同盟。って、なんだ。



Act22.違う世界



あの後、元親から与えられた部屋で、は布団に横になった。ご飯も食べ、色々な満足感に満たされる中、考えるのは同盟のことばっかだ。
同盟なんて、なかった。少なくとも、ゲームの中では。そんなの結んでいるなんて描写も無かったし、第一、戦国時代なのにそんなの結んでいて良いのか、と思う。
皆が皆、天下統一を狙っているわけではないだろうけれど、同盟なんて結んだら序盤は楽だけれど、後々脅威とならないか、なんて考えてしまう。全く持って余計なお世話だろう。

──なんだろう、なぜこんなにも不安に感じるのか、自分にもよくわからない。
胸の内で何かが膨らんでいくような、そんな不安。何故、どうして。そんなの、よくわからない。けれど、多分。



「違うから……なんだろうなあ」



ふと口を突いて出た言葉に、の意識は覚醒した。うつらうつらとした意識が、急激に色々な事を考えるようになる。
違う。そう、違うんだ。の知っている、ゲームの設定と。
だって、ゲームでは、あんなにも仲が悪かったじゃん。元親と元就。そんな二人が同盟? なんで、おかしいじゃん。

って、何を考えているんだろう。おかしいことなんて、無いよ、全然。
はあ、と溜息をつく。どうして、こんな変なことばっか考えちゃうんだろう。

寝返りを打って、は再度眠ろうとする。けれど、浮上した意識は簡単には沈んでくれない。
瞼を開く。暗い。夜だ。はむくりと起き上がって、障子を開いた。
眠れない、しょうがないから夜風にでも当たろうかな、なんて思ったのだ。ただ、それだけ。欠伸を零しながら、は縁側に出て、空を見上げる。
すると、目に入ってきたのは満天の星空。



「すご」



思わず、溜息と共に言葉を口に出す。こんな星空、みたことが無い。
例えるなら、ぽつぽつとミルクを落としたような星空、だろうか。ちらちらと輝きを漏らすそれは、とても明るくて、綺麗で、なんだか何度も溜息をついてしまう。
──じっくり見ようかな、なんて思い、は縁側に腰を下ろした。

綺麗。本当に、そんな言葉しか口に出せない。こんなとき、自分の語彙力を怨む。まあ、心の中でこの星空はまるで……のように美しく、……を連想させる──なんて言っていたら、はっきり言ってむなしいこと、この上ないだろうけれど。

縁側に座って、星空を思う存分見た後、は夜の帳に身を任せるように、目を閉じた。
ふっと何かが頭の中を掠める。家族の姿だ。

、政宗や幸村と会った後、どうすればいいんだろう。帰れるのかな、家に。──クサイけれど、の居るべき世界に。
こんな、まさかのトリップだ。望んだとはいえ、不安は拭えない。彼らも、そうだったのだろうか、なんて思う。
じわりと涙が浮かびそうになるのは、しょうがないことなのだろう。なんだ、こんなに弱かったのか、なんて思ってしまう。

なんというホームシック。しかも来て一日目の夜で。

これならこれから先、大変な事になるのではないだろうか。家族の事を思い出して涙、友人の事を思い出して涙、全てにおいて涙、涙、涙。お涙頂戴、全米が泣いた。……何を言っているのだろう。

心の中で変な事を考えつつ、はあ、と息を吐く。目を閉じているから、どんな光景が広がっているのか、全く見えない。でも、それで良いと思う。
吐く息は白く濁っても、濁らなくても良い。星空が瞬いているとかも、別にどうでも良い。ざわざわと葉のこすれる音がするから、きっと何処かで木が揺れているのだろうなあ、とは思う。
夜風はまあまあ暖かく、けれど寝たら確実に風邪をひいてしまうだろうことが予想できる程度の温度だ。

目を開ける。

──来たんだから。
心の中で、呟く。
──来たんだよ!
語尾に感嘆符。

そうそう、来たんだよ、ゲームの世界に。普通に生活していたら、絶対に来ることのできない世界に。
……なんだか、が普通の生活していないみたいな感じがしてしまう。いや、普通に暮らしていたはずなんだけれどなあ……。おかしいぞ、いや、嬉しいけれど。こんな、戦国BASARAだぜ、BASARA!
大好きなゲームじゃん、大好きなキャラ達じゃん、会えて嬉しいことはあれど、悲しいことなんて無いじゃん!

