Act37.居なくなる





元親に怒られたよーうわーん。

なんて言うはずも無く。全員が無言のままで帰ってきた政宗の城。
帰ってきたとき、一番最初にきこえたのは、政宗の怒ったような声だった。





「!てめェら!何処行ってやがったんだ!?」


「……城下町、でござるよ。心配、かけたのでござろうか?すみませぬ」


「HA!わかれば良いんだよ、わかれば!」





政宗と幸村が話している最中、元親は二人を避けて、城へと入って行った。
政宗が驚いて「あっ、おい!」と声を荒げるけれど、無視してそのまま何処かへと歩いていってしまった。

ああ、どうしよう。のせい、だよね。やっぱり。
どうしたら、一体どうしたら良いのだろう。謝れば、良いのだろうか。
だけど、……謝っても、きっと許してもらえないと想う。言葉をかけても返事をしてくれなかったから。

どうしよう。どうすればいい?

どんどん顔が俯いていった。政宗が「?」と声をかけてきたけれど、何も返せなかった。





「…、気にするな」


「…え?」


「ただ、元親はを心配していた。…それだけは、知っておくがよい。
 待っていろ、…あやつを、怒ってくる」





元就は其処まで言って、元親の歩いていった方向へと、走って行ってしまった。

……心配、かあ。

が悪いのだから、元就が元親を怒る必要は無い。
元就を追いかけようとして、走り出そうとしたら手首をつかまれた。

なに。少しの怒りを顔に出して、手首を掴んだ人を見る。





「…ま、政宗さんっ、ちょっと放してくれませんかね…」


「AH!?何かしらねぇが、何かあったんだろ?
 俺に教えろ。話せ。説明しろ」





命令口調ー!!?
説明とか…、が勝手にどっか行ったんで、元親に怒られました。としか言いようが無い。

きっと、政宗にも怒られるんだろうなー…。出来る事なら、言いたくない。
それは何でなのだろう。広まるのが嫌だから、では無い、きっと恥ずかしいからだ。

が口を噤んでいると、政宗が眉間にしわを寄せて、「…どうした」と訊いてきた。





「…ちょっと、ね」


「……ちょっとじゃあ、分からねェだろうが」


「…。元親と、喧嘩、しちゃってさ…」





苦笑が浮かぶ。あの時、あの場所を離れなかったら、こんなコトにはならなかった。
元親と話せてた。笑いあえてた。
少し話せないだけで、こんなにも哀しい気持ちになるなんて、思ってもみなかった。

が呟いてから、政宗はずっと黙っていた。
ある人が、来るまで。





「政宗様!」


「…おう、どうした、小十郎」


「四国の鬼からこのようなモノを貰ってしまったのですが…、いかがいたしましょうか」


「このようなモノ?」





政宗が声をかけた相手、小十郎さんに向かって歩き出す。
幸村が「殿」と声をかけてきたと同時に、政宗が小十郎さんから何かを受け取っていた。





「……殿、聞いてくだされ。
 元親殿は、殿の事を考えておられた。その証拠が、アレでござる」


「アレ?」





がそう訊くと、幸村が「政宗殿!」と声を張り上げて、政宗を呼んだ。
政宗は突然呼ばれたのに驚いていたけれど、直ぐに「あ、ああ、何だ?」と問い返してきた。





「貰ったもの、見せてはくれませぬか」


「ん?ああ、良いぜ」





ほら、と言って差し出された紙袋。幸村はそれを受け取り、紙袋の中身を出して、に手渡した。
手渡されたものは、ほのかに温かかった。
一瞬、何をもらったのか分からなかったけれど、頭が理解していくと同時に。
なんだか、──泣きそうになった。


団子。団子だ。渡されたものは、白い団子だった。ひらべったくて、楕円形の。





「これ、元親殿が買ったのでござるよ。
 殿の為に、色々な店を回って」





そっと、幸村がの手に己の手を乗せて、微笑んだ。





殿の為に」





な、そんな。まさか。嬉しい、凄く嬉しい。
少しの間、団子を食い入るように見ていると、幸村が言葉を続けた。





「──殿を置いていってしまったこと、それは本当に申し訳ないと思っているでござるよ!
 某も、元就殿も、元親殿も。だから、その…元親殿が怒鳴ったことは、怒らないでいてくだされ…」





そういって幸村は「怒ったのは、きっと、心配していたからこその事だと思うでござりますから」と続けた。





「心配…させたんだね、ごめん。
 ごめん、今から 元親に謝ってくる!」


「そうですなっ!それが良いと思うでござるよ!!」





走り出そうとして、立ち止まった。元親の居る場所がわからない。
がむしゃらに走りまわろう!と思うけれど、広大な城だ。
城中探していたら見つける前に息が切れて体力が無くなってしまう。
……多分。というか絶対に!

