え?まさかまさか。
そんな、嘘でしょ。うん。

嘘と言ってください……!!





Act38.素





「──暑い」





暑い本当に暑い。思わず壁に寄り添ってしまう。壁は熱を吸っていないからか、冷たい。
うあああ冷たい本当に冷たい!

ひんやり。涼しい。、壁になりたい。
壁にくっついて、はあーとため息を漏らしている様は、きっと傍から見て、凄いモノだったんだろう。
現に、政宗がの姿を見つけて、驚いていた。





「……ッ!?おまっ…、何してんだよ!」


「壁に張り付いております。おあー涼しいー」


「いや、見てわかる…というか…、…おまえ…」


「いや、本当に涼しいよ!壁って良いよね!」





がそう力説すると、政宗は呆れたようなため息をついた。
オオオイ!酷いですね!





「…お前、涼しいのが欲しいなら、女官に氷かなんか貰えばよかったものを」


「へ?氷!?氷なんてもらえるの?」


「Yes!知らなかったのか?」





知らなかった。うわー!だったらこんな壁にくっついて、変人を演じてるより、さっさと貰いに行けばよかった。

あ、けど。
氷って貴重…だよなあ。きっと。だったら何かが貰っちゃ駄目だよなあ。うん。

政宗だって食べたいだろうし、幸村だって元親だって元就だって小十郎さんだって佐助だって、欲しいだろうし。

いいやー、我慢しよう。うん。


政宗が怪訝そうな顔をして、「貰いにいかねぇのか?」と訊いてくる。





「あー…良いや、うん。お心だけでも嬉しいよ」


「…?急にどうした」


「へ?あー、いや。以外にも欲しい人居るだろうし。
 まだまだ我慢できるからさっ。もう駄目!無理!氷プリーズ!って状況になったら、
 貰いに行っても良い?」





そういうと、政宗は苦笑を見せて「ああ、貰いに行け」と言ってくれた。

政宗が、「それにしても…、今日は本当に暑いな」と空を見上げながら、呟いた。
本当に。全くもってその通りです。政宗さん。
壁から離れて、政宗のように空を見上げた。

太陽が本当に眩しい。あー駄目だー、空がまともに見られないーえへへあはは。





「なんていうか、こう暑いと食欲もなくなるよねー」


「そうか?」


「うん…、夏バテだよ、夏バテ」


「ふうん?夏バテ…たしか、夏バテには適度な運動と、それと…夏野菜が良いらしいな」


「へえー?そうなんだ」


「ああ。…そういえば、小十郎が今、夏野菜を収穫しているらしい」


「…へ、へえー…」


「適度な運動、それに…そうだな、お前、小十郎ン所、行って来い!Let’s go!」


「ま、マジですか…ッ!?」


「ああ、本気だ」


「殺す気ですかァァァ!!?」


「Do not worry!」


「ちょっ、気にするな、って…!訳わからんのですが!」




政宗がの手を引っ張って、縁側を歩いていく。結果、引っ張られる自分。
だああ無理だって。農作業なんて!、そんなに力ないよ!小十郎さんに絶対「邪魔だ、どけ!」とか言われたり。

少しでも政宗について悪く言ったら、「お前…、どの口でそんな事言いやがる」とか言われたりして…!



悪い想像は止まらない。冷や汗が出てくる。
ああ逃げ出したい。出来れば盗んだバイクで走りだしたい。
あ、バイクなんて無いって!この時代に!!

一人思考錯誤していると、政宗が誰かを見つけて声をかけた。





「小十郎!」


「ん…?おお、政宗様!どうなされたのですか?」





パタパタと、此方に駆け寄ってくる音がする。
……小十郎様のおなーりィー。





「どう、って事もねぇんだけどな。
 …お前、そろそろ夏野菜の収穫時期じゃねぇのか?」


「ああ、はい、そうですね。
 唐柿、南蛮黍…色々、実ってきています。今日の夕餉の頃には出すことができるかと」


「Good だ、小十郎!楽しみにしているからな。
 …あ、それにしてもよォ、小十郎」


「なんです?」


「お前、一人で収穫するんだろ?」


「はい、そうですね」


「なあ、人手とか欲しくねぇか?」


「人手…ですか。まあ、欲しいですな」


「Good timing!此処に、お前の手伝いをする奴が一人居る」





そういって、を小十郎さんの目の前にひきずりだす。
だああ自分で前に行けられますから!ひきずるの本当に止めてください!とてつもなく恥ずかしいです。

小十郎さんが目を見開いて、驚いたような表情を浮かべる。
なんていうか…そんなに驚かれるとは思いもしませんでした。ハイ。





だ。手伝うって言ってたぜ」


「そう、なんですか?」


「え、えーと…」





口ごもる。政宗がを肘で小突いてきた。
さも、“早く『そうです、言いましたー!』って言えよ!”と言っているようだ。

いや…、本当体力、無いんですけれど。

でも、考えてみると、この行動は政宗がの為を想ってやってくれたこと、なのだろう。多分。
政宗の親切心。ソレを無碍にすることは出来ない。





「…ええと…、はい、手伝わせていただきます…」





そうだよ、自分。プラスの方向に考えれば良いじゃん!
もしかしたらコレがきっかけで小十郎さんと仲良くなれるかもしれない。
夏バテが解消されるかもしれない。一石二鳥だよ、うん!

