城下町。
──とてもにぎわっている、場所だと思う。
活気がある、元気を与えられる場所だと、思う。





Act36.出会いと喧嘩





元就に佐助に近づくな、といわれた。
いや、うん、なんというか……。は佐助と話したい、んだけど…な!とか思ったのだけれど、
ソレを口に出すこともままならなかった。雰囲気が…雰囲気が重かったんですよ!


少しして、から離れた元就は「…すまない、忘れてくれ」と、
薄く、なんだか哀しそうに笑った。

元親が「あーあーあーッ!なんだよこの雰囲気!寒い重い!…ったく、ついてこいっ!」と言って、
と元就の手を引っ張って、歩き出した。
後ろから幸村が「ッま、待ってくだされー!某も…」と叫ぶ声と、ドタドタと足を動かす大きな音がした。


ついてこい、って。
……オイオイオイ!何処に行く気ですか元親!もとちかんって呼んじゃうよ。
…いや、呼んだら怒られるよね。寧ろ殴られ…ヒイイやっぱ止めます。

しぶしぶとついて行く、っていうか手を引っ張られているから連れてこられた場所は、
活気のある、町だった。
困惑していると元就を余所に、元親は「おー!凄いにぎわってんな!城下町」と嬉しそうに
言葉を弾ませていた。




城下町、って…アレか。歴史の資料とかでよく出てくる、町ですか。
うわあ、感激。資料集とか大河ドラマとかでしか見れなさそうな景色が、目の前に広がっている。

思わずため息をついた。
元親が振り返って「なあ、」と話しかけてくる。





「何か、ほしいモンとか無えのか?」


「ほしいモン?」


「そうそう、ほら、団子とか!その…装飾品とか」


「え?何で?」





がそう訊くと、元親は一瞬困ったような表情を見せて、
「なっ、何でって…そりゃあよお……」と、なんだか言葉を詰まらせた。

え、どういう意味で訊いてきたんですか。
が悩んでいると、元親が「なんでも良いだろ!早く言え!」と怒鳴りつけてきた。

えええーーー!!?
な、何コレ何コレ!?ドメスティックバイオレンスですか!!ってそれは違う。

え?欲しいモノ?えええっと、じゃあ貴方が欲しいです!駄目だ、こんなコト言ったら駄目だ!変人だよ。


困っていると、元就が「元親、が困っておろう」とため息混じりの声で言葉を発した。
元親がその言葉に「う、うるせえ!しょうがねぇだろうがッ」と、返していた。





「でっ、何、何か欲しいモンはねぇのか」


「えっ、えーと、…えー…、そうだなあ、今欲しいモノは…、
 団子、かな…。小腹がすいたし」


「団子?団子で良いんだな!?」


「えっ?あ、うん。団子が欲しい、デス…」





がそう言うと、元親は「よし!」と言って、元就と幸村に「行くぞ」と声をかけて、
何処かへと行ってしまった。に「そこで待ってろ!」と言う言葉を残して。


ええええーーー、何、コレ。なんで置いてけぼり。
独りぽつんと立ちすくみ呆けている姿は、傍目から見ても変だと思う。
服は…大丈夫だと思うんだけれど。


切ない。限りなく切ない。
この切ない思い、誰か受け取ってください。



半ば現実逃避気味だ。
まあ、なんていうか、うん、待ってよう…。


待つことにした。
近場にあった、木にもたれかかって。






数十分経った…ように感じた。実際のところ、2,3分しか経ってないのかもしれない。
遅い、よ…なんか、切なさを通り越して哀しくなってきた。涙出ちゃうよ。



『おいていかれた』


そう思うと、なんだか哀しくなってくる。
いや、実際のところ、…多分、置いていかれてはいないのだろうけれども。
時間が経つたびに、『どうしてこんなにも遅いのだろう』とか、
『なんで』とか『どうして』とか、そういう疑問ばっかり浮かんでくる。

独りになった、孤独感。まわりに知っている人が全然居ないと言う、寂しさ。
ああ、どうしよう、涙が出そう。

涙よ、出るな───!

