「うへえー、寒いなー、嫌だなー、ドイツードイツー日本ー日本ー!」

「……な、にしてるんですかと」

「うわあ、! え、なになに、どうしたのー? 俺になんか用ー?」




<寒い夜に>




 肌を刺す寒さ、……とまではいかないけれど、其れに近い寒さがの肌に、まとわりつく。寒い。正直、凄く。それはイタリアも同じだったようで、暖かさを求めてなのか徘徊していた。正直、怖い。

 ……今日、はどうやらイタリアの所に来たようだ。

 イタリアが、を見て嬉しそうに笑みを浮かべ、とてとてと近づいてくる。あれ、いま気付いたんだけどさ、って、ちょっとまって、あなた、裸に近い格好をなされているのですが。やめて近寄らないでストオオオオオップ!!!!

 そんなの思いも通じず、イタリアはに近寄ってきて、抱きついてきた。──裸に近い格好って、は言ったけれど、本当にそう言うしか出来ないほど、イタリアはやばかった。何がやばいって、やばい。上半身には何も着ずにズボンだけ履いている。そりゃあ、それだけだったら寒いよNE!



「えへー、、あったかいなー」

「あったかいとか、そういう前に、ふ、ふふふ服を着てください……!」

「ヴェー、俺、今から寝るし、服は面倒くさいからさー。それより、、一緒に寝ようよー。
 ねー俺からのお願い! 一生のお願い!」

「こっ……この前も一生のお願いって言ってたよね」

「良いじゃん別にー! の意地悪! 一緒に寝ようよ!」

「と、年頃の男の人がそんなことホイホイ言っちゃいけませんよ!」

ー、一緒に寝ようよー! 一緒に寝てくれないのー!?
 ねえ、ねえー!」



 イタリアがから体を離して、肩を掴み、いつもの表情、まあじゃっかん眉尻が下がり気味でそう問う。いつもの表情っていうか、まあ、あのホケホケしたような表情って言うか。うん。
 っていうかさ、一緒に寝ようよー、とかさ。ドイツとか誘えよ。もしくは、ロマーノっていう兄ちゃんが居るでしょうが。ロマーノ誘えば良いじゃん。兄ちゃん一緒に寝よー! みたいな。それのほうが、にとっては眼福だよ。

 そんな事を考えていると、イタリアが「ねー、ねー!」との肩を揺らし始めた。ちょ、酔う! 酔うから! 吐いちゃうからっ、ちょ!
 やめて、と声を出すものの何だか物凄い勢いで頭が揺れているからか、間延びした変な声しか出なかった。
 どうしよう……気持ちが、悪い……。イタリアの目の前で吐いたら、もう女として生きていられない……。

 そんな事を思っていたら、イタリアの後ろから「うるさいんだよコノヤロー!!」と言う声がして、続いてがん、と変な音が耳に入った。イタリアの手がの肩から離れる。おあ、なんか世界が回っている。イタリアは何があったのか、「ヴェー!」と言いながら、頭に手をやり、その場にうずくまっている。どうしたんですかイタリア。
 頭に手を当てて、気持ち悪さを何とか晴らそうとしていたら、の名前が前方から呼ばれた。



、人ん家で騒ぐな!」

「ん……、ああ、ロマーノ」



 まだ少し揺れる視界の中、ロマーノの姿が目に入る。腕を組み、何故か少し凹んだフライパンを持っている。眉間にしわを寄せていて、凄い機嫌が悪そうだ。



「今、何時だと思ってやがる!」

「え。……じゅ、十二時ぐらい?」

「ぜんぜん違うっ」

「ヴェー、兄ちゃん酷い……」

「うるさい! お前が悪い!」

「兄ちゃん酷い……」

「ロマーノ酷いー、けどまあ、なんていうかごめん。でもイタリアの方がより騒いでたよー」

「うるせー! どっちも俺の安眠を邪魔したわけだから、どっちもどっちなんだよっ、このやろー!! ばかー!」

「ヴェエエエ!! ふ、フライパン振り回すのやめてー! 超やめてー! に、兄ちゃん怖いー!」



 ロマーノは堪忍袋の緒が切れたのか、手に持ったフライパンを振り回しながら、暴言を叫ぶ。ちょ、どうしたの、この人。其処まで安眠を邪魔されるの、嫌なのか。
 此処は……、どうすればいいんだろう……。