こういうの、楽しまないと損だよね!

うんうん、と頭を頷かせる。そうそう、キャラだぜ、キャラ! 最高じゃないか! やったよ、あの好きキャラの顔、足、手、それに体躯、声、動く表情! 生で見れるなんてどれだけ果報者、あああデジカメ! デジカメがあれば良いのに! そうしたら撮りまくるっつーの、もう電池が切れるまで! でへへへ良いなあ、超良いなあ、携帯とかでも良いから、持ってくれば良かっ、



「何をしている」



心臓が、飛び出るかと思った。声のした方に振り返ると、今日出会ったばかりの毛利が星明りのしたでも分かるくらいに顔を歪めて、こっちを見ている。さしずめ、「何こいつ。今、何時だか知ってるのかよ」とでも言いそうな感じだ。

そんなことを考えて、答えずにいたからか。毛利はもう一度、今度は声音を前よりも低くして「……何を、していた」と言う。ゆっくりと紡がれた言葉は、あーってもしかして疑われている? と直ぐに考えられるものだった。
朝の恐怖を思い出し、何故か湧いてきた首の傷の痛みに眉をしかめつつ、は言葉を発した。



「空を見て、いました」
「空?」



毛利が訝しげに表情を歪め、空をふいと見た後、直ぐにに視線を戻した。そして、なんだか変な表情を浮かべ、「何も無いだろう」と嘆息気味に呟く。
何も無いだろう、ってあるじゃん、星が。……そういう訳にもいかないので、小さく「星、綺麗じゃないですか」と言う。むすっとした声に聞こえたのだろうか、毛利はを一瞥すると、小さく鼻を鳴らす。



「星なんて、何処でも見られる」
「見れませんよ」



少なくとも、の育ったところでは、あんまり。心の中でつけたす。
毛利は、何故か「……そうか」なんて小さく呟いた後、「星なんて見て、楽しいのか」と語尾をやや上げて問いかけてくる。
それに、頷いて返す。気付いただろうか、なんて考えて、は口を開いた。



「楽しいです」



そう言って、空を見上げる。すると、星々の合間を縫うように、一筋、白い光が流れた。──流れ星だ!
思わず「うわ」なんて、声を弾ませてしまう。毛利が「なんだ、どうかしたのか」と何だか驚いたような、もしくは怪訝な、そんな声で問いかけてくる。
それに「流れ星です、流れ星」とやっぱり声を弾ませて答えると、毛利が「……流れ星」とオウム返しに呟く。そうして、空を見上げて、「流れ星……とは、流れる星のことか」と誰に問うでもなしに呟いた後、「それで」、と息を吐くように続けた。



「流れ星が、どうかしたのか」
「どうかしたって……、ええー、すごいじゃないですか! なんて言うか、あんなの簡単に見れるものでもないですし、それに──」



──願いごとを叶えてくれるという、すごい縁起の良いものなのだから。
そう言い掛けて、口をつぐんだ。もしかして、この時代にはそういう概念……っていうか、そんな考え方は無いのだろうか。たしか、最初にハレー彗星が来た時、多くの人は逃げ出さんばかりに驚いた、って聞いた事がある。
だとしたら、星は、この世界の人々にとって禍々しいもの、なんていう考えがあるのかもしれない。
もう少し、ちゃんと調べておけばよかったなー。戦国時代について。

毛利が「それに?」との言葉の最後をとって呟く。
それに嘆息を漏らしつつ、は「……願いごと、叶えてくれますし」と言った。



「叶えて? そんな話、始めて聞いたぞ」
「そうですかー……」
「本当なのか」


毛利が、怪訝そうな声を出す。本当なのか、って……いや、それはわからないし、第一実践した人だって少ないだろうし……。「さあ」と一言、漏らすように呟くと毛利が「本当ではないのか」と不満気に言い、鼻を小さく鳴らす。まさしく不機嫌です、今! と言っているような感じだ。

