Act17.いつか消える思い出





「遊園地!」


「遊園地、でござるー!」


「遊園地、なあ・・・。」





目の前に広がる遊びのテーマパーク。遊園地、だ。地元の。
休日だから、人でにぎわっている。手を引いて歩く家族の姿がちらほらと見える。微笑ましく思った。

それにしても、遊園地になんで来よう、と思ったかは、まあ唐突に思いついたから、としか言い様が無い。

入場券を買い、遊園地の中へと入った時。

幸村と政宗は感嘆の声をあげた。





「す、すごっ、凄いでござるっ!!」


「OH!良いね、良いねぇ。Cool じゃねェか!」


「そうだねー。良いよね。
っと、何に乗る?」





二人が喜んでいるのを見て、少し自分の頬にも笑みが浮かぶのを感じつつも、
入場券を買ったとき貰ったパンフレットを開いた。
観覧車、コーヒーカップ、ジェットコースター、メリーゴーランド、などなどがあるらしい。

パンフレットから目を離し、周りを見る。
遠くの方に見える、大きな観覧車が一番最初に目に入った。
夜になったら、綺麗なライトでもつくらしい。パンフレットに書いてあったから、間違いはないと思う。多分。





「そそ、某っ、アレに乗りたいでござる!!」


「アレ?」


「そう、アレでござる!!」





幸村が、嬉しそうに頬を赤くして、
指差したところには、コーヒーカップが。

良いですかっ!?と、
幸村は声を弾ませて訊く。





「もちろん、良いよ!乗ろうか。」


「う、嬉しゅうござりまするー!!!」





そう言って、幸村はの手を取り、足早にコーヒーカップへと急ぐ。
「早く、早く乗りましょうぞ!」と言いながら。
オイオイ貴方一人忘れてますよ。政宗という人を。

政宗の服の裾を掴み、「政宗さん。行きましょう?」と声を掛けた。
政宗は、遊園地自体に関心しているようで。
が言葉をかけるまで、放心状態で居た。オイオイ、大丈夫ですか。

心の中で盛大に突っ込みを入れる。
政宗は、が声を掛けたとき、驚いたような表情を浮かべて、
「・・あ、ああ、そうだな・・・。」と、言った。




コーヒーカップの前。
少し、人の行列が出来ているから、そこへと並んだ。
目の前の親子の連れは子供がとても嬉しげに、「お母さん、楽しみだね!」なんて言葉を発している。微笑ましい。

そんなことを思ってみていた。
あー、なんというか。本当微笑ましいな・・・。汚れた自分にとっては本当もう純粋すぎて目が痛いくらいさ・・・っ!


頭の片隅でそんなことを考えつつ、
ふと、一緒に並んでいる政宗と幸村に視線を向けた。


幸村は、本当にとても楽しそうにしているけれど。
政宗が、なんだか顔色を悪くしているように見えた。




「・・・政宗さん?顔色、悪いよ?大丈夫?」


「・・・ああ、・・平気、だ。」


「気分悪くなったら、すぐ言ってね。」


「ああ。」





何。どうしたんですか本当に。
なんだか本当に気になるんだけれど、そっとしておく事にした。


幸村が、の服の裾を引っ張ってきた。
なに、どうしたっ。そう思いつつ、幸村の方に顔を向けると、
幸村が「殿、殿っっ!あれ、凄いでござるなっ!!」としきりに話し掛けてきた。





「人が、ものすごい勢いで回っているでござるよ!」


「うん、そうだね。楽しみ?」


「それはもう!
あれ、どうやって回っているのでござろうか?
某、とても気になりますっ!」


「あー・・えっとね、あれ、中にハンドルみたいな、回す奴があるんだよ。」


「・・はんど、る・・・??
回すモノがあるのでござるか!」


「そうそう、それで、其れを手で回すとね。
あの、乗ってる乗り物が一緒に回りだすんだよ。」


「へえ・・・、凄い仕組みでござりまするなっ!
某、とても楽しみでござる!」





嬉しそうに笑みを浮かべて、幸村はそう言った。
くそう、このワンコめがっ!可愛いよ!素敵だよ!結婚してください!!


