|
笑っているけれど 笑っていない。 そんな感じだ。 Act35.笑っている、笑っていない 政宗と佐助がにらみ合いをしている場所から、と幸村は逃げ出した。 食堂から出て、縁側を歩いている途中、幸村が「…はあ」と息を漏らした。 「つ、疲れたでござる…、知らなかったでござるよっ! あんなにも二人の仲が悪いなんて…一触即発、というか何と言うか」 「あはは、そうだねー…ハハハ」 「何やら疲れたでござるなー…、しかも、…暑い」 「そうだね、暑いねー……」 「うう、殿のところで食べた、かきごおりが食べたいでござりまするな…、本当に」 「あー!良いねー!でも氷も無いだろうし蜜もないだろうし…、作れないよなー…」 がそういうと、幸村が少し考える仕草を見せた後、「大丈夫かもしれませぬっ」と言った。 へ?何で?だって、シロップなんて、戦国時代には無いのでは。知らないけれど。 そう思いつつ、「へ? 何で?」と幸村に尋ねた。 「その…昔、読んだ物語に、かき氷の事が載っていて、 それに、蜜…とは言うか甘葛の甘味のある樹液である霜をかけた。って、 書いておりましたゆえ」 「へ? あ? よくわからないけれど、まあカキ氷作れるんだね…凄いねー」 「作ろう! と…思いますが、甘葛自体、秋から冬の間に茎を切らなければ、 蜜が出ませぬ。ですから、無理でござるな…」 幸村がそう言って頭を抱えて「くうう某、一生の不覚!!」と叫んでいた。 いや、そんな…、気にしないで。と言おうとした時、声がかけられた。元就と元親に。 「そんな所で頭抱えて、どうしたんだ?…ソイツ。 というか、誰だよ?の知りあいか?」 「え?あー…」 「元親、が困っている。質問は一つずつにしろ。 それより、元親……、お前はあの輩をしらぬのか?」 元就が深いため息を吐きつつ、同情を含んだ瞳で元親を見た。 元親は「うっ」と苦しそうに呟いて、「…なんだよっ、良いじゃねぇか!」と何やら少しどもりつつ元就に反論していた。 それを元就はうっとうしいとでも言いたそうな表情を浮かべつつ、「本当に」と言葉を発した。 「知らぬのか」 「知らねー…なあ? 普通、そうだろっ!? だって俺、四国から出たこと無いし」 「それは自慢できることでは無いぞ。 ……武田軍は知っているだろう? 伊達は知っていたのだから」 「ああ。色んな意味で有名だよな。確か…、毎日武田と、その主従の真田…幸村? ってヤツが 殴り合いしてるって聞いたけど」 「ぅぉおお館様をッ! 呼び捨てにッ! するなっ!!!」 元親の言葉にいち早く反応し、幸村が俯いていた顔をあげ、元親に向かって叫んだ。 急に声を出されたからか、元親は驚いたような表情を見せている。 「…は? え? お館様? 誰の事だよ?」 「…まだわからぬのか。 こんの馬鹿が、阿呆が、呆けが! 一度死ぬが良いぞ!」 「なっ!!? え? 誰だよコイツ! なあ、、誰だよ!!?」 「えっと、真田幸村、なんだけど…」 「さ、なだ幸村…ッ!!? って、え? あの、…あの…、殴り合いの!?」 その覚え方は変だと思うんだよ、元親。 そんなツッコミをココロの中でしていると、幸村が「殴り合い…とは…」と、 何やら怪訝そうな表情を浮かべていたが、気にしない。幸村にとって、お館様との殴り合いは 拳と拳の語り合いなのだろう。…わからない、けれど。 「……真田幸村、か…」 「そうでござる。貴公は長曾我部元親殿でござろう? その隣の方は毛利元就殿。お館様から何度か聞いた事がありまするっ」 「…なんと、信玄公は言われておられたのだ?」 「…元就殿は、……オ…なんでもありませぬっ!!」 「…オ? オとは何だ。次に続く言葉がクラだったら、おぬし…生きては帰らせぬ」 「そっ!? オ…クラではござらぬよ!? その、…ええと」 「まあまあ、元就、そんなにも怒るなよ。 なあなあ、俺の事はなんて言ってたんだ?」 「ええと…、確か、肌が白いと」 「は?」 「…へ?」 一瞬、幸村の言葉の意味が良くわからず、変な声を出してしまった。 いや、肌が白いって…元就だって白いし、政宗だって白い…よね、うん。 幸村が笑顔で言葉を続ける。 「焼けるのが嫌で、航海に出るときは…日焼け止めと言うものを塗っている、と。 後、海賊のような風貌、とか…後は」 「いや良い!止めろッ!なっ、なんで俺の秘密を知って……ッ!!?」 「? 知られていないと思っていたのか? お前が日焼け止めなるモノを塗っていることは、知れ渡っておるぞ?」 「……え、う、ウソ、嘘だろっ!?」 元親が焦ったようにどもりながら、言葉を発した。 心なしか瞳がうるんでいるような気がする。いや、気のせいだよ、気のせい、うん。 元親が「うあああああもう終わりだああああ!!!!」と頭を抱えてその場にうずくまりつつ、叫んだ。 そんな元親を見て、幸村が「え?! ど、どうなされましたかっ」と、困惑している。 その時。そっと元親の肩に、手が置かれた。…元就の手だ。 元親が「もっ、元就…ッ!?」と、顔をあげ、元就を見る。 