「俺ってば超強いしー」

「くあっ、な、なんで……! もう嫌だよおおお! 絶対になんかイカサマしてる!
 ポーランドずるい! もうやだ! これから先ずっとのターン!!」

「二人ならともかく三人のババ抜きでそれは自滅への一歩だしー」

「うえー……、もう無理、もう駄目、もう絶対に無理! ポーランド有り得ない! ポーランド強すぎ! 有り得ん!」

「……二人共、落ち着きなよ……」



<ある日、ある時、知らない言葉>




 目の前のポーランドを精一杯、睨むけれど、相手は全く意にも介していないようで、嬉しそうに笑っている。うん、まあ、この人の場合、いっつも笑っているといっても過言では無いような気がする。


 ──ポーランドの家に来た。一応、とポーランドは友達と言う括りに入っているので、嬉しそうに「わーやしー。なになに、どうしたんー?」と、に寄ってきてくれる。それは嬉しい。真面目に。凄く。けれど、そこから先が問題だ。

 家の前に現れた瞬間、ポーランドは有無を言わせずの手を引っ張り、家の中に招き入れた。うん、まあ、手を引っ張られたのは凄く嬉しくてポーランドの手がに! とか阿呆なこと考えてた。うん、馬鹿だった。過去の自分に戻りたい。戻って、「逃げろ!」とか言ってやりたい。走って逃げて

 そんなこんなでポーランドの家に入り込むと、リトアニアが「あ、」と可愛く顔を綻ばせてを迎い入れてくれた。それも良い。
 うん、ココからが問題だ。

 ポーランドはにトランプを渡して、「ババ抜きするんよー。もするし!」と遊びに誘ったのだ。
 当然、は誘いに乗り、トランプをきって二人に配る。それから、ババ抜きが始まった。

 ババ抜きは好きだし、小さい頃良くやったので大丈夫だろう、と思っていたのだけれど、なかなかどうして。二人はとてつもなく強かった。二回やって二回とも負けた。
 リトアニアは「あ、えっと……こういうこともあるよ……」と苦笑を浮かべつつ、を慰めてくれたのだけれど、ポーランドはに追い討ちをかけるようなことを言った。ニヨニヨと、笑みを浮かべながら。



「あ、俺いま思いついたんやけどー、三回負けたらさ、負けた奴は俺の言うこと聞くことにしよ。めっちゃ良いアイディアやと思わん?」


 得意のポーランドルールが発動した。
 あまりの衝撃に、は思わず口を開けたままぽかんとしてしまう。え。なんですかその、に目標を絞ったルールは。
 リトアニアが流石にまずいと思ったのか、慌てたような声を出した。



「ちょ、ポーランド、それはがかわいそうだよ」

が弱いのが悪いんよ」

「……って、そこまで弱くないはずなんだけれどさ……」

「じゃあ、俺達が強いのが悪かったんよ」

「……」



 こ い つ は ! なんという人ですか。俺達が強いのが悪かったとかさ! 何年前の冒険小説あるいはRPG、もしくは漫画ですかと。っていうか、弱いって! 弱いってさ! 普通、人の居る前でそんなこと言うのか。酷い。
 そんなの思いも知らず、ポーランドはカードを配り始める。いや、あの、少しぐらい気を使ってもらっても良いのでは。


 うん。結果はいうまでも無い。負けた。の人生はココで終りだ。
 ポーランドは案の定「弱いし」とケラケラと笑い、リトアニアは「ポーランド!」と諌めるような声を出す。が、聞いちゃいない。嬉しそうにポーランドは「んじゃあ、俺の言うこと聞いてもらうしなー」と言葉を弾ませる。
 その後、考えるようなポーズを取って、なにを思いついたのか「俺ってば頭良いし!」と大きな声で言い、の肩に手を置いた。



って、イギリスの知り合いやんかぁ」

「……んえ、うん……。まあ、うん」

「なら、なら! イギリス追い払って欲しいしなー」

「お、追い払うって……」

「俺の国で好き勝手して、あいつマジむかつくしー!」

「……例えば?」

「変態行為ばっかやるんよ! もうマジ許せんし!」



 それはイギリス本人に言ってください。そう言おうとしたのだけれど、ああそういえばポーランドは人見知りだったっけ、という考えが頭をよぎった。だからといって、イギリスを追い払うなんてには無理だ。絶対に無理だ。
 イギリスは最近、の手に負えないくらいに変なことばかりしている。無理。絶対無理。
 フランスかアメリカとかに抑えてもらわないと駄目なんじゃないだろうか。


 そんなことを考えていると、リトアニアが「あ」と言葉を発し、その場を立ち上がった。え、何処かへ行くのだろうか。ポーランドが「どうしたんリトー、またベラルーシ?」と不満そうに口を尖らす。
 それに苦笑を返しつつ、「違うよ」と柔らかく否定の言葉を言い、「でも、用事があるから」と続けリトアニアはポーランドの家を出て行ってしまった。
 もリトアニアの真似したら、この家から出て行けるだろうか。イギリスを追い払うことは不可能だ。
 座っていた状態から立ち上がると、ポーランドが、がしりとの服を掴んだ。おおう、積極的ですね。