誰か知っているだろうか。
そういえば、小十郎が元親にあの団子を貰ったのだから、知っている…かもしれない。
小十郎に振り返り、言葉を発した。





「小十郎さんっ」


「?何ですか」


「あの…、元親が居る場所とか知ってたりしませんか?」


「…多分、ですが、庭の方に居るのでは、ないかと」


「ありがとうございます、…えっと庭ってどこらへんにあるんでしょうか」


「オイ、怒鳴られたって──


「…此処から真っ直ぐ行って、左隣にあります」


「あああもう本当にありがとうございますー、いつかお礼をさせていただきます!
 政宗さん、その…話はまた後で詳しく話すから、うん!じゃあ、さようならー」


「あ、おい!Stop!」





政宗がを引き止める言葉が聞こえたけれど…、すいません、今は元親に謝りに行きたいんですよ!
そう思いつつ言われたとおりに真っ直ぐに走った。途中でつらくなってきて、歩いたのだけれども。

ごめん、元親。

謝ろう。とても、とても!
そうしたら、許してくれるかもしれない。…許してもらえなかったときの事は、あまり考えたくない。

歩きながら、謝るときの言葉を考えた。








*







「元親」






声をかけた。なんの返事も無い。
返事をしろ、と心の中で毒づきつつ、言葉を続けた。





が可哀想ではないか」


「…なんでだよ」


はもう、…十分に反省したと思うのだが」


「…ンな事…知ってる、わかる!」


「だったら何故、ずっと怒っておるのだ?が焦って居たぞ」


「……」


「なんだ、黙りおって。言葉は喋らぬと伝わらぬぞ」


「…しょうがねェだろ!」


「何が」





呆れたように言葉を返すと、元親は俯いて小さく呟いた。
風の音にかき消され、何と言ったかは、聞き取れなかった。





「…何と申した?」


「……もう良い」


「良くは無い!我が気になるであろうがっ!」


「…あの時」


「…なんだ」


が居なくなったと思った」


「まあ、あの場に居なかったからな」


「そういう意味じゃねえ!
 …だから…、無くなったと 思った」


「どういう意味だ」





そう訊くと、元親は苦笑を漏らして、小さな声で言葉を続けた。






「ははっ、笑っちゃうだろ。
 アイツが、この世から居なくなったと思った」


「…この世から?」


「ああ。…馬鹿だろ?
 俺があんな場所に置いといたから、勝手に行ってしまったから。そう思った」


「ああ、お前は馬鹿だな」


「……」


は居る。帰ってきた。この世から消えてなど居ない」


「知ってる」


「お前は杞憂していただけだ」





そういうと、元親は我から顔を背けて、ばつが悪そうな表情を浮かべた。

何が。『この世から消えた』だ。訳がわからぬ。





「…謝るが良いぞ」


「……ああ」


「消えた、などと考えるな。
 居る。存在している。不安なら、守れば良いだろう」





そこまで言ったとき、床板が軋むような独特の音が聞こえた。
そちらの方を見る。が居た。我達の存在に気付いたようで、近寄ってくる。





「元就、元親…」


「どうしたのだ、


「あ、いや、なんていうか…。元親に、謝りたくて、来たんだけど…」





そういっては元親をちらりと見た。
元親が、呆気にとられたような表情を少しの間浮かべていた。なんだあやつは。

が深々と頭を下げて、「ごめん!…ごめんなさい」と、声を出す。
微妙に声が震えているような感じが受け取れた。





「…


「元親、ごめんなさい。…が、あの時、勝手に動いたりしなかったら、良かったんだよね」






元親が動く。の表情が一瞬強張った。
何をやっておるのだ、アヤツは!驚かせている場合じゃ無いだろう。
謝れ、と言ったのに。

心の中でモヤモヤとした気持ちがうごめく。早く安心させれば良いものを。
睨み付けるように元親を見る。


元親が腕を動かし、の頭に乗せた。





「なんだ、その、すまねえな」


「…元親!」





の顔が綻ぶ。元親の顔もつられて又、綻んだ。
我の顔にも、少し笑みが浮かぶのが感じられた。嬉しいことだ。





「それにしてもよ…、、お前…その手に持ってるのって…」


「……へ?あ、あーあー!団子!だよ…」


「なんでお前、そんなモン……」


「いや、なんていうか…、成り行きで…、ね!うん!」


「何が……ははっ」






笑っている元親を見て、は怒ったような表情を見せる。
けれど、その表情の中には安心というものが浮かんでいて。

何処にでもある風景。浮かぶ笑顔。

とても、幸せな事。

だけど、少しだけ心の臓が痛んだ。
なんでかは、わからなかった。






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ゲーム版の小十郎が書きたいのにかけないこのジレンマ。
誰か小十郎の性格を!政宗のストーリーモードやりまくってたらわかるのかな。
頑張ろう。

今回は元親との和解。早い。
元就が少しだけ嫉妬ー。うわー駄目だー元就に嫉妬は似合わないよー。なんか女々しい。

それではでは。


2006.8.1
8.3…修正。