何故か、憤りを感じた。
何でだろう、憤りを、怒りを感じる要素なんて、
何処にも無かったはずなのに。



何故か、大切に思えた。
何でだろう、こんなにも簡単に人を信頼できる気持ちなんて、
何処にも無かったはずなのに。



Act13.芽生える、密かに。




「・・・・・・アレ。」


「どうしたでござる?」


「・・・いや、冷蔵庫に入れてあったはずのジュースが無くなってるなー・・・なんて。」


「ジュース、でござるか?
ああ、あの、甘い・・・!!えっと・・・・、殿が、某にくれた、あの飲み物でござるよね!」


「え。」





幸村の一言に、固まってしまった。
あれ、うち、いつ幸村に飲み物を。無意識で渡しちゃったんだろうか。
・・・・・まあ、無くなったものを思っても、パッって出てきたりはしないし、気にしない、けど。

冷蔵庫に食べたいものがあると思って、中を見たとき、食べたいものが入ってなかったときほど、ちょっと今切ない。

・・・いいや、それほど喉渇いてたって訳でもないし。これぐらい我慢できる。



冷蔵庫の扉を開けていたのを閉めて、リビングへと向かう。
あー、甘い物も食べたい。そうだ、甘い物食べよう。お菓子を探そう。

お菓子を探して、いつもお菓子をしまってある場所を見るけれど、
無い。お菓子が、無い。

あ、そうなんだーふーんへえー。
そっかそっか、今、うちの家には全然食べるものが無いと。うん。

・・・買いに行こう。



時計は、夜遅くを指していたが、どうせ近くのコンビニに行くだけだし、直ぐ戻ってこられるし。
大丈夫でしょ。うん。変な人が出た、って言うのもあんまりこの頃聞いたこと無いし。






「・・・じゃあ、うち、コンビニ行ってくる。」


「コンビニ、でござるか?」


「コンビニ・・・・??何だよ、それ。」


「・・・えーっと、そうだな・・・、この前買い物に行ったじゃんか、
あの建物を凄く小さくしたような感じ。」


「・・・要するに、買い物をしに行くのか?
どこらへんの、その・・・コンビニに?」


「うん、そうそう。
どこらへん?え、・・・近くにある、所なんだけど。」





うちがそう言うと、政宗は変な顔をして、「おいおい、こんな時間に?大丈夫なのか、お前。」と、訊いてくる。
幸村は「・・・外はもう暗いし、危ないでござるよ!」と、うちを引き止めてくる。

え、何!心配してもらってるの!?
ワーワーヤバイー!!うれしい、素敵過ぎるッ!!
思わず、にやけそうになる頬を押さえつつ、「大丈夫大丈夫、留守番宜しくねー。」と言って、
部屋から出て行く。


扉を閉めるとき、不満そうな声で「行って、・・・らっしゃい。」と言う、二人の声が聞こえた。







夜の闇は、暗い。
上を見上げても、星なんてあんまり光ってないし。
光と言えば、外灯だけが頼りだ。

春のくせに。まだまだ少し寒い。
春だよ?春って言えばポカポカした陽気じゃないのか!

くそう、と一人ごちつつ、コンビニを目指した。











「・・・・・・・・遅い。」


「遅いでござるよー・・・・。」





時計を見る。さしている時間は、今さっき、が出て行った時間とさほど変わっていない。
だけど。遅い。遅い、と思う。

夜だ、こんなにも暗いんだ、あいつは其れを分かっているのか。
・・・ついていけばよかった。後悔が頭をよぎる。

はあ、とため息をつけば、真田のヤローが、俺の方を見て、
「伊達殿、殿が遅いでござるよー!!!」と、言う。知ってる。分かってる。





殿についていけば、良かったでござる。
・・・・こんな、・・・・・・。」


「Ah,うるせえ。Fall silent!黙れ!
・・・・ほら、お前の好きなテレビ番組やってるじゃねぇか、見ろよ。」


「・・・・・・・・・、楽しくないでござる。」





そういって、幸村は「殿も、この番組好きって言っておりましたのに・・・・。」と、呟くように小さく言葉を続けた。
この番組が、好き?俺はそんな事、聞いた覚えが無い。





「・・・そんな事、アイツ、言ってたのか?」


「そうでござるな、言っておりましたぞ。
伊達殿は、知らなかったでござりまするか?」


「・・・ああ。」





『伊達殿は、知らなかったでござりまするか?』と、言う言葉が、
酷く嫌な感じに聴こえた。
まるで、自分の方がアイツと一緒に居る、ということを、証明されているような気がして。

