心配してくれる人が居て、
自分の事を思ってくれる人が居て、

幸せ、だと思う。





Act32.三本の矢






団子を食べ終わり、茶屋から、出る。
手には、元就たちへのお土産の団子が入った紙袋を持ちながら。
政宗が、買っていたのだ。“コレ、お前が渡せよ”と言って、にコレを差し出してきたときは、
何だか嬉しくて、笑えて来た。

優しいな、って思った。

帰り道、政宗と色々話をして。
城についたのは、夜遅く。

城へついて、政宗が「帰ったぞ!」と大きな声を出した途端。

なにやら凄い勢いで誰かが走ってきて、政宗に抱きついた。
・・・・・・・小十郎さんだ。
艶やかな黒い髪を、少しボサボサにしながら「殿、殿、殿ォォォォ!!!」と、泣きそうな声で何度も言う。

政宗は、そんな小十郎さんを見て、小さく舌打ちしてから、「うるせえ」と頭を叩いた。

それでも尚、小十郎さんは、政宗にしがみつき「し、心配してたんですよ、殿ぉぉぉ!」と、何度も言う。





「ああ、わかった!わかったから!!離れろ、あついんだよ、Do you understand it?」わかるか!?


「わかっております、わかっておりますよ!」


「わかってんなら、離れろ!!」


「うう、でも、殿の事が心配で・・・!!!
 こ、こんな夜遅くまで、何処に行ってたんですかぁぁぁぁ!!!」


「・・・政宗さん、ガンバッ!」


「がんば、じゃ、ねぇよ!!!」





が、政宗に向かって労いの言葉をかけると、
政宗は、怒りながらも、そういった。

小十郎を必死で取りにかかるけれど、小十郎は“離れるか!”と言うような感じで抱きついている。
目に、涙を少し溜めて。泣きそうな声で「心配だったんですぅぅぅぅぅ!!!」と、言っている。

そんな光景を見ていると、ふ、と少しだけ頭の中に、家族の顔が浮かんだ。
きっと、小十郎さんと政宗の行動が、何だか家族のような感じだったからだろう。

少し、悲しくなった。
胸がキリキリ痛むような、そんな感じ。

何だか、痛かった。





「離れろ!!何度、俺に言わせるんだ、殺すぞ!」


「殿・・・!!!ひ、酷いですよぉぉ!
 小さい頃は“小十郎、あそぼー”って、何度も何度も言ってきたのに・・・!!
 この小十郎、悲しく思いますぞ!あの時の優しく可憐で可愛い殿は何処に……」


「Fall silent!!黙れ!
 ソレとこれとは関係ねぇだろ、離れろ!」


「…うううううう。離れますけれど……。
 殿、本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫だ、って言ってるだろ。何度も言うな、うっとうしい」





そう言いながら、政宗は小十郎の目を手で隠すようにして、頭だけを後ろにおしのけた。
不機嫌そうな声を出していながら、政宗は少し嬉しそうに口元が笑っていて。

うん。自分を心配してくれる人がいる、って言うのは幸せな事だもんね。
そんな事を思いつつ、苦笑していると、後ろから誰かに頭をパン、と叩かれた。
い、痛い・・・!!!

誰だ、の頭を叩いたヤツは!と思いつつ、後ろに振り向くと、
其処には呆れた顔をした、元親と元就が立っていた。





「・・・、何処に行っていたのだ。探したのだぞ?」


「そうだぜ、お前。心配かけやがって」


「へ・・・、あ、うん。ごめん」


「いや、お前に何も無いなら、大丈夫だけどな」





そういって、元親は、の肩を軽く叩いた。
元就も「、本当に何も無かったのか?」と、心配そうに訊いて来てくれた。
嬉しくて、頬がにやけそうになるのを、抑えながら「大丈夫だよ!」と答えた。





「…本当だな?嘘は無いな?」


「大丈夫だよ!」


「…………」





少し、納得のいかないような顔で、元就が見ている。
何、に傷ついていてほしかったのか!?いや、違うと思うけど…。
違う……よねえ?