そうこうしている内に、コーヒーカップに乗る順番がやってきた。
政宗と幸村と。同じコーヒーカップに乗り、座る。
政宗の顔色の悪さは、乗る頃にはもう、なおっていた。


プーーーッと、なにやら形容しがたい音が響き、乗り物が動き出す。


幸村がに、「これ、もう回してもよいのでござるかっ!?」と訊いてきた。
それに、「うん、良いよー思う存分回しちゃえ!」と答えた、途端。
本当に、達の乗っているコーヒーカップは凄い勢いで回りだした。




「・・・ッえっ、ちょっ!目が、目がまわっ・・・!!!」


「何だ、コレ!!ちょ、やめろ、真田!!!」


みぃぃなぁぁぎぃぃるぅぅぁぁぁ!!!!!!


「ちょっ、幸村さんっ、とめ・・緩め・・・ッ!
・ ・・幸村ァァァァァァ!!!」





は、初めて知った。
あれは回しすぎると、凄いことになるということ。
視界が凄いスピードで回るので、なんかもう凄いことになるということ。

圧力が、かかってコーヒーカップの椅子の後ろの部分、
実際のところで言えば口をつける部分にはりつけになることも。

動けないことも。

初めて 知った。





プーーーーーッと言う、終わりを告げる音がなる。
周りのコーヒーカップが回るのを止める中、幸村は止めなかった。
・・本当にマジもう勘弁してください・・・・・。


必死で政宗と共に幸村を止め、
コーヒーカップから降りる頃には、もうフラフラだった。
足は竦むわ、思っているところと違う方向に歩いていってしまうわ、で。
散々です。もうコリゴリです。


同様、政宗も少しグッタリとしていた。あくまで少し。
幸村はとても元気ハツラツだ。本当。今元気ハツラツゥ?って聞いたら
Of course! って答えるのではないか、と思うほど。多分答えないと思うけれどね。





「楽しかったでござるー!!又、乗りたいでござるよ!」


「ああ、そうか、お前は楽しかったか。うん。死ね。


「なっ!?酷いでござるよ、政宗殿!
某、気に食わないことをしたでござりまするかっ!?」


「ああ、した。
一つ、俺を酔わせた。二つ、アイツを酔わせた。
三つ、お館様バカ。四つ、甘党。
この四つの罪を償って貰うぞ。」


「むっ、お館様を尊敬することと、甘いものが好きなこと・・・。それを気に食わないこととは・・・ッ!
なにやら理不尽でござろう!」


「うるせえ。・・・くそっ、気持ち悪ィ・・・。」





後ろで二人の楽しげな会話が聞こえてくる。わー良いなあ。
くそう、仲間に入れてくれ!・・入ったら入ったで苦労しそうだけれども。


適当に見つけたベンチに座った。
政宗達も、を間にはさむように、右に政宗、左に幸村がすわる。
うわあ、両手に花状態再来!嬉しいね!!


そんなことを思いつつ。
ふう、と、意識せずに出してしまった、溜息。
それを聞きつけたようで、幸村が心配そうな面持ちでに問い掛けてきた。





「・・・殿・・・、その、某・・・、
回しすぎて、すみませぬ・・・・。」


「え?良いよー。微妙に驚いたけどさっ。
楽しかったし。うんうん。」


殿・・・・。」





幸村がそう言って、微妙に嬉しそうに、でもまだ心配そうにして、
こちらをじっと、見つめてくる。
ははっ、恥ずかしいじゃないかー☆幸村ー!


