Act.1 願う事




「……ああもう、良いなあ」




テレビ画面を見つめて、一人呟いた。思わず、コントローラーを握り締めている手に力が加わる。
画面には、夏の中盤……と言うか終盤の頃、発売されたゲーム── 戦国BASARAのオープニングが流れていた。
美麗なCGのムービーが流れているテレビ画面を見つつ、は感嘆のため息をついた。




「なんでこんなにも、キャラが格好良いのかなあ。
 素晴らしいね、うん。現実にはありえないね。ああー、こういう人に会って見たい……!」




そんな風に呟いて、スタートボタンを押した。
すると四つ、メニューが出てくる。いつもなら自由合戦とかをして、最強武器を手に入れたりしているのだけれど。
今日は何だか気が向いて、天下統一モードを、しようとした。

天下統一モードにポインタを合わせ、○ボタンを押す。
すると、ガシャンやらゴションやら、なんとも形容しがたい音が鳴り、キャラクターを選ぶモードに入る。




「さて! 今日は誰でやろうかなー……。
 政宗かなあ、格好良いし! いや、でも幸村も捨てがたいよなあ……んふふふふ」




傍から見たら凄い怪しい笑みを浮かべつつ、キャラクターを選んで、○ボタンを押した。
はず。





なのに。





画面は止まったまま、動こうとしない。
どうした。何があったテレビ、いやPS2。やめて、動かないとか、そんな……ねえ?
そんな、まさか、壊れたとか……!

え、ちょっとまって。
そんな、どうしようもないじゃん、。誰か助けて。いや、助けなくても良いから。
誰か、このPS2を、  直し て  くだ  さ   い ………!!!
そんな、直ぐに「あ。壊れちゃった、買いなおそう」なんて思えるほど、金持ちじゃ無いんだけど!

そんな事を思いつつ、コントローラーをガチャガチャと動かした。
どうしようどうしようどうしよう、新しいの買うほどお金無いってば。ほんとに。
涙が出そうだ。視界が歪んでくる、頼むから。頼みますよ。直って。


どうしよう、PS2の電源、切れば治るかな。
治る……よね。でも、もしそんな事をして、いままで以上にPS2が不調になったりしたら……!


色々考えても、なんにも名案が思いつかなかったので、はPS2の電源を切ることにした。
「電源きって、またつけて、なんの異常も無ければ大丈夫だろう!」なんて、思いつつ。
……もし、治らなかったら……、ということはあまり考えないようにしよう。

PS2に近寄り、電源を切った。
電源をつけるのは、少し時間を置いてからにしようと思って、コントローラーをPS2の近くに置いたら。




「……Ah……、此処は何処だ?」

「……わ、分からないで御座る……そこの女子に聞けばわかるのでは?」




聞こえてきた、声。
凄く、よく聞いたことのある、声だ。── 戦国BASARAのプレイ中とか、に。

は声がした方向に向かって、勢いよく振り返った。
すると声を出した人物── 二人は、少しだけ驚いたような表情を見せてから、言葉を発した。




「なあ、お前は誰だ。此処は何処だ」

「……あ、え……う、嘘……」

「? 何が嘘、なんだよ」

「政宗殿、この女子はなにやら困惑している様子で御座るよ!
 可哀想でござろう?」




そういって、目の前の男の人は、もう一人の男の肩を掴んだ。さとす様に。
肩をつかまれた人は舌打ちをした。怖いんですが。何コレ、ヤンキーの喧嘩か。よそでやってくれ。

それよりも。今さっき、この肩を掴んでいる方の男の人は……の聞き間違い出なければ、
『政宗』って言った、ような気がする。 え。 政宗? MASAMUNE? 
よく見れば、……BASARAの政宗に似ていない気もしないけど。眼帯してるし。青い陣羽織、っていうのかな。それ着てるし。
それに、声なんか、そっくりだ。

コスプレイヤーだとしても、家に突然現れるわけないし、声までも再現できないだろう。



え、ちょっと待って。なんでこのような人達が、の家に居るわけ。わからない。何処から入ってきたんだ。
がゲームに夢中になっている間に、入ってきたのだろうか? いや、だとしても。扉を開けたら物音がするだろうし、きっと気付くだろう。でも。

疑問は、とどまることを知らずに溢れ出る水のように、どんどん出てくる。
今、はっきり言って頭がこんがらがっている。誰か本当に助けてください。

頭が痛くなってきた。……夢、夢なのかなあ。今のこの事態は。
そうだ、ありきたりだけど頬を叩いてみよう。痛かったら、どうしようもないけど。痛くなかったら、夢と言う事で決まりだ。うん。そうだ。



そう思い立ち、直ぐにそれを実行に移した。頬を、片方の手で、叩く。
パチン、と景気の良い音が鳴った。男の人達が驚いたような表情をして、こちらを見てくる。




「い、痛い…」

「それはそうで御座ろう。頬を叩けば、痛いに決まっていまする」

「Ah……、何だ。自分で自分を傷つけて……痛いのが好きなのか」




幸村(仮)と、政宗(仮)が、何だか呆れたような表情を浮かべて、こちらを見てくる。
うわあ、微妙に悲しいのだけれども。幸村(仮)の発言は良いけどさあ、痛いのが好きって……そんな訳ないじゃん。酷いよ。切ないよ。

何だか、少し悲しみを感じていると、「それよりも」と幸村(仮)が言葉を続けた。




「……此処は、本当に── 何処で御座るか?」

「え、えっと……」

「どうやら見た所、俺の居たところとは、違うっぽいな」




「これとか」と、言いつつ政宗(仮)はテレビを指さした。うん、何。テレビを知らない? ちょっと待て。テレビなんか電気屋さん行けばいつでも見れるし。
ほ、本気で言ってるのだろうか…。だとしたら。何。

もしやもしや。これは夢小説で言う……逆トリップ、と言うモノでは。
でも、そうだとしたら目の前に居る人物は……。

緊張して、高鳴る心をなんとかして、静めさせて。名前を聞いてみた。




「し、失礼ですが……お名前は?」

「某は、真田幸村で御座るよ!」

「俺は、伊達政宗」




……マジですか。なんだか、どうしようもない気分になったのですが。え、本気?
言葉を無くしていると、幸村が「そなたの名前はなんでござるか?」と訊いてきた。
あ、ああ、そうだ。名前教えてくれたんだし。こちらからも名乗らなくては。




、です」

殿で御座るか!」

「ふうん、……ねえ」




幸村は、よろしくでござる! と言いつつ、に向かって手を差し出した。も其れに習って手を差し出す。手と手を握り合わせ、握手をした。

……なんだか、少し…ううん、前よりもまして頭がいたいのだけれども。
きっと、多分、この二人は嘘をついていないような気がする。信じがたいことだけど。の目の前にはBASARAの政宗と幸村がいる、と言う事……だ。


其れを、一応は信じることにしておいた。



NEXT


あとがき

どうなんでしょうなんだかもう話しがカナリ変わってる…!!本当はテレビぶっ壊そうと思ってたのに、何故か!あんな風に。
何か自分の思うように筆が進みませんHAHAHA☆

ま、まあ行き当たりバッタリ連載になるかも知れませぬ…!オオオプロット組めよ自分!
頑張っていきますのでなにとぞよろしくお願いします。


2005.2.12
 

2007.7.30 ちょっと修正