Act4.お風呂に入りましょう




幸村にリモコンのボタンを高速で押すのをやめさせてから、思った。
風呂、とか。そういうものも説明しておこう。トイレとかも。わからなかったら何かと不便だろうし。

行動を止めて、少し考え事をしているに向かって幸村は「どうしたで御座るか」と訊いて来た。
それに「あー、いや。ちゃんと教えないといけないものがあるなあって思ってさ」と答えると、幸村は微妙に怪訝そうな表情を浮かべた。

「ちょっと、立って、ついてきてください。政宗さんも」
が、そう言うと、幸村はテレビを見ていた場所から立ち上がり、の後ろを歩いて着いてきた。
政宗も、冷蔵庫やらなんやらを見ていたのだが、の後ろについてきてくれた。

トイレの説明も程ほどに、お風呂の説明をしはじめた。




「此処がお風呂です」

「お風呂?」

「お風呂ってなにでござろうか」




が発した言葉に、クエスチョンマークを浮かべる二人。ああ、そっか。無いか。風呂。
戦国時代って湯浴みだっけ。風呂じゃなくて。

少し、苦笑を漏らしつつ、「あーえっと、湯浴み、みたいなモノです。ってか、温泉とかってありませんか?」と、言った。たしか、濃姫がエンディングで温泉みたいなのにつかってた思い出がある。確か。
そんなことを思っていると、「Ah,I see!」、「わかったでござるよ!」と幸村・政宗が口をそろえていった。

面倒くさい説明しなきゃいけないかな、なんて思ってたので、二人が温泉などの事を知っていてくれて、助かった。
少々、安堵しつつ、お風呂について少し話しをした。




「えーっと、ここって湯浴みみたいなモンです。まあ、あったかいお湯で身体や頭を洗ったり、相違はあると思うんですけれど。
 身体洗うのは……此処においてあるものを使ってください」

「ああ」

「ちなみに、此処はひねるとお湯が出ます。時々冷たいときもありますけれどね」

「!お湯が、出るで御座るか!直ぐに?凄いでござる!」

「あはは、そうだね、凄いよねー」

「で、身体あらうときに、これを使うのは分かった。
 ── その、髪の毛を洗うときは、どれを使うんだ?」

「髪の毛を洗うときは、コレを使うんですよー。シャンプーって言うんです」

「しゃんぷー?」




幸村が、聞きなれない言葉に首をかしげる。うん、まあ覚えなくても良いんだけどね。覚えなくても生きていられるし。
そんなことを思いつつ、言葉を続けた。




「こうやって、手のひらに出して、こう擦り合わせると、泡が少し出てくるんで、こんぐらいになったら頭を洗うと。ガシガシとね」




身振り手振りで話す。うん、難しいや。やっぱり。
そんなことを再度、痛感した。ああ、誰かに説明をうまくする技能を下さい。説明、下手なんだってば。

そんなことを思っていると、政宗が「なあ、此処では何日に何回、お風呂に入るんだ?」と訊いて来た。
それに「ほとんど毎日だよ……まあ、二日に一回、とか三日に一回とか、個人で決めて」と答えると、「ふうん」と政宗は何だか納得したように何度か頷いた。
出来れば毎日は入って欲しいんだけれどな、なんて思っていると、幸村が瞳を輝かせてを見る。




「凄いでござるっ、殿の家は。
 こんなにも色々なものがある、こんなにも凄いものがある! さすが、未来で御座るな!」





幸村が、なにやら嬉しそうに顔をほころばせて、頷いていた。
ああ、幸村……何故にそんなに可愛いのか。どうしようもないよ。君が好き! 好きです!

