべて、俺を見ていた。──違う。こんな表情をさせたいわけじゃ無いのに。 それでも言葉は溢れて、を困らせてしまう。 「が来てくれるのは嬉しい。けれど」 まるで駄々っ子だ。好きな人を困らせて困らせて。こんな事、したくないのに。 ぐ、と唇を噛み締め、「……ごめん」と呟いた。困らせるつもりは無かった、なんて言ったら言い訳がましくなる。 俯いて詫びると、が「ううん。気にしないでね」と優しく言うのが聞こえた。 ――本当は。本当に言いたいことは別にある。 でもそれは、を本当に困らせてしまう。 は違う。俺たちとは。──だから、傍に居てほしいだなんて、言えるはずも無い。 本当に言いたい言葉は、彼女を本当に困らせてしまう言葉だった。 終わり 英が乙女化している気がしないでもない。 2007/10/06 |