前なら、『いる』。そう言っていただろう。


けれど、 今は────









Act39.生きていくうえで 必要なもの









「……ええええっとー小十郎、さん…?」


「…なんだ?」


「…す、素ですか…っ!?」


「ああ」





なんですか。なんなんですか。コレ。
素とか。お前は二重人格か。裏表が激しいのか。
思わず小十郎さんの方をじっと見つめてしまう。

その視線に気付いたのか、小十郎さんがコッチを向いて怪訝そうな表情を浮かべた。





「何だ?」


「あ、いや、何でもないです」


「?まあ良い。それよりも、もう野菜は一通り収穫した。そろそろ政宗様のところへ行くぞ」





そういって小十郎さんは、持ってきていたのであろう籠に野菜を入れて、
さっさと歩きだした。

どおおおい!酷いですね!
言葉には出さずに、心の中で絶叫。なんだか切なくなってきた。
立ち上がって小十郎さんについていく。



それにしても、政宗が何処に居るかとか、わかるのかなー。
わかるんだとしたら、凄いなあ、この人。アレか。政宗様の居場所なら、この小十郎10キロ先でもわかりますぞ!とか言う…。
…有り得ないか。


ぶつぶつ一人で考えていたから、小十郎さんが「おい」と声をかけてきた。
一瞬、驚いたけれど、すぐに「はい、なんですか?」と返した。





「…お前は」


「…は、い?」


「政宗様と、仲が良いのだろう?」


「え?えー…、はあ」


「お前の話は聞いていた。政宗様から。
 ── 色々と、良くしてもらっていたことも」


「そうなんですか?」





そう訊くと、小十郎さんは、「ああ」と呟くように言った。

それきり、会話が続かなくなってしまった。
なんといえば良いのだろう。何か話しを振ったほうが良いと、思うんだけどなあ…。
会話のキャッチボールしようぜ!みたいな。何言ってるんだろう。



そんな事を思っていた時、耳に小さな声が聞こえた。
小十郎さんが、何かを言っているのだろう。「え?何ですか?」と訊き帰すと、
又、耳に小さな声で発せられた言葉が聞こえた。





「……だ」


「…へ?」


「お前が、嫌いだ」





き、きら…きらい?嫌いって…え?
の事が?

理解すると同時に、その言葉の重みが、ずん、と心に圧し掛かってきた。





「嫌い、って…」





呟くように、そう言った。
──なんで、なんでだ。なんでそんな急に?
、悪いことしたのかな。わからない。


嫌いなんて言葉、なんで急に言われなくちゃいけない。


少しだけど話をした。仲良くなりたいと思った。それなのに。






「どうして、ですか…?」





問いかける。答えてはくれなかった。話もしたくないんですか。そうなんですか。

とぼとぼと小十郎さんの後ろを歩く。足取りが重い。
俯いてしまう。なんだか目頭も熱くなってきた。やばい。泣きたくなんか、無いのに。





「よぉ、小十郎!!」


「政宗様」


「野菜の収穫は終わったのか?
 ん?、なに俯いてるんだよ」


「……」


「Ah、どうした?」


「なんでも、無いよ。うん、政宗、大丈夫大丈夫!!
 あはは、俯いてたのは、ええと…ちょっと目にゴミが入っちゃってさー、痛くて痛くて」


「…?お前、無理してる──」


「え?無理なんてしてませんよ!ほらこの通り!」





政宗に話しかけられて、慌てて元気な様子を見せた。
何やってるんだろう、。泣いても良いはずなのに。
なんだか、泣くことを許さない自分が居た。



ちっぽけなプライドだ。泣けば良いのに、泣かない。
必死で笑顔をつくった。政宗が「お前、変だぞ」と、怪訝そうな表情を浮かべて言ってくる。





「あーえーっと、ごめん、政宗さん!暑いし、氷貰ってくる。バイバイ!」


「は?ちょっ…、オイ!!」





これ以上、あの場所に居たくない。
そう思う一心で、その場しのぎの言い訳を述べて、逃げ出すように走った。








”嫌い”  ──なんで、そんな事、言うのだろう。
言われたくない。言われたくなかった。

そりゃあ、、急にやってきたし。信頼されないのは、当然の事なのだろう。
心で思われるのは、まだマシだ。言葉にされるのは、痛い。


その場に座り込んだ。膝を立てて、顔を埋める。
涙が、出てきた。


じわりと服に染みが出来る。声を押し殺して泣こうと、思った。
けれど、それは出来ずに終わった。





「あーらら、ちゃん、どーしたのー」


「…ッ!?」





声が前から聞こえてきて驚いて顔を上げる。
佐助が、困惑したような表情を浮かべて、を覗き込んできていた。





「…えッ、さ、佐助さ…ッ!?」


「涙出てるね、大丈夫?」


「だ、大丈夫ですよ…」


「嘘」


「嘘、なんかじゃ」


「見てたよ、俺。
 何を言われたか、知ってる」





何で。そういおうとしたけれど、それは佐助によって制された。





「哀しい?苦しいよねえー、うんうん」


「…」


「憤りを感じる?そうだよねー」


「…な…」


「あの伊達の家臣が、憎い?」


「そんな、事は…」


「殺したい?」


「…なっ!!」





驚いて、佐助の顔を凝視するように見る。

佐助は、笑っていた。嘘のように、満面に笑みを浮かべている。
こんな時に、何故か元就の言葉が頭に浮かんだ。


『笑みが。笑いが。おかしい。笑顔が、笑顔ではない。』


──壊れた、人間が笑うような笑み。
そう言っていた。

佐助の顔から目が放せない。

口を動かして、佐助は言葉を続ける。





「泣くぐらい苦しいこと、俺にもあったよ。昔。
 でも今はさ、無いなあ……そんな事。
 悲しまないことって、楽だよー?」





とってもね。 と、佐助は続けた。
悲しまないこと、って…どういう意味。
が変な顔をしていたのか、佐助が「簡単に言えばさ」と言葉を続けた。





「感情、要らないよね」


「…え?」


「愛すること、楽しむこと、悲しむこと。
 それら全て、ぜーんぶ、…要らないモノだよねえ?」


「なにを言って、るの?」


「人に嫌われると、苦しい。
 人に疎んじられると、とても哀しくなる──。」


「…?」


「だからさ、感情を持たなかったら良いんだよ。
 全て、全て、感じないようにしたら良いんだよ」





謳うように佐助は、言葉を発する。
感情が、要らないもの───?


そんな事、無い。前ならそう言っていた。
けれど、今は。
酷く傷付くことがなくなるんだったら。





は、…感情は…」





要らないもの、
そうかも知れない。




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…ぎゃー!!シリアス!!
小十郎さんがなんか、…うん。…どうなんですか。
色々考えてこうしたんですけれど、なんか佐助が変になった気がしないでもない。

さー続き書くぞー、オー。

2006.8.16