拳を握り締めつつ、心の中で好きだーー!! なんて絶叫する。今の、もしかしなくても変態だ。
幸村が言葉を続けた。




「某、お館様にも見せたかったで御座る! ……そう、今さっきてれびとやらを見ていたら、お館様の声が聞こえました! どうしてでござるか、殿」

え゛

「ももも、もしかして! お館様も、この世界に居るのでござるか!?
 うおおおおお館さぶわぁぁぁぁぁぁああ!!」




一人勝手に話を進めて、幸村は何だか嬉しがっている。
うわあ、どうやって説明したら良いんだろう。っていうかお館様の声が聞こえた、って……何チャンネル見てたんだ幸村。
微妙に心の中で突っ込みつつ、幸村の問いに返した。




「あのね、幸村さん。お館様の声が聞こえたって言ってたけど……。それはお館様じゃないよ」

「へ?」

「その、何て言えばいいの。声がそっくりなだけだから。お館様じゃないんだよ」

「そ、そうなのでござるか……。
 異世界に、お館様と同じ声の人が居たなんて。お館様に知らせねば!」




な   ぜ   。
そんな疑問が頭を掠めたが、振り払っておいた。考えてもキリが無い。

今さっきから、幸村は「凄いでござる!」、「お館さむわぁに知らせねば!」と、いってる気がする。
まあ、大体500年ぐらい前から来たわけだもんね。そりゃあ、感嘆の言葉しか出てこないよな。
が例えば26世紀に行けたとしても、そんな風に「すごい!」とかしか出てこないだろうし。

見るもの、触れるもの、聞くもの全てが新鮮だから。

少し、幸村を微笑ましく思っていると、政宗がに向かって言葉を発してきた。




「なあ」

「ハイ?」

「これって、何だよ?」

「これ? ……ああ、パソコンですか」

「ぱそこん?」

「そうです。」

「Ah……、何をするんだ?」

「えーっと、世界中のことを調べたり出来る……そんな感じ、かなあ」

「世界中……へえ、そいつぁCoolだ。また今度、俺にもやり方教えてくれねぇか?」

「あ、うん。わかった。教えるね」




がそう返すと、政宗は「ああ、宜しく頼むな」と嬉しそうに言った。
何、コレ。どうしよう。皆してを悩殺する気か。を生命の危険にさらす気ですか。
もういいよ、本望だよ……!! 有難う、政宗!!!




「それにしても」

「? 何だ?」

「いや、その。……えっとですね、見たところ、陣羽織、ですか? 着てるじゃ無いですか。鎧とかも。
 脱いで良いですよー。重いでしょう?」

「重い、か……。……ああ、この世界は誰も狙うヤツが居ないんだったか。
 じゃあ、遠慮なく脱がせていただく」




少し考えるような仕草を見せた後、政宗は手や足につけてある防具を外し始めた。
一通り取り外した後、「何処に置けば良いんだ?」と訊いてきた。何処に置かせよう。ううん。
まあ、の部屋で良いか。の部屋に置いておこう。うん。





の部屋に置いときますんで、貸してください」

「お前の部屋に?」





政宗は一瞬驚いたような表情を見せたが、直ぐに其れを打ち消し「……良いのか?」と、訊いてきた。
それに「良いですよー。政宗さんがいやなら別ですが」と答えると、「嫌な訳ねぇだろ。……Thank you」と、礼を述べてきた。

政宗の手から武具を貰いうけ、自分の部屋に置く。
政宗の武具はさすがと言うかなんというか。重かった。こんなんで良くあんな過敏に動けるんだ、と少し尊敬した。

部屋に、武具を置いて政宗達の居るリビングへ戻る。
政宗は、「重くなかったか?」と訊いてきた。それに「あー……少し、うん、重かったです」と答える。

政宗が「正直だな」と言って少し苦笑を漏らした。
その笑みに対して、も苦笑を返して、幸村にも政宗に言った言葉を言って、幸村のつけていた防具を貰い受けた。はそれを自分の部屋へと持っていく。幸村の防具も、政宗の防具と同様、とても重かった。


その後、リビングでソファーに座り、少しくつろいでいたら風呂が沸けたことを知らせるピー、と言う音が鳴った。
政宗と幸村は同時に驚き、警戒をしたのか、あたりを見回している。
が「あ、今さっきのは気にしないで」と言うと、二人は少し警戒を解いた……と、思う。多分。
にしても、風呂沸いたのか……入ろうかな、あ、でも先に二人を入らせた方が良いよね、多分。うん。




