<Cultural festival 1>





 。一応、島国です。まあ、劣悪すぎる環境のせいで人は居ないし、地理的にも攻め込みにくい場所に居るから、あまり攻め込まれたことも無い、っていうか一度も占領もされたことない。占領したとしても、全く良い条件が無いから。
 資源なんて全く無いし、活火山もあるし、しかもそれがかなりの勢いで噴火するし。は実質、無人島だ。

 何もすることがなく、島をうろつきながら、友達? それって何ですか? というような暮らしを営んでいたときに、アメリカさんがやって来て引っ張り出されるように世界W学園に入学した。……アメリカさんの友達、もとい植民地として。



 セーシェルちゃんやハンガリーちゃんと仲良くなり、アメリカさんにパシられつつ、時折技術とか言葉を教えてもらいつつ、まあまあ学園生活を楽しんでいた。っていうか学校、楽しい。一番大きな学校らしいし、なんかが入学して良いのか、って感じです。絶対、他の国々、のこと「え? ? そんな国、あったっけ?」とか言っているんだ、絶対! 場所聞いても「へ? え? あ、そうなんだー……」とか受け流すに決まってるんだああああ!

 なんだか、話が逸れたような気がする。

 それにしても、とは思う。最近、校内が浮かれているっていうか、なんていうか……。なんか教室の飾り立てとかやっているし、セーシェルちゃんさえ「慢研に」と言って何処かへと行ってしまうし、ハンガリーちゃんはここぞとばかりに水泳ばっかりやっているし。最近、独りぼっちだ、

 廊下にもポスターなるものがべたべたとこれ見よがしに貼られている。


 一体、何があったのだろう。この学校に。


 そんなことを思いながら、放課後何をするでもなく、そこらへんをぷらぷらと歩いていたら、アメリカさんと見つけた。思わず立ち止まる。

 アメリカさん。の友達、第一号だ。気さくで、面白いっていうかなんていうか。金髪に碧眼、とは違う。眼鏡なるものをかけている。彼はイギリスさんと仲が悪いように見える。この前、喧嘩をしていた。

 アメリカさんを見ながら、そんな風に考えていたら、相手はに気付いたのか、嬉しそうに手を振りながら近寄ってきた。



「やあ、! どうしたんだい、こんなところで」

「え、あのー、いや、ちょっとそこらへんを歩き回っていたら……」

「そうなのか。と、言うことは暇なんだね」

「え」



 アメリカさんは瞳をキラキラとさせる。この兆候は、もしや、また、パシられる……!?
 危険を即座に感じ取ったは、「あの、暇ってわけじゃないです」と言おうとしたのだけれど、それは彼の言葉によって防がれてしまった。



「だったら、これをイギリスのところまで持って行ってくれないか」

「これ? って、うわっ」



 はい。そう言って渡されたのは何かの紙束だった。一番上の──多分、表紙かな。そこに「UMA」と書かれている以外、何の変哲もない……って、UMA?



「え、あの、え? これって……?」



 アメリカさんを仰ぎみる。するとアメリカさんは嬉しそうに、にこやかに笑いながらぐっと親指を立てた握りこぶしをに向けて突き出す。



「もちろん、文化祭の出し物について、だよ!」

「ぶ、ブンカサイ? ですか?」

「そうそう。文化祭。──は知らないんだっけ。面白いよ、凄く!」



 そうはいわれても。心の中で思いながらも、口に出すことは無い。
 面白いって、どんな風に面白いのかな。っていうか、ブンカサイ……。なんて言う字を書くのだろう。
 生半可に返事を返すと、アメリカさんは不満そうに口を尖らせた。


「なんだよ、元気がないなあ」

「そうですか?」



 語尾を上げると、アメリカさんは拳をぐっと握りしめ、「そうだよ!」と語気を荒めた。
 そんなこと、無いと思うんだけれどなあ。

 その後、しょんぼりとした表情を浮かべながら「此処に来てから、君はいっつも他人行儀で……。アメリカって呼んでも良いんだよ?」と、続ける。
 此処に来てからって。そんな、古い知人でもあるまいし……別に、そこまで親しくないような。