・ ・・冗談はさておき、次は何に乗ろう。
そう思ってパンフレットを開いた。政宗が横から覗き込んでくる。





「・・・・・・?なんだ、コレ・・・・。」


「コレ?は・・・、お化け屋敷、かなあ。」


「お化け屋敷?What is this?」


「ええっと・・・、肝試しはしってる?」


「ああ。」


「それを家の中でやったような感じ、かなあ。」


「・・・Ah-HA!面白そうじゃねぇか!行くぞ。」


「・・え、ちょ・・・ほ、本気とかいてマジと読みますか・・・!!?」


「・・・は?何言ってんだよ。」





の言葉に、政宗は怪訝そうな表情をして、答えた。
うわっ、その表情、傷つくっ。

ベンチから立ち上がり、政宗は「ほら、行くぞ。」と言って、の手をとった。
おいおいおいおい!!!ちょっ、えっ!?何かの罰ゲーム!!?
、お化け屋敷とか苦手、なんです、が。


微妙に顔色が悪くなったのか、政宗が「What?どうした?」と訊いてきた。





「・・・いや、び、みょうに・・お化け屋敷、苦手・・・だったりするんです、はい。」


「HA!俺と幸村がついてるんだ、大丈夫だろうが。行くぞ。」


「ちょっ!」





の抗議の言葉も無視して、
政宗は場所がわかっているのかズンズンと進む。
幸村が後ろから、「・・・大丈夫でござるか?」と訊いてくる。

HAHAHA、大丈夫じゃないです。助けてください。
の必死の叫びもむなしく。
お化け屋敷に、そうこうしている内についてしまい、中に入ることになった。


おどろおどろしい雰囲気。
ああもうスイマセン本当逃げて良いですか。
手に汗がにじむ。どうしよう。きっと、つないでる方の手も、ヌルヌルしているだろう。

ということは、政宗にの手のヌルヌルが伝わっていると言う事だ。
・ ・・・あ、もう、どうしよう。泣きそう。別の意味で泣きそう。
つないだ手を離そうと思ったが、政宗がしっかりと握っているので離せない。


これはこれでとても嬉しいけどさ。うん。状況が状況じゃなかったらさ。うん。

歩く。と、足を捕まれたような感触がした。
・ ・・・何コレ何コレ何コレ!!!!
まだ春ですよ!季節の変わり目で少し暑くなってきているけれど、まだヌクヌクしてるんですよ!!

そんなヌクヌクとした温かい日に寒さは要らないから!遠慮しとくから!!





「・・・・・・・・・・・政宗。」


「・・・・なんだ?」


「・・・・・・・逃げて良いですか。」


「・・・・・No.」


「・・・・・幸村。」


「・・えっと、なんでござるか?」


「・・・・恐くないんですか。」


「ええと、・・・少し恐いけれど、それはやはり、
某、男でござるから、我慢しなくてはなりませぬからっ。」


「・・・そうッスか。」





なきたい。泣かせてください。
お化け屋敷を歩いている最中、だけがずっと恐がっていた。
そうか、そうなのか。お化け恐くないのか。幸村に政宗。


は道中、何度も悲鳴をあげそうになるのを頑張って抑えつつ、歩く。歩く。歩く。練り歩いた。
なんとか出口までついた。オオオ光!光が見えますぞ、お館さむわぁぁ!!

光に向かって猛ダッシュだ。
政宗と幸村と手を繋いでいる故に、二人ともに引っ張られるような形となる。後ろから抗議の声が聞こえる。ソンナノ聞ーコエーマセーン!!


外へと、出る。
上から降り注ぐ太陽の光。人々の声。
ああ、やっとやっと。





「出れた・・・っ!」


「急にひっぱりやがって・・・!!
・・・・Ah,なんだかアンマリ恐くは無かったな。
これより、この前、邸でやった百物語の方がずっと恐い。」





今さっき、耳に変な言葉が聞こえたような気がします。





「・・・・・は?百物語?」


「・・・HA!娯楽だ、娯楽。暇だったから家臣呼び集めて恐い話させてたんだよ。
そしたら。・・・・・・・・・いや、いい、次行くぞ。」





政宗は途中で言葉を濁して、足を速めて、の前を歩くような形を取った。

何。何があった。
かんなり気になるんですけれども!

