Act8.コタツとリモコンは渡しません





テレビ画面には、ニュースを伝えるアナウンサーがうつっている。
昨日、何々があった、とか、今日未明、何々があったとか。には縁の遠い話を熱心に、喋っている。
こたつに入りつつ、は、人知れずため息をついた。


ニュース番組を見よう、と言い始めたのは政宗だった。


何時だっただろうか、ニュース番組を見せてから、政宗はそれを痛く気に入って、それから、良くニュース番組を見るようになった。
他にも、天気予報を見るのが好きなようで、「直ぐに色々な土地の天気がわかるなんて、COOLじゃねぇか!」と、なにやら顔をほころばせながら言っていた。



其れに対して、幸村は何と言うか、教育番組を見るのが好きなようだ。
この前、政宗と共に英語を教えている番組を見ながら、「ディス イズ ア ペン!」と叫んでいたことは今でも忘れない。忘れられない。



はまあ、アニメとかドラマとか、ニュースとか何でも見れるモンは見るので、
見たい番組が無い限り、政宗達にはリモコンを勝手に動かさせていた。
今日も、朝からあんまり見るものが無いので、政宗達に勝手にチャンネル変えさせていた。

いつもなら、穏便に 某は午後からコレを見るでござるー とか じゃあ俺は午前はこれを見るぜー って
リモコンを奪い合うこともなく、進んでいった。のに。


今日に限って、違った。


いつものようにニュース番組を朝から見ていると、幸村が不満そうに口を尖らせて、「某はニュース番組より教育番組が見たいで御座る…」ともらした。

それに、政宗はいち早く反応し、怪訝な表情を見せて、言葉を紡いだ。





「What kind of meaning?どういう意味だ?
今日はニュース番組を見るって、昨日決めたじゃねぇか。」

「でも─…嫌でござる。某は、今から教育番組を見たいで御座るよ、政宗殿。」

「Ah?怒るぜ、そろそろ。お前の希望は昨日きいたじゃねぇか。普通だったら今日は俺が見たい番組を見る番だろ!
Do you understand!?」

「そ、それは…。でも、この前、某が見ていた番組を途中で変えたではありませぬかっ!」

「…HA!ちっちゃい事でイジイジイジイジ、過ぎた事だ、いいじゃねぇか!」

「!言ってる事が矛盾してはござらぬかっ、政宗殿ォォォ!!?」





ハーイ、先生ー。の目の前で二人がリモコン取り合ってまーす。
っていうかさ、そんな両端から引っ張ったら、壊れるから。
わかってるのか、二人は。壊れたらどうするんだ、本当に。


そんな事を思いつつ、こたつの上に置いた飲み物の入っているコップを手に取り、口に運んだ。
止めるべきか、否か。そんな事を考えているうちにも、二人の口げんかはエスカレートしていった。





「今日はニュース番組を見る!決めただろうが!っていうかそれよりも、お前こたつの幅取りすぎなんだよ!
出て行けっ!Leave!!」出て行け!!

「なっ!某よりも、政宗どのの方がこたつの幅を取っているでござろう!某にはそう見えるでござる!
政宗殿こそ、この場から出て行ってくだされ!」

「お前、何で異国語がわかるんだよッ!」

「ふふん、教育番組で少しは勉強したのでござるよ!某も。
文だって言えるでござる!」

「HA!勉強したことは褒めるがな、文なんか言えねぇだろ。嘘つくんじゃねぇっ!」

「言えるに決まっているでござろうっ!!」

「じゃあ言ってみろよ!」

「えっと…、
あ、I am a pen!!」

「お前は馬鹿か── !!」






なんていうか。
何だ、この目の前で繰り広げられているのは。
二人とも、テレビ画面の前に立って、今にも殴りかかりそうな勢いで口げんかをしている。うわあ…。


政宗の言葉に気分を害したようで、
幸村は「む。酷いでござるよ!馬鹿では無いッ!」と、言っている。
政宗が其れに対し、「お前、今さっき言った言葉の意味、わかってるのか?」と呆れ気味に言葉を紡いでいた。


リモコンの争奪戦は何処へやら、二人は何やら違う事で口げんかを始めた。
「馬鹿とは何で御座るか!某これでも一応、智将…ッ!!」「HA!自分のことを、“わたしはペンです”って言う奴が智将なのかよ。」「そ、それは…だって、“てれび” で…!政宗殿こそ、馬鹿でござろう!」と、言っている。



そろそろ止めないとヤバイかも知れない。

政宗が何処からだしたのか、剣を持ち出し、「馬鹿ァ?…悪い子には、お仕置きしねェとなあ」と言って、構えた。
剣が青白い光を発し、バチバチ言っているからこれはアレだ。
政宗の固有技の、HELL DRAGONだ。
わー、生で見られるなんて…ってそう言ってる場合じゃない!



こたつから出て、政宗に向かって必死で「ちょっ!止めて!家が、家が壊れる!!!」と言う。
止まらない。あああ誰か止めてくれ本当に止めてください!
神様仏様ザビー様…!!助けて助けて助けて!!



そんなの祈りが通じたのか、何度か言ってから、政宗はHELL DRAGONをやめてくれた。途中で。
おおお神様仏様ザビー様助かりました!愛ユエニ!今ならザビー教に入っても良い!良いよ!
嬉しさの余り、少し変な方向に思考回路が行く。

…何はともあれ、良かった。
幸村も、槍を構えつつあって、しかも何か技を出そうとしていたみたいだったから…。助かった。本当に。



はあ、と安堵のため息をつきつつ、
「…ちょ、本当に、の家で技出すの禁止…」と言う。
その後、政宗が「…Sorry,」と言って。続けるように幸村が「ごめんなさいでござる…」と小さく呟いてきた。


わ、分かれば良いんだよ。うん、分かれば…。


そんな事を思いつつ、こたつの中に戻り、こたつの机に突っ伏した。
心臓が凄い音を立てているのがわかる。

政宗達も、こたつに入り、静かに黙った。
まあ、リモコンの奪い合いはまだ続いていたけれど。





アナウンサーが、そろそろ桜の咲く時季だと、言っていた。
実際、もう桜は咲いているらしい。ソメイヨシノ。確かそう言っていた。

少し、そのソメイヨシノの映像が流れた。うわあ、桜はやっぱり綺麗だなあ。
…そうだ、今度はお花見に行こう。政宗は団子より花!みたいな感じがするけど、
幸村は花より団子!みたいな感じがするなあ。

どんな反応を取るのか。今からでも楽しみだ。絶対にいこう!うん。

そんな事を心の中に秘めつつ、はこたつの暖かさに誘われて眠ってしまった。


眠る前、「しょうがねぇな、教育番組…そう、半刻だけ、見てやるよ!」と言う政宗の少々げんなりしたような声と、
幸村の弾んだ「やった!某嬉しいでござる!」と言う声が少しだけ聞こえた。





NEXT


後書き。


アレ。ちょっと待って。短いね!自分!!
何でだろう。…え、何で?
っていうか、幸村は智将だったらしいですね。あ、智将は知将とも書きますー。ハイ。
それにしても、幸村に「I am a pen!」といわせることが出来て幸せです。ウヘヘ。言わせたかったんです。

それではではー。

2006.3.21