そんな、元就にそんな事思われてたら、悲しくて泣く。本当に。
そんな事を思って居たら、政宗が「ーー!!」と、を呼んだ。
は、元親達に「あ、コレ!饅頭!!食べてね!」と言って押し付けるように
饅頭の入った袋を渡して、いつのまにやら遠くに居る政宗の所へと、走った。





「何、どうしたのー?政宗さんー」


「ああ、お前の部屋に案内するぜ、ついてこい」


「あ、うん。わかった」






政宗はそう言って歩き出す。はその後ろを歩く。
少し歩いて、ある場所で立ち止まると、政宗は「此処だ!」と言い、ある場所の襖を開けた。
襖の中は、必要最低限の物しか置いていない、普通の部屋だった。





「へーえ…、の部屋として、使っても良いの?」


「ああ。ちなみに・・・、お前の横は俺の部屋だ」


「…へ!?…本当ですかッ!?」


「ああ。……嫌、って言っても変えないからな。
 ちなみにその隣は元親と元就の部屋だ。」


「……へ!?二人同じ部屋!!?」


「ああ。どうせ男同士だし、良いだろ、と思ってな。
 不満言ってきやがったら、叩く」





叩くってちょっと貴方。

それにしても。
二人同じ部屋、って……
…なんて美味しい設定!どうしよう、どうしよう!
二人とも、なんやかんや良いながら仲良いし、不満を言う事は無いだろう。多分。

っていうか。
美男子に囲まれてる部屋・・・って!幸せだ、
そんな事を思い、嬉しく思いながら、少しにやけていたら、政宗が「お前、何笑ってんだよ」と、
少し苦笑しながら聞いてきた。





「な、ナンデモナイヨー!」


「はあ?・・・いや、本当に。どうしたんだ?熱でもあるのか?」


「ないないない!絶対無い」


「・・・なら、良いけどな」





そういって、政宗はの背中をポン、と叩いて、
その後、「俺は…する事が有るから、一旦席を外すが、夕飯の時間になったら又来るからな」と言い残し、
今さっき歩いてきた道のりを、歩いていってしまった。

夕飯の時間、かあ。
政宗の手作りの御飯だったら元気出るんですが・・・!すごく!

そんな事を思いつつ、またもやにやけながら、部屋の中に入り、引いてあった布団に倒れこんだ。
ぼふ、と小さな音を立てる布団。
少しだけ、暖かい。きっと誰かが今日干していたのだろう。

あー、寝たら怒られるかな。怒られるよなー・・・。
でも、眠気には勝てないんだよ、うん!政宗だって、知ってるでしょう。きっと!
ってことで。お休みー!!!

そう思いつつ、目を閉じると、眠気が一気に襲ってきて。
は、深い眠りについた。











何時間立ったのだろうか、目を開けた。
周りは暗く、何も見えない。まあ、目が慣れていないからだと思うけれど。
何分かすると、完全では無いが、少し目がなれてきて。
の近くに誰かが居ることがわかった。





「…どっ、どぅわッ」


「五月蝿い」





大声を出しそうになった瞬間、口に何かを押し当てられた。
ふかふかしてる。甘い匂いがする。本当に、何・・。

完全に、目がなれて。
口元の物を見たら、ソレは政宗と一緒に買ってきた饅頭で。
相手の方を見たら、元就が居た。
何時もの鎧のような物ではなく、就寝着を着ている。





「………え?」


「何で、ここに、と言う顔だな」


「……あー…うん」


は、寝ていただろう?
 ソレを見て、我と元親が起こそうとしたら、伊達が“起こすのは可哀想だぜ、寝かせておいてやれよ。”と、
 言ってきたのでな。寝かせておいたのだが」


「…っつぅ事は。ゆ、夕食……」


「夕飯は、我が持ってこようとしたのだが……。
 冷めていてな。冷めていたら、美味しくないだろう?
 だから、伊達が今さっきおにぎりを作ってくれた、のだが…」





“ほら”と元就は言って、皿をに手渡した。
その皿には、美味しそうなおにぎりが三つ乗っていた。
…湯気を立てていないところから見ると、時間がかなり経っているようだ。

元就は、少し苦笑したように笑い、言葉を続けた。





「………起こそうと思ったのだが…、
 寝ているときに起こされるのは嫌であろう?だから、起きるまで待ってたのだがな。
 ……冷めてしまった」


「……え、って事は…、大体何時間ぐらい元就待っていてくれたの?」


「……そんなに待っていない。
 大体、半刻、もしくは一刻程度…だな」





…刻?時、って意味かな。
確か一刻は2時間、だったような気が。
ということは…、1、2時間……!!!?