それには笑みをこぼしつつ、「でも」と口を開く。少しだけ、声が震えてしまった。



「そういうの信じるの、楽しくないですか?」



さわさわと、葉っぱが擦れる音がする。風にのって、海の匂いが漂ってきた。うーん、海が近くにあるのって、絶対に不利だよなー。艦船とかさ、城とか……富嶽とか。全部サビついちゃうんじゃないのかなあ。
そんなことを思いつつ、言葉を続ける。



「信じなきゃ、はじまりませんし」



毛利が小さく息を吐くのが見えた。その後、視線をと合わせて、ただ一言「──馬鹿馬鹿しい」と呟く。……ひ、酷い……。いや、なんていうの、こうゲームをしていても冷酷なキャラっつーのはわかってましたけれど、そんなにも酷いことを言う必要は無いのでは。
思わず頬をひくつかせると、毛利は再度、口を開いた。



「馬鹿馬鹿しい、──が、試してみるのも、良いのかもしれぬ」



驚いた。そんなこと言う性格だっけ、と思う。

毛利は「それで、どのように願うのだ。口に出すのか、心の中で言うのか」とにやり方を訊いて来る。それに、「一般的には口に出すんじゃない……?」と恐る恐る、返事をする。
毛利はの説明を聞いた後、直ぐに視線を上げ、空を仰ぎ見た。

無言になる。というのは、やっぱりが話しかけないから、だろう。集中をしているわけだから、邪魔をしてはいけない。
も毛利をならって、空に視線を投げかけた。

──そうして、何分か経った頃だろうか。ふい、と空を横切る白い線──。
毛利が「天下統一」と言っているうちに、その流れ星は何処かへと消えてしまった。

忌々しげに、舌打ちをするのが聞こえる。



「……言えぬ。あのようなもの、どうして言えることができる」
「え。さ、さあ……」
「どれだけ口が回る者でも、あんなもの、言えるはずがない」



“試してみるだけ無駄だった。”毛利の口調は荒々しく、言外にそう思っているのがわかる。
毛利は、眉に皴を寄せ、「何度でも、できるのか」と問いをかけてくる。何度でも、って何を? 心の中でそんな風に思って、首をかしげると、毛利は苛々とした口調、少し……というか、大分、大きな声で「流れ星!」と言う。

……こ、怖。

思わず恐怖に身を竦ませつつ、「た、多分」と言うと、「多分とは何だ」と、怒ったように顔を視線を向けられる。

なんだ。この状況。怖いにもホドがあるよ、本当に。っていうかなんだ、キレやすいのか。カルシウムを取りましょう、毛利さん。カルシウム、Ca! 魚の骨で簡単に取れるよ。……って何考えているんだ、これはカルシウム云々の話じゃないよね、毛利さんもっと冷静になれYOって話じゃん。

なんだか色々と脱線している気がする……。とりあえず、毛利の怒りを納めなければ。
ぐっと拳を握り、「じゃあ」と言う。毛利が、変な表情を浮かべるのが見えた。



「絶対に、大丈夫だと思います!」
「……そんなに、意気込んで言うことなのか?」
「ええ!」



っていうか意気込んでやらないと、なんだか、負ける。毛利の威圧に。
「大丈夫です、絶対大丈夫です、ですから何度でもチャレンジしましょう!」と続けると、毛利が目を一瞬、冷酷なものに変えて、に手を伸ばした。



「──ちゃれんじ、とは聞いた事が無い。異国語か」
「へ」
「それならば、何故知っている? お前、もしかして奥州の」



伊達政宗の、配下の者か。
そう言い切ると同時に、毛利の瞳がを射抜くようにを睨みつける。──、あ、やばい、失言?
これは、弁解をしなければ、、死んじゃう。



「ち、違います! 違うんです、今のは、の──造語、造語です!」
「……造語?」
「そうです、あの、ほら、知りませんか、造語!」



思いつきの、言い訳だ。毛利は信じないだろう。現に、何を言っている、とでも言いたそうに表情を歪めている。



「ほら、あの……漢字を書いて、それの新しい読み方とか、そういうのっ作ったりするんです!」



本当の造語の意味とは、全く違う。でも、まあ、なんていうか、とっさに出てきたのだからしょうがない、ということにしておこう。毛利は剣呑な視線をに向けていたが、「……まあ良い」と小さく息を吐くように、言葉を発する。

