Act43.人を信じること





夕食を食べ終えて、布団を二人ぶんひいて、中にもぐりこんだ。

障子がうすく光っている。遮っているはずの月の光が、障子を通して部屋を明るく照らしている。
夏はもうすぐ終わるのかな。かなり、涼しくなってきている。
外では、鈴虫の鳴く声が聴こえた。五月蝿いなあ、とは思わなかった。



少しして、慶次が話しかけてきた。





「なあ」


「…んー?」


「寝てる?」


「いんや、寝てないけど…、どうしたの?」


「いや…、なあ、はさ、俺について聞かないんだ?」


「……へ?どういう意味?」





思わず、すっとんきょうな声を出してしまった。俺について聞かないって。何。
訳がわからん。…も、もしかして慶次は自己主張が激しい人なのかッ!?
じゃ、じゃあ、教えてほしいですスリーサイズに好みのタイプを…っ!!ぜ、是非とも!!

少し思考が危ない方向へと行きつつあるのが、慶次の声によって遮られた。





「…急に来て、泊まらしてくれ!なんて、変な奴だとか、思わなかったのか?」


「んー…?いや、あんまり」


「……しかも、他の領土の人間だ。普通、疑うだろ」


「…そうだね。…なに、慶次さんはさ、疑ってほしいの?」


「そ、そういう訳じゃ──」





其処までいって慶次は口をつぐんだ。
えええ。何、悪いコト言っちゃった!?
な、なんて言えば良かったんだろう。ええと…。





「えーと、なっ、なんていうか!
 その…アレだよアレアレアレ!」


「アレ?」





はアレリーマンか
慶次が怪訝そうな、そんな声を出す。此方を向いたのか、がさりと布団を動かした音がした。





「そのー…、人に疑われるのは、辛いから」


「…でも、疑うべき相手だって居るはずだろ?」


「でも、疑うよりは信じた方が良いじゃん、ね!」


「そうかあ?」


「相手にとっても、疑われるより、信じられる方が嬉しいだろうし」


「まあ、そうだろうな」





そう、疑われるより、信じられた方が、とても嬉しい。
疑われたら、とても悲しいから。それに、とても 辛い。

それに!ってば慶次の事しってるし!うん、げ、ゲームで…、だけど…。
一応、人となりはわかっている…よ、多分!うん!





「それにしても、そんな事、言うっつー事は、、疑われたことあんのか?」


「…まあ。人生色々だしね」


「ははっ、そうだな」





知らずの内に、手に力が入っていたのか、布団を握り締めていた。

なんで、嫌われているのか、わからない。哀しみがちらちらと、雪のようにつもる。
ああ、なんで、こんなにも引っ張るんだ!はそんなにも小十郎が大好きか。
もしくは出会いが凄すぎて、記憶に強烈に残っているのか。


が静かになったからなのか、わからないけれど…、
慶次も喋らなくなった。


途端に静かになる部屋。
自分の呼吸をする音しか聞こえない。音が闇に吸い込まれたようだ。





目を閉じて、色々と考えてみる。
今日、有ったことや、今日、考えたこと──。

考えてみれば、本当に今日一日にあったのか。と想う。

少し考えていたら、怒りがふつふつと沸いてきた。
なんで、がっ!会ったばかりの人間に嫌われなくちゃならないんだ!とか、
なんで、あんな酷いことを言われなくちゃならないの!?とか。


ダメだ…。何やってるんだろう、は。
はああ、と大きなため息がでかかったけれど、それは喉の奥で止めた。

大丈夫、大丈夫だ。
きっと、いつか、分かり合える日が…、来ると良いな。


…折角、この世界に来たのに、嫌ってくる人がいるままで、元の世界に戻るのは、なんだか惜しい!と、
思ってしまう。うん、そうだよ。…がんばろうっと!


そんな事を考えていたら、慶次が一つ息を浅く吐いて、言葉を続けた。





「心が、見れれば良いのにな」


「…そうだね」


「そうしたら……」





止められたのに。
ぼそりと、慶次が本当に聴こえないような声を発した。

その声には、後悔をするような念が、凄く含まれている様な気がして。
誰を?とか、そんなこと聞いちゃいけないような気がした。


心を見れたら…、どうなのだろう。幸せなのだろうか。
仲良くしている友達が、家族が、周りの人が、自分をどう想っているのかわかってしまう。

……それは、とても怖いこと、だと想う。
周りの人がどう思っているかなんて、知らない方がいいのかも知れない。

まあ、わかんないけど。だって、やっぱり人の心知りたいなあ、とは想うこと、あるしなあ。


リーンリーン。鈴虫が鳴く。
部屋には明るい光。
横には、色々な思いを抱えている人が、いる。




慶次の、考えていること。

止めようと、していた人のこと。


なんだか、凄いなあ。と、思った。
うん、凄い。何が凄いって…、うん、凄いんだよ!としか言いようがない。
自分でも、慶次の「なに」が凄いのか、良くわからない、けれど。

思った。
思った事は、口をついて出てしまった。




「慶次は、凄いね」





闇に溶けていく言葉。
慶次から、少し息を飲むような音が聞こえた。
少し、間を空けてから、慶次は少し震えたような声を出した。





── 、何がだよ?俺、なあーんにも凄いことしてねぇし」


「だって…、うーん、その…なんていうのかなあ」


「…?なんだー?」


「している事が、凄いって言うのかなあ…」


「している事?ってぇと、…なんだ?」


「え、ええと…その、今さっき言ってたじゃんか。
 …誰かを、止めようとしたんでしょ?凄いじゃん」


「…んん?何でだよ」


「…いや、なんとなく…かなあ」





「何で」と訊かれると、答えようが無い。ただ、そう思っただけだったから。
あー…、どうしよう、変な事言ったかも。いや、「かも」じゃなくて、言ったね。完全に。
うわあー…、どうしよう。ひかれてる?いや、引かないで下さい慶次さん!おねげえしますだ!

オラ…、オラ、そんななんていうか、あんな事、言うつもりじゃ…!!!





「でもよ、当然の事だろ?」


「うあはい!えっ!?ええッ、え?」


「俺のやることはさ、凄いんじゃなくて、当然の事じゃねぇの?」


「は?あ、ああ…。そう、かなあ」


「そうだろ?な!」





当然の事…なのかなあ。良くわからない。

少し考えていたら、慶次が「んじゃ。おやすみー」と言って、布団を被りなおした音がした。
それに対して「ああ、うん!おやすみ」と返す。


友達を何か悪いことから止めること。やめさせること。
言葉にするのは簡単だけれど、実行するのは難しい。


にも、出来たらいいなあ。とか想った。


布団を被りなおす。ふ、と意識が途切れ、は眠りにおちていった。




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………だああああ疲れたァァァアア!!!!
えええ何この慶次!慶次なにこれ!(お前がなんですか)

だああ色んなサイト言って萌えを補給して。
その後、執筆に乗り出したわけです。ハイ。

続きはどうしようかな。とか、もうすでに考えています。


2006.9.11