おまッ……、普通、いや、だったら、1,2時間も待てない。
途中でめんどくさくなるか、もしくは相手を無理にでも起こそうとするか、すると思う。

けれど、元就は。
が起きるのを、待っててくれた。





「うわ…、ごめんね、元就…。本当、ごめん」


「……何がだ?」


「だから、こんな…遅くまで待たせて。」


「謝る必要など無い。我が勝手にしたことだからな。
 ……我のした事は、にとって、迷惑だった、か?」


「そんなこと無い!凄く、…嬉しかった。
 有難う、元就…………」


「…それを訊いて、我も安心した。
 ………どういたしまして。」





そう言うと、元就は綺麗に笑った。
襖の隙間から入ってくる月明かりしか、灯りが無いのだけれど、見えた。

凄く、綺麗だった。本当に。
ああ、もう!何でこんな風に綺麗に笑えるのだろうか。

元就の笑い顔に、少し萌えながらも、お皿の上にのっている、おにぎりを一つ口に含んだ。
途端、広がる少ししょっぱい味。
けれど、やっぱり美味しい。流石は政宗!
お料理が得意なだけ、ある。本当に。

そんな事を思いつつ、美味しさに頬を緩ませていると、
元就が、急に言葉を発した。





「……。」


「なーにー」


「此処に一本の矢がある。」


「…はい?」





元就が、唐突に何処からか取りだした矢を手に持った。
何、アレか。有名な“三本の矢”の話を聞けるのだろうか。

そんな事を思いつつ、おにぎりを食べる手を止め、元就の方を見る。





「……一本の矢では、簡単に折れてしまうな」





元就がそう言うのと共に、ぼき、と小さな音を立てて、矢は折れてしまった。
………こんな細い腕なのに、何でこんな微妙に太い矢を折る力があるのだろうか。
変な所に感心していると、元就は又、何処から出したのか3本の矢を取り出した。

……や、本当に何処から出してるんですか、元就さん。
そんな事を思いつつ、元就の次の言葉を待った。





「……だが、三本の矢ではどうだ?
 ……簡単には、折れぬな」


「うん」


「それは、人間とて同じ。
 一人では脆く、切ない。直ぐに折れてしまう。
 だが、大勢の人間がそろうと、どうだ?折れぬであろう。それどころか…、脅威にもなる」


「うん」


「・・・・・・には。
 我も、元親も、伊達もついておる」


「・・・?」


「一人では、無いのだ。誰もが皆。
 も。……………だから」





そういって、元就は、少し間を空けてから、言葉を続けた。





「………悲しい事、苦しんでいること。
 我に聞ける事ならば、喜んで聞こう。
 だから。一人で、溜め込むな……良いか?」


「へ?無いよ?悲しい事、何て」


「……あるであろう。
 伊達と、伊達の家臣のじゃれあいを見て、悲しそうな顔をしていたであろう」


「あー……うん」


「だから、だ。
 …………ああ、また余計なおせっかい、だったか?すまぬ」


「え、いや!おせっかいなんかじゃ、無いよ」





がそう言うと、元就は安心したように、「そうか」と小さく呟いた。
そっかー…。悲しそうな顔、してたんだ。気づかなかった。

それのせいで、元就に心配かけちゃって。馬鹿だ。
でも、元就が心配してくれたことが、なんだか嬉しくて。

少し、だけ。又今度、相談してみよう、と思った。





「今度、相談しても良いかな?」


「・・・ああ。我でよければ、何でも聞くからな」


「元就も、悲しい事とか、あったら。に相談してね?
 出来る限りは手伝うよ!」


「……ああ、ありがとう、





そういって、少し二人で笑いあってから、元就を自分の部屋に行かせた。
“おやすみ”と、言葉を交わし、もおにぎりを全部食べてから、布団を被った。


今さっき起きたばかりだから、あまり眠くない。

目を瞑り、色々な事を考える。
そうだね、には、まだ近くに信頼できる人が居るから。


お母さん、お父さん、家族に会えなくたって、まだ、大丈夫。
………まだ。

有難う、元就。

そう小さく呟いた。

襖の隙間から漏れ出る、明るい月の光は、
やわらかく、優しく部屋を照らしていた。




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元就の三本の矢。有名なお話ですね。
なんか、好きです。元就格好良い!!格好良いよ!!ホレるぜ!って感じです。
かなり手直ししました。うん。実感したこと。元就の性格って本当難しい。
いや、とても書いていて楽しいんですけれども。

頑張って精進したいと思います。

2006.6.28