→スペインを呼ぶ
→イタリアをロマーノへ突き飛ばす
→ロマーノ可愛いよロマーノハァハァ


 ……としてはスペイン呼びたい。スペインなら、きっとロマーノの怒りを収めることができるだろうし。けれど、今は何だか知らないけれど、かなりの深夜らしいし、スペインに迷惑がかかるだろう。だから、この案は駄目だ。

 イタリアを突き飛ばしたら……駄目だよね。イタリアがフライパンにヒットするよね。危ないよね。却下。

 ロマーノ可愛いよロマーノハァハァハァハァ本気可愛いよお持ち帰りしたいよロマーノ。
 ……駄目だ、すごい変態だ。やばい。警察に捕まる。却下。


──どうしよう。此処は土下座すれば良いのか。土下座して「すんませんでしたああああああ!!!!」って言えば良いのか。そうしたら許して貰えるのか。
 それなら。


 そんな事を考えていたら、ロマーノの暴言が途切れ、代わりに「こ、こ、の、やろー、」と息切れした声が聞こえてきた。
 考えを打ち切って、ロマーノを見る。ロマーノは、フライパンを振り回しすぎてつかれたのか、その場でぜえぜえはあはあと言っている。凄く辛そうだ。
 イタリアが、「に、兄ちゃんー!?」と驚いたように声を発する。



「……お、俺は、ね、寝るからなっ! 静かにしてろよ!」

「え、あ、うん、……ごめんね、ロマーノ」

「……」



 ロマーノはの声にぷいと顔を逸らし、台所へとフライパンを戻しに行った。それを見て、イタリアが「あ、ねえ、兄ちゃん!」と声を張り上げる。台所から出てきたロマーノが「あ?」と不機嫌そうに声を出した。
 イタリアが嬉しそうに笑みを浮かべた。……どうしよう、なんか変なこと言い出しそうな気がす、



「兄ちゃんも俺とと一緒に寝よーよ!」



 変なこと言い出した――! ロマーノは唖然としたような表情を浮かべたが、何を考えたのか薄ぼんやりとした闇の中でもわかるぐらいに頬を赤くして、



「な、なに言ってやがる!」

「ヴェー、聞いてなかったの、兄ちゃん。だから──」

「ちょちょちょちょっ、ちょっと!! 、まだ一緒に寝るって言ってな」

「嘘だー言ったよー。俺には聞こえたもん」

「……なんて」

「一緒に寝ても良いよ! って」

「言ってない! それ空耳だから!」

「ヴェー、良いの! は俺と一緒に寝るの! の身体があったかくてふわふわなのはお見通しだ!」

「ちょ、それはドイツに……」



 言ってください、と言葉を続けようとしたのだけれど、それはロマーノに阻まれた。
 ロマーノは何時の間にやら近くに寄ってきていて、「俺を抜いて話を進めんな!」と言う。頬を膨らまして、口を尖らせている。怒った、ということを示したいのだろうか。ごめん、凄く可愛い。

 は気付かれないように笑った、つもりだったのだけれど、ロマーノにはしっかり見えていたようで、「なに笑ってるんだ!」と、ますます頬を膨らました。はその頬に手を伸ばして、少しだけ力を込めて押す。すると、尖らせた口先から空気が漏れる音が聞こえた。

 ロマーノが「な、なにしやがる! このやろー!」と怒る。耳まで真っ赤にしていて……、ああ、駄目だ。可愛いなあ。
 頬をゆるませていると、イタリアが「兄ちゃんー! 一緒に寝ようよー!」とロマーノの腕を引っ張る。



「俺はまだ、一緒に寝るって、言ってな……!」

「兄ちゃんだって寒いでしょー?」

「……さ、寒くなんか」

「嘘だー、だって俺、兄ちゃんが布団にまるまってガタガタしてたの見たもん」

「……」



 ロマーノが黙り込む。え、図星なの?
 イタリアが「だから一緒に寝ようよー!」と言って、ロマーノを引っ張っていく。……こ、れは……なんというか。……にしても、二人の寝顔、見たいなあ……絶対可愛いんだよ、きっと。
 うわーくっそう、がフランスみたいにオープンなスケベだったら見れたのかな。二人の寝顔見に来たぜハァハァハァ。見せて、写真撮るからハァハァハァとか言ってさ。無理か。