知らないこと、は、嫌だ。
胸が、少しだけ痛く感じられた。

何で、こんな、急に、痛くなるんだよ!
ムカムカと、目の前に居る奴に対して、憤りを感じてくる。

馬鹿か、俺は。
怒っても何もならないというのに。


拳を硬く握って、強く強く握って、憤りを収めようと努力した。
俺は、何で、急に、こんなにも怒ったんだ。誰の為に。誰のせいで?わからない。


はあ、と頭を冷静にさせようと、息を吐き出した。
真田が「・・・伊達殿?」と、訝しげに俺の名前を呼んだ。





「・・・・・・なんでもない。」


「・・・?そうでござりまするか。」





俺がそういった後、幸村は何かを思いついたのか、勢い良く立ち上がって、俺に向かって、「そうでござる!」と、言う。
何がそう、なのか。
疑問を頭の中に浮かべつつも、「何がだよ?」と訊くと、幸村は嬉しそうにとんでもない言葉を口にした。





殿のところまで、行くでござるよ!」


「・・・・は?」


「行くでござるよ!某は。
伊達殿は、どうするのでござりまするか?」


「お、れ?
・・・・いや、行きたいけどな、真田、お前・・・約束破るのか?」


「約束?・・・・留守を守ることでござるか?」


「そうだ。わかるか、留守を守るって事はなかなかに重要な役割だ。
それに、・・・まあ、約束したことだろうが。
お前は、アイツとの約束を破るのか?」


「・・・うっ、そ、それは・・・っ・・・・。」





俺がそういうと、真田は顔をゆがめて、そう言った。
俺だって行きたい、けれど、留守を頼まれたからには、ちゃんと留守をしとかなきゃならない。

それに。
アイツは近くのコンビニ、に行くと言っていた。近くなら、直ぐ見つかるだろうけれど。

はあ、とため息をついて、玄関の扉に目をやる。


遅い、んだよ。

















会計を済ませて、帰路を歩く。
色々買ったら、コンビニの袋は意外と重くなっていた。
まあ、もてないほどではないから、良いんだけどね。

ふう、と息を吐き出した。
あーあ、二人に留守頼むんじゃなくてついてきてもらえば良かった。
だとしたら、こんな重いモン、一人で持たなくて済んだのに。

愚痴を、頭の中で少し漏らした。

















ガチャリと、扉が開く音がした。
其れと同時に、「ただいま」と言う、殿の、少し疲れたような声も。

やっと、帰ってきた。
いや、全然、時間なんてたってないかもしれないけれど、だけど、某にとってはとても嬉しい事で。
顔が綻ぶのがわかる。安心した。殿── 。





「おかえりなさいませっ!殿ッ!!!」


「・・・おかえり。」


「・・・ただいまー。御菓子とか買ってきたけれど、今の時間に食べちゃ、太っちゃうね。
もう、寝よう!うん。」


「もう、寝るのでござるか?・・・まあ、もう遅いでござるし・・・しょうがないでござるか。」





不満そうに呟いたのに気付いたのか、殿が苦笑を漏らしていた。


夜遅く。
いつもの場所に、布団を殿と一緒に敷いた。
殿の方に視線を向けると、殿は少し嬉しそうな笑顔を見せてくれる。









思った。





安心できる人、
安心できる場所、




それが、此処にはある、と。

だから、一つでも欠けると、心配をしてしまう。怖くなってしまうのだと。

けれど、きっと、今、このポカポカとした、胸にある思いは其れとは違うのだろう。
安心と同じような気持ち。でも、ちょっと違う。
きっと、某は、殿のことが、大切なんだろう。


こんな、簡単に、人の事を大切だなんて思えるなんて。
自分の思考に自分で驚いた。けれど、そうなんだろう。・・・きっと。



一緒に敷いた布団の中に入って、明日の事を思いながら、眠りについた。







NEXT





(後書き。)

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
うん、少しずつこう、胸に芽生えていく気持ちとか好きなのに・・・。(何度目)
今回は、少し芽生えつつある感じですか。
幸村にとって、さんは、『大切な人』。好きな人ではありません。
政宗にとっては・・・・・どうでしょうか。(何)好きな人ではないコトは確かです。
まあ、頑張ってこれからもそういう少しずつ芽生える気持ちを大事にしつつ、頑張りたいと思います。
それではでは。
ちなみに、英語の後には翻訳がかかれています。Fall silent は、黙れ!とか静かに!とかそういう意味です。

2006.4.19)


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