元就は少し口の端をあげて、笑みを見せつつ、言葉を発した。 「……元親」 「も、となり?」 「…少しばかり、自分の秘密が知られたからといって、 ギャーギャーギャーギャー、五月蝿い。瀬戸内海に沈めてほしいのか?」 「…おまっ…」 「遠慮は要らぬ。大丈夫だ、お前の遺品も全て海に流してやる。それで良いのだろう? ちなみに領地は我が頂くからな」 「ひ、ひでえ…っ、お前、酷いよな…」 「…酷い? 酷くなどは無いぞ。 ただ、この場に居る皆の心を代弁しただけだ」 「…こんの……オ」 「クラを続けたら命がないと思え」 「…森の」 「妖精さん等と続けたら明日の朝日を拝めぬと思え」 「……」 どうしよう。この場の空気が下がった、と感じたのはだけでは無いと思う。 幸村なんか、「……え、えーと…、その…」としどろもどろになりつつも、立ち上がって元親の近くから退いた。 うん、元就、クールだね! いや、本当、色々な意味であなたに真っ青だよ。 心の中で元就に拍手を送りつつ、このままでは喧嘩になりそうな予感がするので、止めようとした。 その時。 「…あーらら。いつのまに、こんなにスッゴイ険悪な雰囲気に? 真田の旦那ー、どうしたの、顔引きつってるよ」 「…さ、佐助ッ!!」 「…さ、すけ? 誰だよ」 「……知らぬ」 いきなり、出てきた、……佐助は、「あははっ、知らないよねー。やっぱり」と、 笑いながら元親と元就の傍に近づいて、言葉を続けた。 「猿飛佐助!よろしく」 「…あ、ああ、よろしくな。 俺の名前は長曾我部元親」 「……我の名は…、 毛利、元就」 「ああ、知ってる知ってる。 伊達の捕虜なんだよねーお二人さん。 ああ、家臣って言えば良いのかな」 「……」 元就が佐助をにらむ。ヒイイ何してるんですか元就! すごく怖いですよーキレイなお顔が台無しですよー。 口に出そうとしたけれど、なんだか雰囲気が重かったので無理だった。 幸村が「ええと、お二人とも、気を悪くしないで下され!」と、焦ったように言葉を発した。 「…こやつは…なんだ」と元就が不機嫌オーラむき出しの声で幸村に問う。 幸村が答えようとした、瞬間、佐助が口を開いて、幸村の言葉を遮った。 「佐助は…」 「これでも忍びなんだよねー。 だから、二人の事はよく知ってるよ。調べたから」 笑いながら、はきはきと喋る。…少しだけ、笑いに違和感を感じた。 それにしても、なんていうか、なんというか…、調べたって…何を一体調べたのだろう。 土地の事、人柄、家臣…とか?よくわからん。 元就の佐助を見る目が一層、鋭くなった。ええええ?!ちょっ、元就サン!どうしたの!本当に。 しばらく沈黙が続いた後、元就は俯いて、「……そうか」と呟いた。 「まあ、もう敵さんじゃ無いからね、調べることも無くなったし。 宜しくね、…元親さんに、元就さん」 佐助が手を差し出す。元親が「あ、ああ、よろしくな!」と言いつつ、手を差し出し、佐助の手を握った。 元就も、「…ああ」と小さく呟いて佐助の手を握った、と思ったら直ぐに放してしまった。 少し、オオオイ元就! 良いんですかソレで! と、心の中で盛大にツッコミを入れたけれど、 元就のそんな様子にも、全然佐助は傷付いていないようで「あはは。じゃあね、真田の旦那」と言って、 その場から姿を消した。 「元就…どうしたの、様子おかしいよ」 「…あやつ、は…」 が、元就の近くへと寄り、呟くようにそう言う。 すると、元就はか細い声で何か言ったかと思うと、に寄りかかってきた。 おああッ!?なんですかコレ、ファンサービスですか元就さんっ!! そんな事を思いつつ慌てていると、元就が又もや小さな、消え入りそうな声で呟いた。 「あやつ、…猿飛は…変だ」 「は?変?何が」 「おかしい、何かが、変だ」 「おかしいって…どういう…意味かわからんのですが…」 「笑み」 「…へ?」 「笑みが。笑いが。おかしい。笑顔が、笑顔ではない。 アレは、あの笑い方は………」 心が無いような、 壊れた人間が笑うかのような、笑み、だと 元就は言った。 が少し、違和感、を感じたのはこのせいなのだろうか。わからない。 元就が、二人にきこえないように小さく呟いた。 ”あやつには近づくな”と。 …ごめん、元就、多分無理。 だって、は、佐助と仲良くなりたいんだ。 心の中で謝りつつ、「……頑張る」と、呟いた。 →NEXT −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− だああああ書き直しどころじゃない!何コレ!0から書きましたーアハハウフフ。 長かった…長いよ…。佐助編というか何と言うか。いやでも、佐助は全然出てこないと思います☆ すいません。 この話を読んで何か少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 それでは、有難うございました。 2006.7.19 名前変換できてないので直しました。あと少し手直しを 2006.12.31 |