かすかな疑問を胸に、は幸村とともに、
「恐かったね」「・・そう、でござるな。」などと言い合っていた。





色々と、その後も乗り物に乗りつつ。
気付いた頃にはもう夕方だ。

最後に乗るの、何にする?と訊いたところ、出てきたのが観覧車、と言う答えだった。
まあ、うん。・・・観覧車からみる、景色はとても美しいものだろうし。

そう思って、観覧車に乗ることに決めた。


夕方頃になると、少し人は減っていて。観覧車にはすんなりと乗ることが出来た。
が座り。の横に、幸村が座って、と幸村と顔をあわせるようにして、政宗が座る。


がこん、と少し揺れて、動き出す。上へ上へとのぼっていく観覧車。
風が吹き、少し揺れる。ちょっと大丈夫かな?とか思った。

窓から見る、空。少し赤い。
窓から見る、太陽は、海に沈みかけていた。





「ヒュウッ、良いね、良いねぇ。」


「すごい、でござる。」


「綺麗だね。」





達の乗っている観覧車が頂上に近づくにつれて、
口数が少しずつ減ってきたような気がする。

もう少し。あと少しで頂上。


ついた。
さすが頂上、風の勢いで乗っている観覧車が揺れる揺れる。怖いわ、本当に。
椅子に座り込み、少しの恐怖に耐えつつ、外の窓を見る。

やはり、一番上だから、かは知らないけれど。
景色が一番きれいで、凄く驚いた。観覧車から見える風景、全てが夕日の色を浴びて、美しく染まっている。





「・・・・・・Wonderful!」


「すごい、凄く、うつくしゅうござりますなっ!」


「そ、だね。」





夕暮れの光を浴びて、中が少しオレンジ色に染まっている。
なんだか、良いな、と思った。




頂上を過ぎ、乗っている観覧車はどんどんと地面に迫っていく。
幸村が、無言で外を窓から覗いている。政宗も、又。





乗っている観覧車が地面につき、降りることになった。


もう、辺りは暗い。そろそろ帰らなくちゃいけない。





「帰ろっか。」


「そうだな。」


「・・そうで、すなっ。」





三人で手をつなぎ、家路をたどる。


途中、幸村が話し掛けてきた。





「某、とても楽しかったでござる!
今日は・・・、本当に、ずっと忘れませぬっ!」


「幸村さん・・・。」


「そうだな。俺も、忘れねえ。」


「・・政宗さん・・・。」





二人とも、少し照れくさそうに笑って、そういうから。
こっちも何だか照れくさくなった。嬉しくなった。





永遠に、思い出として残れば良いのに。
ずっとずっと、忘れなければいいのに。

人は忘れてしまうから。
忘れないと思っていても。
消えてしまう、無くなってしまう、思い出もある。


けれども。


は、きっと。
今この瞬間をきっと。
何十年経っても、忘れないだろうな、と思った。


矛盾しているけれども、
つながる手のひらのぬくもりを感じつつ、
そう思った。




NEXT


あとがき


そろそろ佳境に入ってまいりましたー。
もうそろそろ、政宗達は帰ってしまいます。
最後の選択は貴方次第ですが。(選択式にしますので。)


一応複線を張ったつもりです。後々の物語に響いてきます。


ええと。思い出って、忘れちゃいますよね。
人は忘却する生き物ですから、仕方無いんですけれども、それがなんだか切なく感じるときもあります。
覚えておきたかった、ずっと忘れないと思っていた思い出。
そんなのも、何時か記憶の中で薄れちゃうんです。なくなっちゃうんです。
そう考えると、なんだか、悲しくなりますよね・・・。うああ。


それではでは!!


2006.5.7
(ゴールデンウィーク最後の日・・・!!)