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<些細な出来事> 「あれ、あら、スペイン。やっほー」 「ん? ああ、やん。ゆっくりしていきー。 丁度、昼時やし……もご飯食べる?」 「あ、良いの? うわー、有難う」 「ええよ。んじゃあ、ちょっと作ってくるで、待っといてや」 スペインは突然、現れたであろうに驚きもせず、笑みを向け、台所へと入っていった。 何だか最近は、よくスペインのところへ来る。しかも、ロマーノ(小さい)が、まだ居るスペインのところへ、だ。 そんなことを考えていると、ロマーノが何処から現れたのか、ひょこひょことに近づき、「ま、また来たのかよコノヤロー!」と怒る。 いつもの事だ。は「うん、また来ちゃったよー」とか良いながらロマーノの頬に手を伸ばし、つついたりする。 ぷにぷに、と擬音がつきそうなくらい柔らかい頬。ああ、どうしよう、たまらないです……! ロマーノが「や、やめやがれ! 変態!」と怒鳴るが、そんなの気にしない。ニヤニヤしつつ「嫌よ嫌よも好きのうち、って言うしねー」とか言いつつ、触るのをやめない。 ロマーノは怒って頬を真っ赤にしつつ、「そ、そんな事、知らないんだぞ、ばか!」と言うけれど、全く怖くない。寧ろ可愛い。 あああ可愛いなあ可愛いなあ、お持ち帰りしたいなあ。……なんて、正直、本当に変態っぽいことを考えていたら、台所方面からスペインの悲鳴が聞こえてきた。 「ああー! あらへんー! え、うわ、えー」 「ん? スペイン、どうしたのー?」 「スペインどうしたんだこのやろー」 何が無いのだろう。不思議に思って、声を大きくして問いかけると、スペインが台所方面から現れ、焦ったように声を出した。 「ロマーノ! ! 聞いてや、今日の昼ご飯の材料が無いねん!」 「へえ」 「え、そうなの?」 「そうやねん。スパゲッティにしようかな、って思っとったんやけれど……。パスタが……。なあ、トマトだけじゃ、あかん?」 「だ、駄目に決まってるだろうがコノヤロー!」 「え、は別に良いよ。スペインが良いなら、何でも」 「ほんま? ええ子やなー、! じゃあ、しゃあないで今日のお昼はトマトにけって」 「嫌だ!」 スペインの言葉を遮って、ロマーノが大声を出す。 見ると、赤い頬をさらに赤くして、「俺はスパゲッティが良い、パスタシュッタ!」と続ける。「トマトだけは、嫌だ!」とも。 スペインが困ったような表情を浮かべて、「でも、材料が無いんやし……ロマーノ、我慢してや」と言うのだけれど、ロマーノは「トマトだけなのは嫌だー! ひもじいのは嫌だー!」と駄々をこねる。 ……ひ、ひもじい、って……ロマーノ……。良いじゃんトマト。美味しいよトマト。 そんな事を思っていると、スペインが「そうやー」と手を打ち合わせた。ん、どうしたんだろう。 スペインはさも名案を思いついたかのような顔で、 「ロマーノが買い物に行けばええんや!」 「……へ」 「うん、名案! 買い物、あんまりしたこと無いやろ、ロマーノ」 「お前が行けば良いじゃねーか」 「いや、これはロマーノが行くからこそ、意義があるんやで!」 「何でだよ」 「一人であんまり外へ出たことの無いロマーノが、ひ・と・り・で! 買い物に行くためにいろーんな人に色々聞いたりして、なんか色々障害に遭いつつも、何とかしてパスタを買って、戻ってくる! ホロリもあればポロリもあるよ、人情物語……どない?」 「訳わかんねえ上に長い」 「なー、ええやろー? だって、俺とはトマトだけで十分やし。駄々こねとるん、ロマーノだけやし」 「……」 「ロマーノが行かへんかったら、ロマーノも強制的にトマトだけやで」 「……買いに行く」 「うん、ええ子やね」 スペインの手が、ロマーノの頭の上に乗る。ロマーノは「や、止めやがれー!」とか言って、手を振り払ったのだけれど、本気で嫌がっていないのは見て取れる。 スペインはふ、と優しげな笑みを浮かべ、ロマーノにお金を持たせた。 「落としたらあかんで」 「わかってる」 「ちなみに、パスタ買うときは三人分下さいって言うんやで!」 「お前らも食うのかよ!」 「勿論。んじゃ、ロマーノ、行ってらっしゃい」 ロマーノは渋々ながらも歩きだし、玄関を出て行った。 スペインが「、十分後ぐらいに外へ行くで準備しときやー」と声をかけてくる。 え、準備? なんで? そう、の顔が物語っていたのだろうか。スペインはやはり、嬉しそうな笑みを浮かべると、 「勿論、ロマーノをつけるんや」 ……そうですか。 