「何処行こうとしとるんー」

「え、や、あの……」

「イギリスは?」

「いや、本当に無理ですスイマセン……」

「なんでー。知り合いじゃん!」

「知り合いといえども出来る事と出来ない事があるんだっつうに!」

「ぶー。酷いしなー。なんでもいう事聞くって言ったし!」

「言ってないから!」



 なんでこう、人の話を聞かない人が……! 微妙に怒りを感じつつ、「他! 他のことならやるよ!」と言うと、「えー」と不満そうに声を漏らされた。そこまで嫌なのかイギリスが。
 そんなことを思っていると、又もや何か思いついたのか、ポーランドが「じゃあ! 今から書く文字を読んで欲しいんよー」と言い、何処からか白い紙とペンを取り出し、なにかを書きつけた。
 そして、自信満々にに見せてくる。自信満々なのは良い。けれどさ。……何語だろう。これ。
 は、喋っている言葉は日本語に聞こえるのだけれど、書いてある文字は日本語や簡単な英語以外、読めない。と、書かれているのだけれど……何がなにやら。
 「ごめん……なんて書いてあるの?」と聞こうとするのだけれど、ポーランドが「はやく!」と急かすので聞くに聞けない。なにこれ、普通に読んでいいの? こ、こちゃん? こしゃん?
 しえ? 頭の中でいくつかの候補をあげるのだけれど、何だか何となく、しっくり来ない。まあ、他国の言語なのだからしょうがないのだけれどさ。
 ポーランドが「?」との名前を呼ぶ。「うえ、なに?」と驚いたように声を出すと、「早く」と又もや急かされた。早く、って……早くとか言う前に、読み方を……。

 そんな事を思いつつ、「こ、……こしゃん……?」と、恐る恐る言葉を発すると、途端にポーランドは嬉しそうな笑みを浮かべ「それで良いし!」と言った。良いのか。これで。
 微妙に怪訝な気持ちを抱えつつ、ポーランドが急かすので、もう一回、この文章を読むことになった。

 間違っていないのだから、と、言葉ははっきりとした物になった。すると、ポーランドは頬を赤く染めて、「うん」と頷いた。うんって。うんって何だ。そんな事を考えつつ、ポーランドの顔に目をやっていると、扉がばんと大きな音を立てて開いた。

 驚いて視線をやると、リトアニアが立っていて「ごめん! ちょっと、忘れ物して……」と、だだだ、と家の中を走り抜ける。そして、とポーランドが固まっているのを見て、「ごめんね。あ、それにしても、言う事を聞くって、どうなったの?」と照れくさそうに笑みを浮かべて、に問いかけてきた。
 それに、「あ、なんか、これを読めって言われて……」と言って、文字が書かれた紙を見せようとすると、ポーランドに「リトは見たらあかんし!」とひったくられた。突然の出来事に驚いて、思わず固まってしまう。

 リトアニアがポーランドに近寄り、「えー、なんで? ポーランド、見せてよ」と言うのだけれど、ポーランドは頑として見せようとしない。



「リトには見せんしなー」

「ポーランド、酷いなあ。俺に見せてくれたって……」

「見せんし! ほら、忘れ物、取ったら速くっ」

「ポーランド?」



 ポーランドは紙を丸めてくしゃくしゃにしてから、リトアニアに早く出て行くように急かす。けれど、リトアニアは明らかにいつもと違うポーランドの様子を怪訝に思ったのか「どうしたの?」と心配そうに声をかける。優しい子だなあ。
 けれど、そんなリトアニアの優しさを知ってか知らずか、ポーランドはリトアニアの背を押し、早く出て行くように仕向ける。あれ、酷いね。
 やっぱり、「え? え?」と呆気に取られたような声を出しつつも、入り口まで追いやられるとリトアニアは「それじゃあ……、ポーランド、」と言って、出て行ってしまった。
なんていうか。かわいそう、では無いだろうか。
リトアニアの出て行った先を眺めつつ、ぼんやりとそんな事を考えていたら、ポーランドがの目の前に、どアップで現れた。眉間にしわを寄せている。なんだろう、怒っているのだろうか。

 そんな事を思っていると、ポーランドは「絶対、絶対! 今さっきの言葉、俺以外に言っちゃ駄目だしー!」と若干、いつもより声を低めにして、言う。
 今さっきの、って……こ、こしゃん? のこと、だろうか。



「こしゃん……、だよね?」

「……っ、そうやし! 絶対、絶対! 他のやつに言ったりとかするのはマジ有り得んかんね!」



 念を押すように、ポーランドは何度も言う。それに「うん」「わかった」「言わないよ」……そう答えつづけていると、ポーランドは納得したのか「ならいいしー」と、いつもの笑みを浮かべた。



 ああもう、なんだろう、可愛いなあー。そんな事を考えて、なんとなく目を閉じたら──、なんだろう、急に身体に重みが増した。ん、何。そう思って、重いまぶたを開けて、見てみると、目に入るのは白い天井だ。ああ、夢から起きたんだな──。

 なんだか寝ぼけている頭。伸びを一つして、布団から這い出た。そういえば、こしゃん、だっけ。どういう意味なのだろう。ポーランドが書いたのだから、ポーランド語なのは間違いが無い。
 ……調べてみようかな。



 そうやって調べて、が後悔するのはそれから数時間後のことだった。もう、ね……。逃げ去りたい。



(終り)

 ポーランド語を調べました。頑張りました。意味は調べたら出てきますが、一応書いておきますね。
私は貴方を愛しています、です。なんだろう、甘いの書きたいけれど恥ずかしいしなーとか思っていたらこんな風に。でも、好きなキャラをかけて本望です。リトアニアとポーランドのコンビが好きだー。なんで私が書くとこんな風に。

2007/08/29