── 何がしたいのか。

そんなこと、知る由もない。
ただ、あの人が大切なんだ。
それなのに、どうして

行ったことは全て空回り。
どうしたら、誰かの為になるのだろう。
どうしたら、あの人が幸せになるのだろう。

探せども、見つからず。


── 何をおもっているのか。

誰かを傷つける言葉を平気で吐いて、
誰かが悲しむ行動を平気で行って、
何を考えているのだろうか。

答えは、見つからない。






Act44-4




縁側。城門の近く。座って、人を待つ。
── 橙色が、あたりを柔らかく染めて行く。
木々が風に揺られ、さわさわと音を奏でる。遠くから、鳥の鳴く声が聞こえた。


風が、吹く。それは、頬に身体に容赦なく打ち付けるように吹き渡る。寒い。
薄手のものを着ていたから、寒さを容赦なく感じる。
周りを見渡し、何か上着になるようなもの、羽織れるものを。と思いつつ探すが、何も無かった。

流石に、こんな外に長時間居ては、身体を壊す可能性があるので、
羽織るものを取りに、自分の部屋へと戻ろうと思った時、 身体に柔らかな布と柔らかな声がかかった。




「政宗様、お体に、さわります」


「Ah,小十郎……、大丈夫だ大丈夫。
 Don’t worry!」


「大丈夫なわけが無いでしょう。
 早く、城内に……部屋に、お戻り下さい」


「大丈夫だって。
 アイツも……、言ってたしな。風邪って一度ひくと、引きにくくなるらしいぜ」


「……ですが、万が一と言うこともございます。お戻りください」


「イヤだ」




はあ、とため息を吐く音が聴こえた。
嫌味なものではない。しょうがないな、と言うような気持ちがつまっている様に、感じた。

小十郎は案の定、微苦笑を浮かべながら「……頑固ですな」と言いつつ、俺の隣に座る。




「政宗様は、誰を待っておいでですか」


と、幸村」


「やはり……」


「なんだよ、やはりって。小十郎は、俺を馬鹿にしてんのか」




反発するように言葉を発すると、小十郎は「いいえ、違います」と言って、
優しげな声で、言葉を続けた。




「……あの者たちも、政宗様に想われて幸せでしょうな」


「ぬあっ!? はっ、ちょっ、おまえ……!
 想われて、って……! 使い方、変だぞ。絶対」


「そうでしょうか。
 でも、事実、想われているからこそ── このように寒いのに、
 外であの二人の帰りを待っているのでしょう?」


「そ、それは……まあ、そうだな」


「……政宗様がまだ、幼き頃……この小十郎の帰りが遅かった日も、
 この様にして待っておいででした」


「……まあな」




なんだか気恥ずかしくなって、顔をあらぬ方向へと向ける。
昔のことだ。とても、昔。俺でさえ忘れかけていたのに、小十郎の一言で、
あの日の思い出がよみがえってくる。

今日のように、太陽が大分、傾いていた、あの日。
母上の声、父上の声。視界が、とても広かった。




「この小十郎めは、あの時のことを決して忘れは致しません」


「……そう、か」


「そして、あの時から……、違いますね、ずっと」


「んー?」


「政宗様を守っていこうと……、誓っています」


「俺を?」


「ええ。この小十郎にとって、守るべき存在です、政宗様は」


「HAN! 小十郎に守られなくたって、俺は大丈夫だけどな」


「そうですか? 政宗様は戦のとき、突出しすぎるときが有りますからな。
 この小十郎、心配で心配で……」


「そ、それは……、まあ、なあ?」


「なんです?」


「……そ、そういう時は……、お前が守ってくれるんだろ?」


「……、前と言っていることが逆ですが」


「うるせえっ! いいだろ、別にッ」


「政宗様」


「なんだよ」


「幸せです」


「……そうかよ」




突拍子な言葉。
何について幸せを感じたんだ、とか。
何で急にそんなこと言うんだ、とか。
色々と訊きたいことは有った、けれど。

小十郎の声が何時にもなく嬉しそうで。
なんだか訊き出すのも面倒くさくて、そのままにしておいた。


無言。
まぶたを、閉じる。
すると、浮かんでくる。アイツの、の嬉しそうな顔が。

今、は楽しんでいるだろうか。
幸村と共に……、城下町などを出歩き、茶店などに行って、
そして、楽しく会話を弾ませる。

アイツが楽しんでいるならば、それで良い。
それで、俺は、良いんだ。