「えっと、政宗さんに幸村さん」

「どうした」

「どういたした」

「お風呂、入ったらどうでしょうか」

「風呂……?」




がそう言うと、二人は、はかったかのように言葉をハモらせて、そういった。
何だなんだ。何処かで仕組んだのか。
そんな事を頭の隅で考えつつ、言葉を続けた。




「うん。やっぱ、一日一日の汚れは取っておかないといけないかなあー、って思って……どうですか」

「Ah……、そうだな。じゃあ、入らせてもらう」

「えっと、わからなくなったら何時でも聞いてくださいね。着替えは……、置いときますんで!
 ちなみにお風呂はあそこね」

「Thank you!」

「じゃあ、某は政宗殿の後に入らせて頂いてもよろしいでしょうか」

「あ、うん、いいよいいよー」




幸村が「ありがとうございまする」と言った後、政宗は今さっき教えたお風呂の場所へと行った。
少ししてから、お湯を身体にかける音とか聞こえてきた。うん、ちゃんと入ってる。

幸村と談笑をしていると、直ぐに政宗があがってきた。
直ぐ、っていうかどうなんだろう。楽しかったから時間を早く感じただけで、もしかすると凄い時間が経っていたのかもしれない。
政宗を見る。蒸気した頬、濡れた髪……うわあ、破廉恥。破廉恥って考える自分も破廉恥。
地味な色をしているパジャマが、政宗が着ている、というだけで輝いて見える。

政宗が「あがった。中々、風呂も良いもんだな。今度から湯浴みじゃなく風呂にするか」と言いつつ、
ソファーに座っているの横に腰を下ろした。うわあ、ドキドキものだ。

そうこうしている内に、幸村が「それでは某も入ってくるでござる!」と、勢い良く、お風呂へと直行した。
なにやら、転ぶような音が聞こえたけれど。……大丈夫だよね。
幸村がお風呂に入っている間、と政宗は少しだけ談笑をした。
政宗が、自分の世界の事を此処と比べて「此処はこうなってるんだな」とか、嬉しそうに言っていた。
其れを聞いているだけでも、は楽しかった。




時間が経ち、幸村があがってきた。
政宗と同様、朱が挿した頬。髪の毛も水にしっとりと濡れている。
ど、どどどどうしようっ! 可愛い、っていうか格好良い、ってか…なんかもう! たまらん。
そんな事を思っていると、政宗が口に手を当てて、あくびをしてから、「Ah……、眠てぇ……」と呟いた。




「そうだね、もう凄い遅い時間だし、どうぞ先に寝ていてください」

「わかったでござる。殿は?」

は、まだ少しすることがあるんで」




「そうでござるか……」と、幸村は呟いた。政宗の欠伸が移ったのか、幸村も又、口を手に当てていた。
布団、出さなきゃなあ。




「あーえっと、布団、出すね」

「ああ、俺も手伝うぜ」

「ありがとう」

「そ、某も手伝うで御座るよ。殿!」

「ありがとー」




三人で、布団を出して。引いて。二人が布団に入り込んだのを見てから、電気を消して。
極力、音を立てないようにして風呂に入り、自分の布団にもぐりこんだ。



それにしても。どうして、何故。政宗たちがやってきたのだろうか。此処に。
アレか。が一瞬でも、『政宗たちにきて欲しいな』って思ったのが駄目だったのか? そんなわけないよなあ。だとしたら、今ごろ日本中に政宗たちが居るだろう。きっと。

だとしたら── ? わからない。
尽きない疑問を考えていてもしょうがないので、は明日に備えて寝ることにした。

寝る前で回らない頭で考えても意味が無い。明日、又考えよう。

そんなことを考えつつ。


NEXT

あとがき。

長い。疲れました…。うあああどうしようー。進まない、4話で1日進むって遅スギ君。
次はアレですか。朝に風呂に入らせてから服を買いに、って感じですか。
っていうか、題名が…。もう。
というか眠い眠い眠い眠い眠い(だったら書くな/ごもっともです)

寝ます。さようなら。

2005.2.18