安堵し、ふう、と息を吐く。こ、怖かった、っていうか、造語ってなんだ自分。アホか。そもそも、この時代に造語なんて言葉、あるのか。色々と疑問はつきないが、毛利が黙ったのでよしとしておこう──きっと、毛利は心からは納得していないだろうけれど。

きまずい雰囲気になる。星も流れない。静寂だけが場を支配する、なんて言ったらかっこいいだろうか。
まあ、でもきまずい。は話のネタが無いし、毛利はもともと余り語らない人なのだろう。静けさが辺りを包んでいた。
毛利は空を見上げつつ、時折、にも視線を向けてくる。きっと、警戒でもしているのだろう。視線が合うたび、この状況を打破しようと曖昧に笑みを浮かべると直ぐに視線が逸らされる。
これは、誤解を解くべき、なのだろうか。

でも、どうやって?
方法はどれだけ考えても思い浮かばなかった。

そんな時、静寂を切り裂くように、あっけらかんとした──元親の声が、場に響いた。



「何やってるんだ、おまえら」
「長曾我部……」



その声に直ぐに反応したのは、毛利だ。毛利は、空から視線を下ろし、元親の名前を呼ぶ。その声は苛立ちがまぎれているような、そうでもないような。元親に近づき、毛利は「おぬしも」と口を開く。



「何故、このような時間に起きておる」
「え? や、眠れなくてよー、しょうがねえから城内を見回ってたんだ」
「……そのようなこと、雑兵などにでもやらせればいいものを」



呆れたような声、もしくは軽く侮蔑が入った声、だろうか。ともかく毛利は冷淡に言葉を切り捨てると、小さく鼻を鳴らして笑った。これは多分、っていうか絶対に嘲笑のようなものが入っているのだろう。
元親は苦笑するように「ははっ」と声を漏らし、「あいつら、頑張りすぎるんだよなー」と頭に手をやった。



「無理しちまう。誰かが止めねーとな、そういうのは」
「何を言っている? 仕事を取るのは、その者の為にならぬだろう。穀潰しにする気か」
「ごっ、穀潰し、ってお前……」



引きつったような声を出し、元親は毛利に向けていた視線をに向け、柔和な笑みを浮かべた。そして、「よお」と言い、片手を上げ、近づいてくる。
元就が「長曾我部」と、抑止するように鋭く名前を呼んだ。それに元親はひらひらと手を振って返し、の傍に座る。
豪快な座り方だった。どすん、ともどん、ともつかないような音をたて、元親は縁側に座る。木が軋むような音をたてたのが耳に微かに届いた。



は、どうしたんだよ」
「どうした、って……?」
「此処で。もう夜も遅いし、普通だったら寝てるだろ」



からからと笑う元親は、人を和ませる雰囲気を持っているのだろうか。元親がふっと笑うと、それだけで場が賑わしくなるような気がする。
元親は「ほらほら、寝ろよ! 明日は早いんだぜ」との肩をぽんぽんと叩いた。旧知の友にするかのように、親しげに。

それで、という訳ではないのだけれど、ふっと笑みを浮かべつつ、は元親の名前を呼んだ。



「長曾我部さん」
「元親で良いぜ。……で、なんだ?」
「ありがとうございます」



深々と頭を下げた。本当に、助かったし──嬉しかったのだ。こんなふうに優しくされて、感謝してもしきれない。色々な感謝の言葉は思いつくものの、やっぱり一番しっくり来るものはこれしかなかった。

さわさわと風で木が揺れる音と、頭の上で微かに笑う声が聞こえたのは、同時だっただろうか。

頭に軽く衝撃が走る。顔を上げると、元親の笑った顔が至近距離にあった。



「どういたしまして、って言えばいいのか。四国の鬼は優しいんだぜー、まあ、敵には容赦ねえがな!」



乗せられたのは元親の手なのだろう。それは優しくの頭を撫でた後、すっと離れた。
その後、元親は照れ隠しのように「はは、まあ、ほら、なんていうか」と言う言葉を何度か繰り返した後、「……じれってえな、その、ほら、……な、何をしてたんだよ」としどろもどろに言葉を発する。