政宗がの背中を押してなにやらニヤニヤと嬉しそうな顔をしながら、
「ほら、行け。さっさと行って来い!」と言う。


…え?ちょっと待って。ニヤニヤって。ニヤニヤって!

本当に、親切心、から…だったのかな…。

少々の疑問を心の中で渦巻かせつつ、小十郎さんが「では、こっちです」と言って、
歩き出すのをついていった。

















ジリジリ。太陽の光が前にも増して降り注ぐ。
まあ、日陰になるような場所が無いし、しょうがないことなんだけれど、暑い。
うわーどうしよー日焼け対策してなーいテヘッ。なんて。なんて…アハハ。

小十郎さんが「…ですので、この唐柿は赤く熟れたモノを取ってくださいね」と、
色々と説明をしてくれるのだけれど、あんまり耳に入らなかった。すんません。

唐柿、と呼ばれたものを見る。そこには、とてもキレイな赤い色に染まったトマトがあった。


房からちぎると、途端に手のひらにかかってくるトマトの重み。きっと、とても美味しいのだろうなあ。




「…本当、美味しそう。これは、まつさんが欲しがるのもわかるなあ」


「…まつ?」




呟いた言葉はしっかりと、小十郎さんの耳に聞こえていたようで。
こっちを向いて怪訝そうな表情を浮かべている。





「まつ、と言えば、あの前田利家の…妻のこと、では?」


「え、いや、…ち、違いますよ、うん」


「…?そうですか?
 それにしても、美味しそう…とは」


「え?あ、あー…えーっと…」


「…有難うございます」





一瞬だけ、小十郎さんの表情がとても嬉しそうな表情に変わった。
ええ…ええええ。何あの表情。素敵すぎます。

持っていたトマトを落としそうになった。
多分、落としてたら小十郎さんの表情が微笑みから般若のような顔に変わるような気がする。
いや、…た、多分、そんな般若みたいには、ならないと想うけど…!





「…どうかしましたか?」


「え?いや、笑顔が素敵だなあ、と」


「…は?」


「え!?ええと…、こ、小十郎さんの笑顔が素敵だなーと」


「……」





小十郎さんが急に無口になった。
え?変な事言った?言った…かな…。

あんまり面識の無い人に「笑顔が素敵ですね!」とか言われても、
「はい?」としか答えようが…無い、よなあ。

うわ、どうしよう。小十郎さんに変人のレッテルを貼られる…かも。
それだけは御免こうむりたい。本当に。





「─あ、あの!すいません、本当!変な事言って。
 その、変人ではありません!いや、本当に!変人ではないかと。…たぶん」


「え、ああ、はあ」


「その!忘れてください。気にしないで下さいー!」





小十郎さんが呆然とした表情を見せる。
うわーうわーうわーもう駄目だ。もう小十郎さんと仲良くなれない。

一石二鳥計画が、二兎を追う者は一兎をも得ず計画に。なんという事…!!

一人頭を抱えて、焦っていると、小十郎さんが声をかけてきた。





「…忘れ…ねぇなあ。は可笑しい、と政宗様から聞いていたが、此処まで可笑しいとは。
 思いもしなかった」


「お、可笑しいって…!!!」


「まあ、良い。そうだな、変な事を言ったのは忘れてやる。
 だから、素で話させて貰う」


「…す、…素?」





今度はが何だか、唖然とした表情を浮かべてしまった。



す 【素】

→装わないで生地(きじ)のままであること。また、他のものが加わらないでそのものだけであること。

→ただそれだけの、ありのままの、純粋な、などの意を表す。

                                         大辞泉より



いやいやいや、何考えてる自分。違う、え?素?
素って何だ。

小十郎さんが歩いてこっちまで来る。





「……なんだ、変な表情だな」


「…へ、変な表情って…!」


「まあ、良い。早く収穫しろ。政宗様がお待ちだ。
 ──、殿」





トマトを又落としそうになった。
ゲーム中、敵に対して、こんな性格だったのは知ってるけれど。
え?敵?

素とか言ってたけれど、、 ─── 敵として見られてる?


頬がひきつったような感じがした。


どうしよう。誰か助けて。
切実なるお願いです。





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うーん…小十郎…??
敬語ばっか書いてるとなんか訳わからんし、
小十郎はきっと他の人に対しても、こんな言葉で話すだろうなーみたいな、そんな感じでした。

うーん、帰ってきたら修正します。
ちなみにトマトは戦国時代にはありませんでした!う、わー…


2006.8.12