「嫌い」── なんでだ。
「傷つけたから」……違う、そうじゃない。それだけでは無い。
きっと、俺は、アイツに。




Act44.違う、ちがう





朝。目が覚めたとき。慶次の顔のドアップが現れました。


………

……………

…………………え?


固まる。というか、動けない。
が目を開けたことに対して、慶次は「生きてたのかー」と言った。
は?生きて……?えっ、どういう意味……、というか!

焦って、思考がこんがらがって、自分でも何を考えているのかが分からなくなった。
挙動不審真っ最中。ちょっと……、というか、傍から見て、かなり危ない人間に見えると思う。

焦りに焦って、何かいわなくちゃ、とか思って、やっとこさ発した言葉。





「なっ、ぬあっ、なななな」


「ん?どうした」





何、言ってるんだろう。は!
慶次が顔を離して、笑顔を浮かべながら、に言葉を返した。

顔が離れたことで、少し荒くなっていた動機が、少しずつ収まっていく。
おおおう、驚いたー……。朝おきて、目の前に格好良い男の人の顔があったら、驚くよなあ、うん。

そんな事を考えつつ、もう一度、ゆっくりと、今度はどもらないように。
言葉を、慶次に向けた。





「あの、さ……、いや、なんで、顔の目の前に」


「ん? んー……死んでるかと、思ったんだよなー」


「は? ……なぜに?」


「静かだったから」





は? 思わず、また、変な言葉が口をついて出た。
いや、……静かって、なに。
どういう意味なのだろうか。寝ていたら……、普通、静かだよなあ。
いびきとか、歯軋りとか、寝言とか言わない限り。


頭を文字通り振り絞るようにして、考えていると、
慶次が苦笑を顔に浮かべ、申し訳なさそうな声を出した。





「あー……、その、ただ思っただけだから。気にしないでくれよっ、なっ」


「いや……そういわれると気になるよね、普通」


「んー、……気にすんなって!」





慶次はそういうと、今さっきまでの苦笑は何処へ行ったのか、
底抜けの明るい表情を顔に浮かべた。
慶次、今、太陽のように輝いているよ……眩しいです、と て も !

そんな事を考えつつ、布団から出た。
立ち上がった途端、少し欠伸が出てきた。
誰も居なかったら、口を塞がずに盛大に欠伸をするのだけれど、
今、ここには 素敵無敵な花の慶次が居る。あれ、何いってるんだろ。

手で口を押さえつつ、押し殺したような欠伸をした。
あーあ、眠いなあ。今、何時だ。何時。時計、無いし……。もう一度寝ようかな。

そんな事を考えつつ、寝巻きから普段着に着替えるため、慶次を手招きして、言った。





「けーいじ」


「んー? なんだー、どうした?」


「ちょいと外に出といてくださりませんかね」


「へ? なんでだよ?」


「いや……、察してくださいよ、着替えるんですよっ」


「へえ……」


「だから、外に、でていってくだされ」


「はっ? く、くだされぇ?」


「気にしない気にしない!
 さあさあ、さあさあっ!」





慶次の背中を押すようにして、部屋から出す。
慶次が、此方を振り向いて少し、……なんだか、嬉しそうな、困ったような笑みを浮かべて、
「おーおー、は守りが堅いねぇ」と言って来た。

いや、守りって……。いや、慶次、何いってるんですか本当に。
少々、呆れたような表情が浮かんだのだろう。慶次が「冗談」と言って、微笑んだ。
それを見てから、は慶次を外に出すために開けた障子を閉め、いそいそと着替えを始めた。


政宗から貰った、着物のようなもの。
色は当然と言えばいいのか、青い色をしていた。
──鮮やかな青。昼の空の色のような明るさを持っている。

はああー……、高そうだ。というか、高いだろう。絶対に!
汚せないな、絶対。汚さない、絶対に汚さない。も、もし汚して『弁償しろ』とか言われたら、、もう……!!