そう思って、顔を手で覆い隠したとき、
声が、 かけられた。





「…なに、してるんだべ?」


「…へ?」





高い、声。元親や元就、まして幸村でも政宗でもない声。
誰の声、なんだろうか。聞いた事がある。多分、この声は。





「泣いてるんだか?」





心配そうな声。手を顔からはなして、その声の主、…少女を見た。
いつき。いつきだ。やっぱり。





「……泣いてないだか。それならいいべ!
 でも、こんな所にずっとつったってっと、変な男に絡まれちゃうだよっ」


「へ…?」





「こっちだんべっ」と、いつきは言って、の手を引っ張った。
歩いていてる最中、いつきが「なあ」と話しかけてきた。





「…?なに?」


「おめえさん、迷子だか?」


「ま、迷子…じゃ無いよ」


「ふうん?だったら、あそこでなんでずっとつったってたんだべ?」


「あ、いや、待ち合わせ…って言えば良いのかな」


「待ち合わせー?でも、泣きそうだったべ!どんだけ待たされただ?」


「え、どうだろう…、30分ぐらい?」


「さ、さんじゅ…っぷん?」


「あ!え、えーと………」





いつきが、オウム返しにして聞いてくる。そうじゃん、こっちでは分なんて無いんだってば!忘れてた。
三十分のかわりになる言葉…一刻が2時間だから、半刻で1時間。だから──…。
わ、わからん……。

が苦悩していることに気付いたのか、いつきが「ま、なんでもいいべ!」と元気に言葉を発した。


いや、なんていうか。
この子は…元気だな。ゲームをやっていても思ったけれど、会って見ても、そう思った。
元気で、明るい。優しい。しかも、可愛い…!!

そう思っていると、いつきが慌てたように言葉を発した。





「………って。え!?ま、待ち合わせ…ッ!?
 お、オラ、待ち合わせ場所から連れ出しちゃっただかーー!?
 うわ、うわっ、どうしよう…、とりあえず元の場所に戻るべ!」


「あ、うん、そうだね」


「ご、ごめんな、ごめんな…っ。
 オラ、先走って…無理やりに引っ張って…」


「あ、いや、気にしないでね。
 えーっと…その、の事を思って、あそこから連れ出してくれたんだからさ、
 むしろ、感謝してるよ。ありがとう」





がそういうと、いつきがの顔を見て、「…おめえさん…」と、なんだか少し震えた言葉で呟いた。
その直ぐ後、また、小さく呟くように言葉を続けた。





「──いつき」


「へ?」


「いつきって、言うだ。オラの名前」


「あ、そうなんだ。可愛い名前、だね」


「あ、ありがと…。えっと、おめえさんの名前は、なんだべ」


の名前?
 …って言うよ」


……。…は優しいだっ」


「…へ?」


は、はっ、優しいべっ」





が、優しい?
そんなこと無いよ。そういおうとした時、いつきが止まった。……何処かを見据えて。
視線の先をたどると、そこには幸村と元親と元就が居た。

キョロキョロとしきりに周りを見渡している。もしかして、を探して─…?
そう思ったとき、いつきがから手をはなして、言葉を発した。





…、ええっと、オラ、もう行くべ!近くに…待ち合わせしていた場所があるだ。
 だから…その、お別れだんべ。じゃあ、ー!」


「あ、うん。いつきちゃん、じゃあねー」





いつきが走っていく姿を見届けて、は元親達のところへと走った。
元親はを見つけて目を丸くし、次の瞬間には「何処行ってたんだよ!」と怒った。
幸村が「ま、まあまあ、某たちも悪いのですし」と、元親を宥める様に言葉を発した。


それでも、怒ったように元親は言葉を紡ぐ。





「…でも、お前……ッ!待ってろって、言っただろうがッ!」


「ご、ごめ…」


「ごめんで済む訳がねえだろうが!
 お前…、に、…何かあったかと思った、だろうが…ッ」






そこまで言うと元親は背を向けて歩き出した。
……え。どうしよう。

、元親を怒らせた──?





「元親?」





呼んでも、返事はくれなかった。
元就が「…気にするな、あいつの癇癪はいつもの事だ」と呟いて、
幸村も「気にしないでくだされ、殿は悪くありませぬっ」とを励ましてくれた、けれど。


きっと、があの時、待ってろって言われた場所を離れたから。
元親は怒っているのだろう。
の、せいだ。の───…。




独りぼっちで、木にもたれかかって待っていたときと同じような
哀しさと寂しさが、の心を襲って、
なんだかまた 涙が出そうになった。



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ああああどうしようー。いつきの方言がよくわからない。けれど好き。
本当はいつきじゃなくて蘭丸だったんです。けれど長かったんで、それは又今度!ってコトで。
今回は元親と喧嘩ー。出せるネタは出せるときに出しとけ!ってコトで。
満足です。少しでも読んでいる方が楽しんでいただければもっと嬉しいです。

2006.7.22