 返事を返さずにいると、アメリカさんは何を勘違いしたのか、「アメリカって言ってごらん!」との頬をつねった。痛いです。凄く。何をするんですかこの人は。



「い、いひゃいでふ」

「ア、メ、リ、カ!」

「あひょっ」

「それに、敬語はやめてって言ったじゃないか!」

「うへっ」



 あたしが名前を呼ばずに居る限り、アメリカさんは「ア、メ、リ、カ!」といい続ける気がする。短い付き合いだけれど彼はそういう人だと、わかっている。



「ア、 っメリカ」



 途切れながらも言うと、アメリカさん、もといアメリカは、ぱっと手を離し、「それで良いんだよ!」と嬉しそうに笑った。は摘まれて少しだけヒリヒリとする頬を手で押さえつつ、アメリカをじっと見る。
 ──アメリカの屈託の無い笑みは、見ていてこっちまで幸せになる気がする。優しく、暖かい笑顔。の、好きな笑顔だ。

 つられて、笑みを浮かべる。すると、アメリカはもっと笑みを深くして、「それじゃあ! またね!」と言い、踵を返してしまった。

 去り際に、「文化祭は三日後だから! きっとは迷うだろうから、絶対、俺のところに来てくれよ!」と言う言葉を残して。

 その後姿を少し見つめてから、あたしは足を運んだ。生徒会室まで。




 生徒会室の扉っていうのは、叩くのに結構、勇気が必要だと思う。なんていうか……どきどきするっていうか、怖い。まあ、でも、扉を開けなければ中に居るイギリスさんに渡し物が出来ないのだから、するしかないのだけれど。

 でも、なんだかなあー。なんていうか、イギリスさんはいっつも怖い顔をしているような気がする。特に、とアメリカが話していると。……怨まれるようなこと、した覚え無いんだけどなあ……。
 なんかもう、いっそ扉の前にそっと置いて逃げようかな。駄目かな。

 心の中で会議を繰り広げていると、扉の中から「フランス、てめえ!」やら「ははははは」という笑い声、それに続いて「わたしの国に伝わる呪いを試してやるー!」と言う聞きなじんだ声、つまりはセーシェルちゃんの声が聞こえた。あれ、セーシェルちゃん? なんでだ。

 セーシェルちゃん……生徒会委員、なのかなあ。知らなかった。心の中でそんなことを思いながら、扉を叩いた。なんていうか、こう、友達の声が聞こえたら安心して入れるし……。たとえ、イギリスさんが睨んできたとしても、セーシェルちゃんが居るんだから、大丈夫だよね。
こんこん、とノックをすると、中の騒ぎが一瞬ピタリと収まり、続いて「……どうぞ」と言う声が聞こえた。

アメリカから渡された資料。と言っても三百ページぐらいの紙束だ。開けるときは、慎重に、慎重に。冊子には、なっていないのだから、ちょっとした衝撃で崩れてしまう可能性がある。
 扉を開けきって「アメリカの植民地のですけれど」と声を発する。

 生徒会室の中には、セーシェルちゃんと、イギリスさん、それと知らない男の人が立っていた。金髪の、なんだかゆるゆるとウェーブしているような、キレイな髪の毛だ。瞳なんかも美しい色をしていて、ガタイも良い。──今まで見てきた人の中で、一、二を争うような美貌を持っている。誰なのだろう。
 って、観察している場合じゃない。大きな机の後ろ、豪奢な椅子に座っているイギリスさんのところへと、歩みを進めた。
 すると、セーシェルちゃんが「ちゃん!」との所へと駆けてきた。



「どうしたの、こんなところに……、って、なにそれ」

「アメリカから頼まれて……。イギリスさんに渡せ、って」



 アメリカ、と言った瞬間、イギリスさんが咳き込んだのはどうしてなのだろう。不思議に思いつつ、イギリスさんへと近寄って、机の上に資料を置いた。

 イギリスさんが「おい」と眉を寄せた。



「これ、あのー、えっと、ブンカサイ、ですか。それの……資料らしいです」

「文化祭の?」



 イギリスさんはの言葉に、うさんくさそうにしながら資料に目をやった。その途端、盛大に嫌そうな表情を浮かべる。
 でも、表紙を開いてさえいないのに、どうしてこんな表情を浮かべるんだろう。

 まあ、でも、そんなのには全く関係ない。とにかく、の仕事は終わった。かーえろー。

 そう思ってくるりと踵を返す。すると、後ろから怒ったような声が発せられた。



「却下」



 そうですか。却下。かわいそうですね、アメリカ。心の中でなんて慰めようか考えていたら、後ろ──イギリスさんが、声を大きくして、もう一度はっきりと「却下!」と言った。
 却下却下どうしたんだろう。イギリスさんとは違う男の人の声で「おいおい、良いだろ、UMA。未確認生命物体……! なんて良い響きなんだろうな!」と声を弾ませているのが聞こえた。

それにしても、家帰ったら何食べよっかなー。アメリカのところのファーストフード、美味しかったなあ……。あれ、もう一度頼んだら駄目かなあ、って、の所、鋳造技術、全く無いんだ。お金無い……。借り……たら、流石に、駄目だよね。っていうかどうなの、って言うお話しだよね。
 保証人は兄弟でもなるな、お金は絶対に借りるな! って、誰かが言っていた気もするし、頑張って海もぐって魚でも獲って焼けばいっか。三匹ぐらい獲れば大丈夫だよね。二十海里を超えなければ、大丈夫! 排他的経済水域、一応、国なんだから、あるよね!