 そんな事を考えていると、奥の方からイタリアがを呼ぶ声が聞こえた。
 「んー?」と返事をして、はイタリアの声がした方向へと歩いていった。


 イタリアの声がした方向、まあ部屋なんだけれど、その中には大きなベッドがあって、そのベッドの上にイタリアとロマーノが寝転がっていた。窓から挿す月明かりで見えるロマーノとイタリアの表情。一方は不機嫌そうに眉間にしわを寄せていて、もう一方は嬉しそうにへらへらと笑みを浮かべている。

 イタリアが手をこまねいた。なに。なんだか嫌な予感がす、



「一緒に寝よー!」



 やっぱりですか!
 「い、いや、でもさー……」とは言葉を濁して、その場を立ち去ろうとするのだけれど、イタリアが「はやく! !」と隣をぼふぼふと叩く。

 ロマーノに視線を送る。一瞬瞳があったと思ったら、すぐに逸らされた。貴方は兄でしょうが!止めてくださいよ、こういうときこそ弟を!

 あはは、と乾いた笑みを浮かべていたら、イタリアが立ち上がって、の手を引っ張っる。
 ちょ、ちょちょちょちょちょっと待てええええ!! な、何をする気、っていや分かっているんだけれど!

 イタリアが「ほら」とベッドにを押し倒す。思わず「ひっ、ちょ、イタリア!」と声を強張らせてしまった。それはしょうがないと思う。
 イタリアはいつものほけほけとした表情を浮かべてすぐにの上から退き、の隣で横になった。布団がかかる。



「えへー幸せー」

「イタリア、もうちょっと寄れ! せまいんだぞこのやろー!」

「ヴェー、ー、ちょっとごめんねー」

「ちょちょちょっ」

「えへーあったかいしやわらかいー」



 イタリアがロマーノに押されての近くへと寄ってきて、そのまま流れるような動作でを抱きしめる。……え、なに、これ。一体なにこれ。なんなのこれ。それだけが頭の中に浮かぶ。っていうかこういう抱きしめるとかそういうのは好きな人にやってください。
 外国人がスキンシップ過剰なのは知っているけれどさ、知っているけれどさ……!
 ロマーノのところからは、もう寝てしまったのか寝息が聞こえてくる。早いですね、すごく。寝るのが。

 イタリアがもう一度、嬉しそうに言葉を発した。



「幸せー」

「そーですか」

は? 違うの?」

「……それは、まあ、その、幸せだよ」

「えへー」



 イタリアがを抱きしめる手に力を込めるのがわかった。き、キツい……! なにこれ、拷問ですか。やめてー、超やめてー。寧ろ抱きつかないでー。が恥ずかしい。

 そう言葉を言おうとしたのだけれど、それはやっぱり隣から聞こえてきた寝息によって阻まれた。

 すぴー、とかなんか変な音を出してイタリアは嬉しそうに笑みを浮かべたまま眠っている。
 はそれを横目で見つつ、なんでこんなにもこの二人は寝つきが良いんですか、と疑問を感じていた。早いですよね、普通より。かなりの勢いで。

 イタリアの顔を見る。とても、幸せそうな笑顔を浮かべていて、こっちまで幸せになりそうだ。可愛いなあ凄く。そんな事を考えていたら、もうとうととしてきた。寝よう。……そういえば、夢の中なのに寝れるのかな、そんな事を考えつつ、は意識を手放した。















 イタリアが目を覚ました頃には、はもうイタリアの腕の中には居なかった。それに少し寂しさを感じつつも、イタリアは笑みを浮かべる。
 ロマーノが何かの気配を感じたのかぱちりと目を開け、イタリアの横を見て、「んあ、は……?」と疑問を呟いた。

 それにイタリアは答えず、ロマーノに抱きついた。弟のいきなりの行動に驚いたのか、ロマーノは少し身体をびくりとさせる。
 ──殴ってやろうか、そう思ったのだろう。ロマーノは手を振り上げるが、イタリアの余りにも気の抜けた声にロマーノは止まってしまった。



「兄ちゃん、幸せー」



 満面の笑みを浮かべたイタリアを見て、ロマーノは一つ溜息を零し、「そうかよ」と答え、つられて苦笑に近い笑みを浮かべた。



(終わり)

ロマーノの怒り方はチビロマから色々と。なんか頬を膨らませているように見えたのですが。うーん。
大人のロマーノはあんまり出てこないから、喋り方もチビロマを意識した、の、ですが……。
ちなみにヒロインとイタリアに話させたら主人公が突っ込み役になってしまいました……。あれ。

2007/07/20