「──星を」



答えようとして、口を開いたけれど、それは言葉を作る前に遮られた。毛利によって、だ。元親が毛利に視線を向ける。
毛利は眉をしかめつつ、続きの言葉を言う。



「星を、見ていたのだ。我と、そこの……とで」
「? 何でだよ」
「流れ星を、捜していた」
「流れ星?」



オウム返しに元親が尋ねると、毛利は頭を頷かせた。そして、「願いごとを言うと、叶うらしいぞ」と多少、不満をあらわにした声で続ける。
元親は「願いごと……か」と、何故か楽しそうに言うと、空を見上げ始めた。理由は──多分、流れ星を見つけるためだろう。



「それは、本当だろうな、毛利!」
「知らぬ。が言っておったのだ」
「それは、本当なんだよな、!」



元親は上げていた視線をに向け、嬉しそうに問いかけてくる。な、なんていうか……そこまで期待、されると……真偽のほどは分からないし。微妙に視線を逸らしつつ、「た、多分……」と言う。
なんて頼りない返答なんだろう。けれど、それで元親は納得したようで、「そうなのか!」と嬉しそうに言葉を弾ませる。
そして、空に視線を向け、「流れねえかな、星」と、わくわくとした感情がにじみ出たような、そんな声で言葉を口から出す。



「……何か、願いごとでも、あるの?」
「ああ! そりゃあ、でっかい夢がな」
「へえ、どんなの?」



好奇心で問いかけた言葉に、予想よりも早く答えが返ってくる。それに、若干驚きつつ、具体的な質問をした。すると、元親は笑みを浮かべて──元々、笑みを浮かべていたのだけれど、それを深くして──口を開く。



「天下統一」



しっかりと紡ぎ出された言葉に、笑みを浮かべるのを禁じえない。ああ、皆、考えることは同じなのだろうか。毛利と言い、元親と言い。もし、政宗や幸村に聞いたら、やっぱり同じ答えが返ってくるのかもしれない。

毛利が忌々しげに表情を歪めるのが見えた。元親はそれに気付かず、言葉を続ける。



「俺は、平和な世をつくるんだ。誰もが、笑って暮らせるような世の中を、な!」
「それを作ろうとして戦をするのだから本末転倒だな」
「お前、毛利……」



はん、と毛利が嘲笑の混じった声で笑う。
元親はそれに一瞬、引きつったような表情を浮かべたが、それを直ぐに打ち消し、「それでも」と続ける。



「今よりは、きっと良くなるだろ?」
「……問いかけるな。我にもわからぬ」



元就がそう言って肩を竦めたとき、だろうか。空を横切る一本の線。元親が小さく声を上げ、すぐに「天下統一、天下統一」と言う。けれど、星はすぐに消えてしまい、元親も最後まで言うことが出来なかった。



「嘘だろー! こんなの、無理……、くそっ」
「あ、あはは……」



落胆の表情を浮かべる元親に苦笑を浮かべつつ、「もう一回、挑戦したら?」と言う。すると、元親は「何度でもいいのか?」と俯かせていた顔をあげ、嬉しそうな表情を浮かべた。
それに頷いて答えると、



「よし! なら、俺は、言えるまでやるぞ! 別に良いんだろ、何度でも」
「……ならば、我もやる」



……なんというか、凄い頑張る人たちだ。普通だったら一回の挫折で諦めたりしちゃったりするものでは、と思ってしまう。
きっと、無謀なのだろう。流れ星はあんまり出てこないし、出てきたとしても三、四秒しか光らない。天下統一、という言葉を三回、しかも三秒程度で言わなければならないなんて。無謀としか言いようが無い。──けれど、どうしてか出来そうな気がする。気付かれないように笑みを浮かべ、「……頑張れ」と音を言葉に乗せる。

そういうと、一人は嬉しそうに、一人は憮然として、言葉を口に出す。



「おう! この俺、長曾我部元親様にできないことなんて、ねえぜ!」
「頑張れなどと、何を言っておる。だが、まあ……、その言葉はありがたく受け取っておこう」



その夜、流れ星は何個も流れた。



NEXT


書き直しました。


2007/2/1