 そんな風に思いながらすたすたと歩き、扉を開けて「失礼しました」と言って、その場を去ろうとしたのだけれど、それは阻止された。



「セーシェル! 止めろ!」

「くやしいっ、でも従っちゃうっびくぶる」



 セーシェルちゃんに羽交い絞めされたことによって。
 ……え、ちょ、セーシェルちゃああんん!? 何事、何が起こっているの、何この状況──!?



「なっ、なにー!? なにいいいい!? 早く家に帰らないとっ! 暗くなっ……魚が、魚影が見えなくっ……ご飯が、ご飯があああ!」

「ごめんね、ちゃん。わたし…アイツの植民地だから……」

「俺が引き止めているのにさっさと帰ろうとするからだ、ばか」



 半ば、パニック状態。イギリスさんは座っていた椅子から立ち上がり、耳を疑うような言葉を発した。え、いつ、引き止めましたっけ。、そんなの知らないんですけれど。
 あまりの言葉に唖然としてしまう。暴れていたのも止めてしまうほどに。男の人がイギリスさんの後ろから「女の子二人……ハァハァ」と言っていたのが聞こえたけれど、綺麗な人がそんなこと言うはず無い。聞き間違いだろう。
 イギリスさんが紙束を指差し、言葉を発する。



「で、アメリカの資料、持っていけよ」

「無理です、ムリムリ、あの人何処に居るのか、いっつも分からないんです!」

「…。あと、却下、って言ったのも言っておけよ」

「なんで、嫌です! パシりばっかり嫌あああ!」

「パシ……っ!?」



 アメリカは本当に、何処に居るのか全くわからない。あの人は急に出てきては急に去ってしまうんだ。学校内をくまなく捜して、それと人に訊きまくれば、きっといつかは会えるのだろうけれど、正直かなり時間がかかるし、第一、面倒くさい。

 携帯は無いのかい、と訊かれたことがある。そんなの愚問だ。には電気さえ通っていないのに。
 携帯、ってなんですか。そう問い返すと、電話だよ、小型の電話。と返された。電話って何だ。
 言葉につまると、そうか、持っていないんだね。と返される。そして、日本にもらえばいいよ! と続けられた。無理に決まってるでしょうが。日本さんとは知り合ってまだ日が浅いのに、そんなもの、貰えるはずがない。

 無理ですよ……。そう返すと、なんで? と返され、日本は優しいからくれるよ! きっと、最新機種を! と続けられた。
 アメリカさんの瞳は目映いぐらいに輝いていた。その時、は悟った。日本さんは、この人に迷惑をかけられているのだろう、と。

 ……思考にふけってしまった。イギリスさんが、苛々とした声で「聞いてるのか!」と声を荒げる。すいません、聞いてません。



「すいません……」

「なんだよ、なんなんだよ! 怒るぞ、このばか!」

「ちょっ、わたしの友達に変な事言わないでください、この眉毛が! 馬鹿!」



 素直に謝ると、罵声を浴びせられた。何かを言いかえそう、そうは思うものの、こういう事にはなれてなくて口を噤んでしまう。すると、を羽交い絞めしていた手が解け、セーシェルちゃんの怒ったような声が聞こえた。
 や、優しい子だ……! 嬉しさで顔を綻ばせながらセーシェルちゃんの方を向く。この時ばかりは、セーシェルちゃんが天使のように見えた。
 イギリスさんは突然セーシェルちゃんが怒ったことに対し、唖然とした表情を浮かべ、「な、なっ」と口をぱくぱくとさせた。なんだか面白いことになっている。

 その後、怒気が滲んだ声を出した。



「俺の植民地のくせして、変なこと言うな! 最初に言っただろうが、俺に逆らうなって!」

「知りませんー! っていうか、わたしは眉毛より友達が大切なんです! この眉毛が!」

「眉毛眉毛言うな!」




 ……なんていうか、どうやら二人は言い合いをするのに夢中っぽいので、逃げ出せる。、この機会をのがさないよ! 逃げ出すよ! アメリカで言う所、デッドオアアライブウウウウ!
 心の中で、さようなら! と二人に声をかけて、扉を開けようとする。取手に手をかけると同時に、の手を覆い隠すような、大きな手がそっと乗る。何事かと思い、手の持ち主が居るであろう場所を見る。其処には、あの、知らない男の人が立っていた。男の人は苦笑のようなものを浮かべ、口を開く。



