歩くと、ぎゅっぎゅっと音が鳴る。雪を踏みしめているからだ。
 息を吐き出すと、視界が一瞬だけ白く曇る。空からは絶え間なく白い雪が降ってきて、地面に積もる。

 冬将軍が、来たのだ。
 僕はもう、慣れてしまったけれど、国民は慣れないようだ。
 それはそうだろう。冬。しかも悪天候。作物は出来ず、食べるものは少ない。
 餓死者が出るのも、当然のことだ。

 大きな自分の家から出れば、見えるのは町を埋め尽くすほどの死者。何故、外で死んでいるのかは、僕にはわからない。食べ物でも探しに出てそのまま、なのだろうか。それでも、がりがりに痩せて死んでいるのを見ると、悲しくなってくる。

 街を歩き回る。立ち並ぶ家はすべて戸が閉めてある。
 そのまま、道を歩いていくと、小さな子供が倒れているのを見つけた。
 かがみこんで、その子供の頬に手を当てた。冷たい。例に漏れず、死んでいるようだ。




「ごめんね……」




 呟く。聞こえていないであろうことは、承知の上だ。それなのに。




「ごめん、ごめんね……」




 雪崩のように、同じ言葉だけを繰り返してしまう。

 ──慣れる、訳がない。慣れた なんて 嘘だ。
 いつも以上の銀色。視界を覆う鈍色。




「さみしいよ」




 春はまだ遠い。人々は、まだこれからも沢山、死んでいくだろう。
 僕はそれを止めることが出来ない。




……」




 身体をぎゅ、と包み込むように掴んだ。寂しいよ。なんで傍に居てくれないの?
 理不尽な怒りが、心の中に生まれるも直ぐに消えた。違う、は悪くない。悪いのは僕だ。僕が、冬将軍を止めることが出来ないから。
 将軍を止められたら、こんな想いをすることもないのに。
 でも、それでも──。









 傍に居て欲しいよ。

 子供の頬に当てていた手を離して立ち上がり、空を見上げる。




「さみしいよ……」




 



(終わり)

ロシア。やっぱり短い。冬将軍については調べた、んだけれど……。捏造が多い。

2007/08/18