と、いう事で、は今スペインと共にロマーノの後ろをつけている。これだけ書くとストーカーみたいだ。……まあ、やっていることはストーカーそのものなんだろうけれど。 の隣に居るスペインは「ああ、ロマーノあかん!」やら「そのまま真っ直ぐやでー!」やら「見てられへん……」やら、呟いている。 ……この人、絶対に恐怖映画とか見せたら、凄いことになるだろうな……。 そんな事を考えつつ、スペインに問いをぶつけてみた。 「ねえ、スペイン」 「んー? どないしたん」 「あのさ、なんでこんなことしたの?」 「こんなこと、って……、ドキドキ初めてのお使いのこと?」 「え、あ、……うん」 「別に、なんとなくやで。ロマーノがおる時間は限られとるし、だって、おる時間は限られとるやろ? ……こういう事は出来る間にしとかなあかんやん。それが今日だった、だけ。それだけ」 「居る時間が限られているって……、ロマーノはずっと傍に居てくれるんじゃない? ロマーノ、スペインのこと、好きだろうし」 「……はは、そうやったら、ええなあ。 ……でも、は……、はどうなん? ロマーノは、じゃなくて、ロマーノも、じゃ無いのん?」 スペインがを見て、言葉を口にする。──? は、きっと無理だよ。 だって人間だし、これは夢だし。夢だったら何時か見なくなる。でも──。 「……?」 「うん、そうだね! ロマーノも、だね。はスペインの傍に居るよ、ずっと!」 「……」 スペインはほっとしたように、溜息をつき、「そうやんな、うん……そうやんな!」と嬉しそうに笑った。 その笑みにつられて、も笑みを浮かべると、「なあ、ロマーノのところ、行かへん?」との手を取った。 「え、隠れて見るんじゃないのっ」 「んー、なんか隠れてるのも面倒やし、ああ見えてロマーノ聡いから、いつか気付くやろうし。 なら、出て行って皆で買い物するほうが楽しいやん!」 スペインがロマーノに向かって走り出す。え、ちょ、こける……! 足を縺れさせつつも、何とかこけないよう頑張りながら、走る。……けど、ス、スペイン、走るの速い……ん、ですけれど! ロマーノが近づいてくるスペインとに気付き、「な、なにやってんだっ!!」と頬を赤くして怒る。 スペインが其れに対して「やー、後ろから、ずうっと見守っとったんやでー。ロマーノが何処か変なところへ行かないか、心配で心配で……」と顔を手で覆う。 「お、俺は変なところへなんか行かない!」 「わからへんやん。変な人に絡まれたりしてもアレやし。 それにロマーノ、やっぱ危なっかしいわー」 「な! 何処が!」 「人にぶつかりそうになったり、人にぶつかりそうになったり……人にぶつかったり。 もう、ホンマ、めーっちゃ心配やったんて! 一人じゃ任せられへん」 スペインが手を差し出す。それの意味を直ぐに感じ取ったのか、ロマーノは「な、俺一人でも出来る!」と頬を赤くさせた。 「わかっとる。ロマーノのことは、信じとるよ」 「だったら」 「でも、一人より二人、二人より三人の方がええやん!」 「……」 「パスタだけじゃなく、色んな物、買わなあかんし……、ええやろ?」 「……それなら」 ロマーノの小さな手が、スペインの大きな手に繋がる。なんだか、可愛らしい。そう思って、笑みを浮かべたらロマーノが「な、なんで笑うんだよコノヤロー!」と怒ってくる。 なんだろう、なんていえば良いのだろう。なんか、何処にでもありそうな風景、っていうか。 「パスタ、どれくらい買ったらええんやろー」 「え? さあ、どのくらい食べるかによるよね」 「十キロ!」 「何人分ですか、ってかそんなに帰るわけがないじゃん!」 「んー、そういえば昨日もパスタ、一昨日もパスタ……パスタばっかやん。そろそろ飽きてくるでー」 スペインが笑って、ロマーノが頬を赤くして怒る──。 それは本当に日常的で、些細な出来事だ。けれど、それでも。 「は何がええ?」 「んー、何でも、良いよー」 「パスタシュッター」 「……ええけど……。なにかけるん?」 「トマト! トマトソースが良いっ」 「ロマーノ、飽きへんなあ……」 は、幸せを感じた。 (終わり) なんで微妙にシリアスを入れちゃうのかな私は! シリアス……好きです……凄く。 なんかもうパスタは良くわからんくなって、でもイタリアでは麺類のことをパスタシュッタって言うんだよなー、とか思って……。 スペイン兄ちゃんの関西弁、何処までにしようかと迷った。母に関西弁についての助言を求めたら方言ばっかり出されて困った。べっちょ(しょ)ないなんて言わないよ! 2007/08/03 |