Act6.昼食を、一緒に





お腹が、空いた。

家に帰ってから、そういう思いが頭をよぎった。そりゃそうだ。朝ごはんを食べてから、何も口にしていない。その上、ずっと歩き回っていたのだから、お腹が減るのも当然の道理だと思う。っていうか減らなかったらおかしい。
お腹が鳴りそうになったから、腹に力を加えて、どうにか鳴らないようにする。お腹の鳴る音って、あんまり聞かれたくないものだ。

は今さっきまで、リビングのソファーに座って、テレビを二人と一緒に見ていたわけなんだけど、何かをつくろうかとその場から立ち上がり、台所へと足を向かわせた。
すると、その行動を不思議に思ったのか、政宗が「おい」と呼びかけて来る。



「ん、何?」

「何処に行くんだよ」

「ああ、台所。昼食、作ろうと思ってさー」

「昼食……? 昼食って、何だ?」

「え? あ、ああ、あのー、此処では一日三食なんだよ。うん。昼食は昼に食べるご飯の事」

「一日、三食……か?へえ……。昼に、食べるのか」



政宗は、の言葉に少し考えるような仕草を見せる。うーん、格好良い人が何かを考えている様子っていうのは、なんて言うか……良い。良いよ!
そのあと、政宗はに俯かせていた視線を向かせ、口を開いた。



「俺も、手伝う」



一瞬、驚いた。ちょッ……、いろいろなサイトで鬼畜とか言われてる、奥州筆頭の方が、手伝いを……!
いや、え。ちょっと待って。なんていうかさ、微妙に 優しく ないか。この人。

突然、降って沸いた優しさに感謝しつつ、「いいの?」と問いかけると、政宗は頭を掻きながら「Yes! 世話になってるんだし、何か手伝わねーとな。Give and take ……だろ」と笑みを浮かべた。
凄く助かる。と、言っても、そこまで凝ったものは作ろうと思っていないのだけれど。
胸がぽっと暖かくなるのを感じつつ、「有難う、嬉しいなあ」と感謝を述べた。すると、政宗は笑みを深くし、「O.K. じゃあ……何を作るんだ?」と訊いてきた。
何って……何を作ろう。ちょうどインスタント食品あるし、それで良いのでは。アレだよ。簡単だよ。
お湯注いだりお湯注いだりお湯注いだりして終わりだよ。

そう思って、インスタント食品。もとい、カップラーメンを「はい」とか言いつつ、政宗に手渡した。
政宗の眉がひそめられる。



「何だ、これ」

「え、カップラーメン、インスタントだよ、インスタント。うん、楽々ー」

「……カップラーメン……? インスタント?」

「そうそう。お湯を注いだら三分程度でラーメンっていう美味しいモノができるんだよー。
 インスタントは……なんていえば良いのかなあ……。機械で大量生産された、食べ物? うん、そんな感じかな」



うーん、と知恵を振り絞って返事をすると、政宗が何やら「…違う」と不機嫌そうな声を漏らした。え? 何が違うのだろうか。
そう思って、「え、何?」と訊いて……みたのがだめだったんだろう。



「……インスタント? カップラーメン?
 HA! 心がこもってないねェ」

「……え、心がこもって……ないって……」

「簡単手ごろで楽々は確かに良いかも知れねェが、俺は心がこもってない料理は許さねぇ、You see?」

「……え、えーっと……?簡単に言うと、政宗さんは、インスタント食品が嫌い、と?」

「嫌いとまでは言わねぇが。心をこめて作ったモンしか、普通食いたくねぇだろうが」



そういって、政宗は「まして、こんなモン……」と、カップラーメンを持った手をひらひらとさせる。揺れるカップラーメン。それを一瞥し政宗は何やら嫌そうな表情を浮かべ、 に、手渡してきた。

なんていうか。
心のこもった料理、って手作りの事を言うのかな。そうだろうな。……こだわり派ですか、政宗さん。

そんな事を思いつつ怒りに触れないように、「だったら、手作りで作りま……しょう、か?」と言うと、政宗は首を縦に頷かせ、「当然だろ」と言って、「俺も手伝うし、な」と続けた。


かくして、昼食を政宗と一緒に作る事になった。
メニューは、御飯に、みそ汁に、卵焼き。簡単でにも作れるメニューを選んだ。

っていうか、政宗と一緒に御飯作れるなんてアレか。ゲームで言う所、親睦イベントみたいな。うん、どれだけゲーム脳。
それにしても、親睦、かあ……。仲良くなれるかな……うん、仲良くなれるよね! 今以上に、きっと! ……多分。

……というか。
政宗が料理してる所なんて絶対に見られないシロモノだろう。見たと言う人が居るならば、拍手喝采物だ。っていうか何年生きているのですか、と訊きたい。
きっと、多分……お目にかかれることは少ないだろう。うん、目に焼き付けておこう!

そんな事を思って、料理を作り始めた………ら。



「……ま、政宗さんってやっぱり料理上手なんですね……」

「こんなモン、朝飯前だろうが」

「……えっと、ってすること、もしや……っていうか完全に無い……よね……」



凄い、としか言い様が無かった。
手際が良い。アレか。本当に。この人は上手すぎないか。料理作るの。流石としか言い様がない。
格好良くて、料理も作れるなんて。最高だよ……! 政宗…ッ! 婿に来てください。

政宗の手際のよさに見惚れつつ、心の中ではそんな事を考えていた。
するとじわじわと浮かんでくる、凄いな、という気持ちと、何の役にも立ってない…! という、切なさ。あれ、どうしよう。何もすることが無い。役に立って無い。え? もしかして、邪魔?