「おいおい、逃げ出しちゃ駄目だろ」

「え? は?」



 誰ですか。心の中でそんな風に考えつつ、その人を呆然と見上げる。すると、その人は「、だろ」との名前を呼んだ。なんで、名前を知って。
 思わず、「なんで、名前を」と言うと、相手の人は「セーシェルから聞いた。俺はフランス、よろしくな」と笑みを深くした。
 なんだか、アメリカ同様、気さくそうな人だ。
 きっと優しい人なのだろうなあ、なんて思っているとフランスさんが「んふふふふ」と怪しげな笑みを発した。
 ……え? 聞き間違い、だよね。だって、こんな格好良い人が、こんな笑い方なんて、するはず無い──。
 フランスさんを呆然と見つめる。彼は、もう一度、嬉しそうな声で呟くように声を発した。



「可愛いなあ、可愛いよ……」

「え……」

「なあなあ、ちゃん」

「あの?」



 フランスさんがによによとした、何かを含んでいる様な笑みを濃くする。な、なに。一体、なんなの。フランスさんが、の身体に自分の身体を密着させた。な、ななななな何この人ー!
 フランスさんはぐっとに顔を近づけ、小さな声で呟く。



ちゃん、お兄さんとちょっと遊びに」

「何やってんだ!!」



 ばこん。変な音がして、フランスさんは地に伏せた。近くに、インク瓶が転がっている。……こ、怖かった…。
 声の主はイギリスさんだったようで、頬を赤らめて怒っている。……この人、インク瓶投げ……いや、変な考えはよそう。



「それにお前! 何逃げようとしてるんだよ! アメリカに言えよ、却下って!」

「まあまあ、そこまで怒ることも無いじゃないですかー。UMA、楽しそうですしー」

「セーシェルは黙ってろ!」

「ういー」



 セーシェルちゃんは唇を尖らせて、不服そうな顔をしながら、これまた不満そうな声でそう言った。うい……うい……?
 どういう意味。心の中で思いつつ、は「で、でも」と口を開いた。



から言っても、絶対にアメリカは引き下がりませんし」

「頑張れよ、粘れ」

「無理です! 絶対、口を尖らせて『なんだい、こんな簡単なことも出来ないのか?』とか言われてっ!
 『そんなんじゃあ俺の友達にはなれないよー。じゃあね』とか、言われちゃうに決まってます!」

「と、友達……?」

、今、一応アメリカから技術学んでるんです! 今、友好関係が切れたらっ、切れたら……! いやああああ」

「なんだよ、別にいいだろ。技術なんて」



 呆れたように言われた。……こ、この人……! ぜええったい海で魚を獲ったことなんて無いんだ、夜に獣に襲われそうになったことなんて無いんだ、火山の噴火なんて経験したことないんだあああ!!



「べ、別に良いって、良いって……っ」

「な、なんだよ」

「も、もう良いです! 貴方なんかの名前さえ知らずに『? それって何処?』とか言っているんでしょう! っていうかそれ以前に、早く帰らないといけないんですけれど! 魚影が見えなくなったら……! に飢えろと言ってるんですかああ!」

「は、はあ? なんだよ、魚影って……。っていうか、そこまで腹が減ってるのか」

「そりゃそうですよ! 毎日毎日アメリカにパシられて技術を教えてもらいながらも資源がないから作ることも出来ないし、そもそも電気なんて通ってないし!」



 一息に言い切ると、イギリスさんが、ぽかんとした表情でを見てくる。もういい、もういいよ、早く帰らせてくれ! が韓国さんだったら謝罪と賠償を求めてますよ! 心の中でそんな事を思いつつ、イギリスさんをじっと見る。

 すると、イギリスさんは困ったように咳払いを一つすると、「……昼ごはんの残りがある、それをやるから、アメリカに言いに行って来い」と言われた。
 瞬間、セーシェルちゃんが「え!」と驚いたような、戦々恐々としたような声を出す。

 が、の耳には全く入らなかった。
 お昼ごはん……。くれるのか。信じられない。

 「い、良いんですか……」と、震えた声で呟くと、「ああ」と言う、短い返事が返ってきた。
 ご飯、ご飯、ご飯!! は「喜んで!」と答えて、その場を去った。
 セーシェルちゃんの「駄目ええええええ!!!」と言う叫び声が聞こえたような気がするけれど……。まあ、良いよね。