ひとり、色々な考えを浮かべては消し浮かべては消し、と言うことを繰り返していると、
障子をはさんで、慶次の声が聞こえてきた。





「なあ」


「んんっ? なんですかね」


「着替えるの遅いな、


「なんか凄い酷いことをさらっと言ったね」


「…ん? 俺、なんか酷いこと言ったか?
 遅いなあ、って思ったから言っただけなんだけどよ」


「……」


?」


「……キャーセクハラーセクシャルハラスメントー」


「は?」





慶次が間抜けな声を出す。……ちょ、ちょっとぐらいノってくれたって良いではないですか!
なんか自分が空しく思えちゃうよ。本当に。誰か、誰かを助けてください!

そんな事を考えていると、慶次が「……なあ」と、困惑したような声を出した。





「せ、セクハラ? とか、セクシャル……なんたらこんたら、ってどういう意味だよ?」





そっか。こっちでは横文字、使えないじゃん。
政宗とかには通じてたし、この前、元親達に冗談で「ハロー!」とか言ったら「ハロー!」と返されたし。

……そういえば、元親達は誰から教えてもらったんだろう。今度、教えてもらおうっと。

そんな事を考えていたら、慶次が「ー、どういう意味なんだよ」と、
返事を急かすように言葉を発した。

それに、「あー、えーっと…」とか曖昧な返事を返しながら、服を着る。
うっし、これで大丈夫だよね、うん。


障子を開ける。慶次が「おっ、着替えたのか」と言って、嬉しそうにを見て。
これまた嬉しそうな声で「おー、似合ってるねえ」と言った。





「に、似合って…!? うわあー、有難う。
 でもさ、なんか着物に着られてる感が無いですかね」


「ん、大丈夫大丈夫! そんな感じは、ねぇよ。うん」


「……ありがと」





慶次が、笑って、の肩を叩いた。──少し力がこもっていて、少々痛みを感じたけれど。
それよりもなによりも、嬉しくて。の顔には知らず、笑みが浮かんでいた。

















見つめる先。── アイツが居る。
昨日、やってきた客人……、前田慶次と共に微笑みあいながら喋っている。
気に食わない。

政宗様が、肩を叩いて「Good morning!」と、言ってくる。
それに、振り向きつつ「おはようございます、政宗様」と返すと、
政宗様は「おう」と言って、嬉しそうな笑みを浮かべられた。


その後、私の肩越しに視線をうつして、
アイツ達を見て、……とても嬉しそうに笑った。

何でだ。
何故、あなたはそのような表情をする。


── は貴方を傷つけたのに。


政宗様は昨日、本当に怒っていた。
これほどまでに怒ったことは無いのではないだろうか、と思うほどに。
一人の人間の事を想い、怒っていたのだ。


とても、苛ついた。何故、アイツを庇う。そう思った。


政宗様が、に声を掛けようと、息を吸い込んだ。
それを見て、何かを考えるより先に、声を出していた。





「政宗様!」


「んっ! な、なんだよ、小十郎……」


「御飯が食べに行きましょう」


「あ、ああ……。じゃあ、たちも誘って──」


「……駄目です」


「…Ah? 小十郎、なんでだよ?」


「アイツは……」


「前田家のヤツだし、それに俺に暴言を吐いたヤツだから、とか言うなよ。
 御飯ぐらい一緒に食べてもいいんじゃねぇか?」


「……政宗様」


「HA!なんだよ、また小言か?
 いいだろうが、別に。何かある! って言うわけでもねぇだろうし。
 なんかあったら、お前が守ってくれるんだろ? 小十郎」





そういって、政宗様は笑みを浮かべ、俺の横を通り抜けて、たちの元へ向かった。

信頼、されている──
とても幸福なことなのに、何故か今は、その信頼が痛かった。


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慶次と仲良し。(なんですか)
小十郎は色々考えておりますー。いろいろ。
書けたらいいな、色々と。

2006.9.22