何やら、気を少し落としていたら。政宗が「……じゃあ、頼み事がある」と言葉を小さく紡いだ。



「……卵焼き、ぐらい。作れるだろ?」

「卵焼き? うん。作れるよー」

「じゃあ、そうだな。俺は……、味噌汁を作る。お前は、卵焼きを作れ。O.K?」

「え、うん。わかった。オーケー!」



突然の提案に、少し驚きつつも、返事をした。
すると、それを訊いて、政宗は「よろしくな」と言うと、直ぐに味噌汁を作り始めた。
やっぱり、買いだめをしていても、料理に使う材料で無いものがある。そういうのは、冷蔵庫に入っているもので、代用だ。
フライパンに油をひき、卵焼きを作りながら、は政宗の手際に、感心をしていた。

政宗が料理を作る眼差しは真剣で──、なんだか見惚れそうなものだった。まあ、見惚れていたら卵焼きが焦げること山の如しなので、政宗に向けていた視線は直ぐに戻したけれども。
フライパンの上で焼ける卵からかすかだけれど、ほわりとした匂いが漂ってくる。
その匂いに反応して、又もや鳴りそうなお腹を根性で押さえつつ──は、料理を続けた。





「出来た!」

「なかなか、美味そうだな」

「そうだね、冷めないうちに食べよう、うん」



そういって、水に濡らして、絞った布巾を手に持ち、テーブルを拭いてから、出来上がった御飯をドンドン運んだ。

湯気が立っている味噌汁は、良い匂いがする。……おいしそう、という一言に尽きると思う。

テーブルに御飯を運んでいると、幸村がテレビに向けていた目をコチラに向け、驚いた表情を浮かべた。
そして、その場から立ち上がり、「え。え! ええ!」と驚いたような声を発する。
どうしたのだろう。そう思って、「あの……」と声を掛けると、幸村が「す、すみませぬー!」と幸村がその場で土下座を繰り出した。え。一体、何ですか。

「え、え!?」と焦って声を上げると、「某、何も手伝わず……、それもこれも、テレビが面白いからで──!」と必死な声を出し、その後、目に見えてしゅんとし「いえ……テレビのせいではございませぬな。某、某……腹を切ってお詫び申し上げるでござるーーーー!!」と言い出した。



「え、ええええ! 何言ってるの! 訳わからんですよ、っていうか切腹! やめて!」

「で、でででですがっ」



幸村が、悲しげに瞳を伏せる。は持っていたお盆を近くに置き、「全然、気にしていないから! ね!」と幸村の肩を軽く叩く。すると、幸村は伏せていた瞳を上げ「殿……」と小さな声での名前を呼んだ。おおう、何ですか。微妙に掠れていたから色っぽいですよ幸村さん。
……そんな事を考えつつ、「ん?」と首を傾げると、の近くに置いてあるお盆に目をやり、「それ、運ばせてもらっても宜しいでござるか?」と言う。それに、「……有難う」と答えると、幸村は笑みを浮かべ「いえ!」とさっきとは打って変わって元気な声で返事をし、お盆をとった。

──正直に言って、お盆の置いてあるところと、御飯が並べてある机は、そこまで距離が無い。けれど、でも。
は、幸村の心遣いに笑みを浮かべた。



テーブルに全部の御飯を並べて終え、各々が座ってから手を合わせていただきます、と言う。
幸村も、手をパン! と盛大に合わせ、「いただくでござりまするぞ、殿っ!」と言って来た。
政宗は、「いただきます」と、静かに言って、御飯に手を付け始める。


はお味噌汁の入っているおわんを手に取って、口につけた。──途端、口に広がる味。お、美味しい……!
なんですかこれ。政宗さん、貴方三ツ星シェフですか。ちょっと本当に、もう!

お味噌汁の味が、とてつもなく美味しくて、「美味しいっ! 政宗さんってば、凄いね…・・・!!」と言うと、
政宗は薄く笑みを浮かべ、の作った卵焼きに目をやってから、
「そうか……? お前の卵焼きも、美味しいぜ」と返してきた。

うああ多分お世辞だろうけれど、美味しいって言われると、とてつもなく
嬉 し い ん で す が …… !
微妙な気恥ずかしさと嬉しさで、頬が赤く染まる。けれど、隠そうとは思わない──。は綻ぶ頬をそのままに、言葉を発した。


「……うん、有難う」

「ああ、You're welcome!」

殿が、卵焼きを作ったのでござるか。
 そして、政宗殿が、味噌汁を。……この様な特技があったとは、某、一生の不覚っ!」

「いや、意味がわからねえから」



幸村の言葉に、政宗が少しツッコミを入れている。何やら。ホノボノしているなあ、と心の隅で思いつつ、は仲良しそうな二人の姿を見られて、何だか嬉しかった。

少し笑ってしまいそうだったのだが、微妙にそれはマズイのでは! とか思って、
必死で抑えたら、余計に変な顔だったらしく、政宗に「お前……、strangeだな……」と言われた。

微妙に意味がわからなくて、その後、英和辞書で調べてみたら、
『奇妙、変』と載っていたので、それが微妙に切なかったのだけれど。
……っていうか、え。 酷くない……?



NEXT


後書き。


少しずつ仲良くなっていくのが好きです。萌えです。(最悪)

題名が安直なのは思いつかなかっただけです。題名つけるの苦手。お題サイトから借りようかな…。

それではではー。

2006.3.11