震えた声(せいいっぱいの虚勢)




「で、どうなんどうなんー」

「何がだよ」



 ……スペインとフランスが俺の家にやって来たと思ったら、二人はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ、俺に問いかけてくる。どうなん、って、何だ。何が聞きたいんだ。
 怪訝な表情を浮かべ、小突いてきたスペインの頭を殴る。こういうことぐらいはしても良いだろう。読書をしていたのを邪魔されたのだから。




「何、って。何って言ってるぜ、スペインさん!」

「フランスさん! この人ってば、なあーんにも分かってへんでえ!」

「分かって……? なんか話してたのか? 聞いてなかった」

「フランスさあああん、プロイセンが俺らがめっちゃ話かけとったのに、聞いて無かったって!
 めっちゃ酷いと思わへんっ?」

「ああ、酷いな……。プロイセン酷い奴ー」

「なっ、なんだよ! 俺は悪くねえからな!」




 なんでこんな、たかが話を聞いていなかったぐらいで、こんなにも言われなくちゃならない。第一、読書をしていたのに、横で二人が喋っていても、あんまり気に留めないだろう。
 少しの怒りがにじみ出た言葉を聞いて、スペインとフランスは笑みを深くする。格好良いとでも思っているのか。
 大体、あんまり仲が良いわけでもないのに、こんな風に俺の家に来ては気持ちの悪い笑みだけを残して去らないで欲しい。というか、手土産ぐらい持って来い。この俺の家に来るのだから、そのぐらいしても良いのではないか。

 そんな事を思いつつ、二人の顔を見ていると、スペインが口を開いた。




、来やへんなあ」

「……ああ、そうだな」

「聞いた所によると、、すげえ日本と仲良いらしいぜー」

「……へえ」

「日本も満更やないやろうし。プロイセン、かわいそうに」

「なんで、」



 俺がかわいそうなんだ、というかなんでの話が、と問いかけようとした言葉は二人の意地の悪い笑みによって止まった。
 スペインが「なあなあ、日本とがくっついたらどうするんー?」とニヤニヤ顔で聞いてくる。知るか、そんなもん。
 フランスはフランスで「付き合ってたら俺も色々と混ぜてもらおうかな!」とか危険な事を言っている。これには流石の俺もヒいた。止めるべきだろうか。




「……お前ら、俺をからかってるな」

「なんでー? そんなことあらへんよー。にしても、も日本人やしー、日本はの祖国なわけやしー? 仲良いのも頷けるなあ」

「そうだな、頷ける頷ける! ハァハァ日本とがハァハァ」

「フランス気持ち悪い。それに、……そんな話を何で俺の家でするんだよ」

「えー? だって、なあ?」

「なあ?」




 スペインとフランスが顔を見合わせる。何か通じ合っている物でもあるのだろうか。
 第一、は俺と……知り合って日は浅いが、仲が良い(と自負している)。日本と付き合うなんて、まず有り得ない。……と、思う。日本は静かな性格だし、と合わないだろう……多分。
 ──それに、最近は俺のところへ良く来るんだ。良く話もするし、は俺に笑顔を見せてくれる。
 この俺と付き合うならともかく、他の奴と付き合うわけが……。




「そういえば、めっちゃ前やけど、俺に昼食作ってくれてん!」

「……っ」

「へえ、なにを作ってくれたんだ?」

「やってんけど……。あ、作ってくれたんやなくて、一緒に作ったんやって! トルティージャ。
 めっちゃ楽しかったし、おもろかったー」

「トルティージャか……、そういえば俺も前に一緒にスイーツを作ったなあ……」

「スイーツって、えー美味しかったん?」

「ああ。そりゃ、そうだろ。俺との愛の共同作品だからな!」

「やー、フランスが言うとなんか……嫌やなぁ……」

「……、」




 表面上は冷静を保っているが、心の中では凄い勢いで羨んでいる。羨ましい。俺は、そんなもの作ってもらったこと……。
 そこまで考えて、フランスとスペインがニヤニヤとした笑みを浮かべながら俺を見ているのに気付いた。なんだこいつら。今日はニヤニヤした笑みばっかり浮かべている。
 素っ気無く、「なんだよ」と言うと、二人は「プロイセンは」と語尾を上げて問いかけてきた。




「何がだよ」

「だーかーら、に何か作ってもらったこと、ないのん?」

「……別に、作ってもらったからって何がどうなるとか、そういうことは無いんだろ!
 それに、俺とは……まだ、その、……知り合って日が浅いし……」

「プロイセン」

「……なんだよ」

「悪いなあ、ほんま」

「悪いことしちゃったな、ははははは、まあは俺に任せてお前はハンガリーでも……
 ああでも、ハンガリー可愛いよハンガリー……!」

「フランスやめろ! それに、俺に悪いことって、……っ」




 何だか言葉が詰まってしまった。それをみて、フランスとスペインは嬉しそうに笑い声を上げると、「んじゃ、帰るわ」、「ほな、また来るでなー」と言い残し、俺の家を出て行ってしまった。

 何が、何を! したかったんだ、アイツらは!
 異様にムカムカする。いつのまにか立ち上がってしまっていたので、ソファーに身体を埋めるように座った。
 別に、別にっ、貰ってなくても、別に、俺は……っ!
 ──知り合ってからの日は……浅いと言ったら浅い部類に入る。けれど、自分でその言葉を発すると、なんだか……むしょうに悲しくなった。

 これから、知り合っていけば良い事だ。俺は頭が良いし、どうすれば仲が良くなるか、なにを言えばが喜んでいるか、分かる。……筈だ。


 其処まで考えて、なんで俺はこんなにもの事を考えているんだ、と思った。
 別に、と俺は……知り合い、ただそれだけの存在だ。それ以上でも、以下でも無い。
 フランスやスペインは俺がのことを好きだと思い、勘繰っていたのだろうが、そんなこと、あるはずがない。第一、人間なのだから何時かは居なくなってしまう。そんな奴に恋でも抱くと思ったのだろうか。
 が誰と仲良くしていようが、誰と付き合おうが俺には関係ない。それに、についても何も思っていない。

 そう思うのだけれど、何故か心にわだかまりが残る。




「……なんとも、思って」
「──ない」




 声が震えたのは何故なのだろうか。


(終わり)


プロイセン……!性格が全くつかめヌェエエエエエエー!模索中です。プロイセンの出てくるシーンを目を皿にして見ています。難しい……。でも好きなんだよ……!
っていうかトルティージャ、調べたら凄いおいしそうだった。

2007/08/11