*



「どういうことだい、イギリス!」



 アメリカが、会長の机をばんと叩いた。……夕飯確保のため、走り回っていたら簡単に見つけられたのだ。おめでとう、
 アメリカの横で自画自賛に浸りながら、によによと笑みを浮かべる。

 イギリスさんがアメリカを一瞥し、「どうもこうも、却下」と言い捨てる。



「何で。面白いだろう、UMAだよ、UMA!」

「お前、まだそんなの信じてるのかよ、ばか!」

「君に言われたくないね! ユニコーンだって、居なかったじゃないか!」

「! 怒るぞ! ユニコーンは居るからな!」

「君が夢でも見ていたんじゃないのかい」

「アメリカアアア!」



 イギリスさんが勢い良く机を叩き、高そうな椅子から立ち上がる。ユニコーン……? なんなのだろう、聞いた事が無い。
 でも、その疑問を今、口に出すのはちょっと、というかかなり空気読んでいない子になってしまうので、何も言わない。

 それにしても、とは周りを見渡す。セーシェルちゃんとフランスさんが居ない。何処へ行ってしまったのだろう。フランスさん、気絶してたし、セーシェルちゃんが保健室にでも連れて行ったのかなあ。

 ぼうっと考え事をしているうちにも、二人の言い合いは白熱を増してきたようだ。
 二人の声は先ほどより、若干、荒くなっていた。



「ユニコーンは居るんだよ、絶対!」

「UMAは居るんだよ、絶対!」

「ま、真似するなよっ、ばかぁ」


 
 うーん。此処でこんな言い合いを続けて、どうするのだろう。ブンカサイ、楽しかったら良いんじゃないのか。 というか、イギリスさんは何でそこまで反対するのだろう。
 イギリスさんは、アメリカの言葉に情けない表情を浮かべていて、なんだか……イメージが崩れてしまう。この人、怖くないの? もしかして、俗に言うヘタレなの?

 頭の隅でそんなことを考えていたら、アメリカさんが「良いだろ、別に! イギリスに断られたって、俺はやるからな!」と言い、机の上に置かれていた資料をひったくるようにして、その場を去ってしまった。

 ばたん、と扉がしまる音に次いで、盛大な溜息が聞こえた。吐いた人は、もちろんイギリスさんだ。
 額に手を当て、「なんで……あいつ、あんな」と、悲しそうな声を出す。その後、椅子に倒れこむように座り、を仰ぎ見て、「……そうだったな」と小さく呟き、何処から出したのか包みをあたしに手渡した。



「ほら」

「あ、わあ! 有難うございます! うわー、やったー、海にもぐらなくて済みますー!」

「海に、って……」



 苦笑を浮かべられた。渡された包みを見ると、なんだかニヤけてしまう。嬉しいなあ。
えへへ、と声を発すると、イギリスさんに「おい」ともう一度、声を掛けられた。
 それにはい? と答えると、「お前、部活とかは?」と問いかけられる。



「部活ですか? 入ってませんけれど」

「……へえ」



 ……極悪面を浮かべられた。え。どうしたんだ、この人。
 少しだけ背筋に寒さを感じつつ、「それじゃあ……」と言って、一礼し、踵を返す。扉の取手に手をかけたら、後ろから「おい!」と呼び止められる。一体、何なんだ。

 心の中で思いながら、振り向く。イギリスさんは嬉しそうにによによと笑いながら「明日、また来い」と言った。
 来い、って……此処へですか。嫌そうな表情を浮かべてしまったのだろう、イギリスさんは「絶対に、だ! 命令だからな!」と声を荒げた。



「ええええ、なんでですかー」

「絶対だ、絶対! 来いよ!」

「ええ……。……わかりましたよう、それじゃあ」

「ああ」



 今度こそ本当に、扉を開けは生徒会室から出た。窓を見れば、少し薄暗い空の色が目に入る。
 いつもだったら、走って帰って魚獲りをしなきゃいけないのだけれど、今日はそんなことをする必要が無い。
 は包みを見る。……うん、もらったんだしー。大きな国なんだから、きっとご飯も豪華で美味しいものを食べてるんだろうなー。早く、家帰ってたーべよーっと!



 思わず、足が弾む。楽しみだなあ! 絶対、美味しいんだよ。
 そんなことを思いながら、は帰路を歩いた──。




 そして次の日、は学校を休んだ。……腹痛で。






NEXT




続きます、すいません。
2007/10/06