小十郎が「温かいものを、持ってまいります」と言って、俺の傍を離れた。
まぶたを開けて、空を見上げる。宵の明星がかすかに見えた。











がさがさがさ。
振ると音がする、紙袋のようなもの。
幸村が「せんべい、美味しかったでござるな!」と声を弾ませた。

帰り道。太陽が傾いている。町が、人がオレンジ色に染まっている。




「いやー……、本当に、美味しかったねえ」


「喜んでいただけましたか?」


「うん、すごく喜んだっ。というか、すごく嬉しかったッ!
 ありがとう、幸村ーッ!」





そう言うと幸村は照れたように頬を赤く染め、
「そ、それは良かったでござる……」と嬉しそうに呟く。

なんだか嬉しくて、柄にもなく腕を大きく振る。
つながれた手の持ち主が「おわっ!?」と声を荒げた。




殿っ、な、なにを」


「んー? ごめんごめん」


「えっ、あっ、いや、その……」


「なんか嬉しいとしちゃうんだよね。ごめん、本当。
 イヤだった?」


「い、嫌……では、無いでござる」


「そっか」




もごもごと、必死に口を動かして言葉を発する幸村を見て、
なんだか微笑ましい気持ちになりつつ、前方を見据える。




── ねえ、喜んでくれるとおもう?」


「せんべいを、でござるか?」


「そうそう」


「きっと! 喜びまするぞっ。
 だって、某と殿が買ってきたものなのですから」


「そうかな? そうだと良いなあー……。
 喜んでもらえなかったら、なんだか悲しいしね」




そういうと、幸村が少し間を置いてから、「そうで、ござるな」と言葉を返して来る。
その後、「殿」と、少し躊躇いがちに言葉を続けた。




「もし、宜しければまた、遊びに……でかけませぬかっ」


「遊びに?」


「……ええ、そうでござる。遊びに。
 今日のように── 二人で、色々な所に行けたら……と、思いまして」


「うわーっ、良いね。なんか、愛の逃避行みたいな」


「愛の……とうひ、こう?」


「あ、いや、嘘だよ、ごめん。気にしないで。
 ええっと、そうだね。一緒に遊びに行こうっ!また、今日みたいに」




がそう言うと、幸村は嬉しそうに満面に笑顔を浮かべ、
「…っ、是非っ!」と、つながった手をなんか凄い勢いで振り回して言った。
おおおう、繋がったほうの手が痛いですよ、幸村。

なんだか自然に笑みが浮かんでくる。
胸の内に、とても暖かいモノが滲み出てくる。

夕暮れ。
振り向くと、影が真っ直ぐ、後ろに伸びていた。
二つの、影。離れていそうで、離れていない。しっかりと、繋がっている。




てくてくと、地道に城へと歩んでいく。
城が見えるところまで来ると、気付いた。
城門が大きく開いていて、誰か……、多分政宗が、門の近くに座って誰かを待っている。
手を振って、「政宗ー!」と大声を出すと、政宗も手を振り替えして、こちらに走ってきた。




っ、幸村っ」


「政宗? どうしたの、そんなに慌ててー」


「慌ててなんか、ねえ!
 そ、れより……、その、なんだ」


「ん、どうしたの、本当に」


、……お、かえり」


「……うん、ただいま」


「幸村、てめぇもだ」


「はっ!? え、あー……、ただいまでござる」




幸村が慌てつつ、返事を返す。すると政宗は「ああ」と言葉を発して、
の手を取り、「はやく帰るぞ」と言葉を続けた。

はやく帰るぞ、って……、どういう。そんな事を訊こうと思ったけれど、
政宗が足早に歩き出したので、なんとなくタイミングが掴めなかった。



太陽に照らされて、伸びる影、三つ。
繋がっている、影。手と手で、繋がれている。

真っ直ぐ、真っ直ぐ、後ろに伸びて。



NEXT

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なんていうか……難しいなあ。政宗も幸村も。
これにて44話目は終わりです。次は45話目ー。な、長いよ……ッ!!
さっさと天下統一させれば良いんですが、なんだか出来ない。
天下統一させるって事は、戦をさせるってことです。難しい。
小十郎の一人称は『私』だと思っていたんですけれど、ゲーム中ではずっと『この小十郎めが』とか、言ってるんで。
一応全部、それにしたんですが……、なんだこのウザさは。
冒頭については後々。

政宗が右の目を失う病にかかったのは5歳の時で、
小十郎は政宗が産まれたとき11歳だったはず。

それでは。


2006.11.4