ぽかぽかとした陽気、だけど、少し肌寒い空気。

もうすぐ、春 だ。




Act9.ケーキを買いに





ケーキが食べたい。

突然なんだコイツは。みたいな感じだけど、ケーキが食べたい。
何で急にこんな事を思ったかと言うと、今さっきテレビにて、ケーキの特集がやっていたのだ。
なんでだか、わからないけれど。テレビを通してみるケーキはとてもおいしそうに見える。

いや、テレビを通さずに見ても美味しそうだけど!


最初の方は、「うわーケーキだー」とかで終わっていったのだけど、駄目だった。
何もすることがなく、ケーキ特集をじっと見ていたら、お腹が空いてきた。昼ごはんを食べたばかりだと言うのに。

アレだ。これはケーキの魔法だ。そうなんだ!



止めることの出来ない食欲。横で幸村も食べたそうにしていたから、ちょうど良い!
ケーキを買いに行こう。





「幸村さん」


「? 何でござるー?」


「ケーキ、買いに行こう!」


「けえき、とは今さっきのてれびに写っていた、あの美味しそうな甘味…!!!
行くっ、着いて行かせて頂きますぞ、殿ッ!」





の提案に、嬉しそうに顔を綻ばせて、幸村は言う。
おお、犬みたいですぞ。なんか尻尾が見えるぞ、幸村ー!

そんな事を思いつつ、言葉を続けた。





「じゃ、行こうかー。政宗さんも来る? ってかおいでー。一緒に行こうッ!」


「ああ、行く。面白そうだしな…ケーキってヤツは、俺も見たこと、食ったことがねェからな」





そう言って、政宗は読んでいた新聞紙を机の上に置き、に近づいてきた。
玄関へ行って、靴を履いて、外へ出る。
幸村が何やらワクワクしているようで、少し動きがせわしない。


が、近くにあるケーキ屋の中で一番好きなところへ行くため、歩き出した。





の、好きなケーキ屋さんで良いよね?」


「ああ、良いぜ。というか、俺は此処についての知識が皆無だからな。何処でも良い」


「某も、美味しければ! 何処でも良いでござるよー!」





そうだよね、知ってたら驚きだ。
ここのどこそこのなになにに美味しいケーキ屋さんがあるでござるよ! って急に幸村が言ったら、
驚きを通り越して感動する。


そんな事を考えつつ、歩いていると、政宗がふ、と立ち止まった。

どうしたのだろうか、と思って政宗のほうに視線を向ける。
政宗は、が通りすぎた公園に視線を向けている。

目の先をたどれば、そこには 桜が。


政宗の所へUターンして、話しかける。





「政宗さん、どうしたの?」


「cherry tree を、少し見てた」


「…えっと、桜の木を、見てたんだ?」


「そう。でも、まだ全然咲いてねぇ」


「そうだね、まだ……蕾のままだよ」






がそういうと、政宗は「ふうん」と言って、桜から目を逸らした。

幸村が、の手を取って、「早く、行きましょうぞ!」と、を急かすように手を引っ張る。
だけど、其れに嫌な感じはしない。寧ろ、癒される。可愛い。


政宗の事が少し気がかりだったけれど、ちゃんと着いてきてくれているようで良かった。
幸村が「政宗殿もっ、早くっ」と、言って、少し達と離れて後ろに居る政宗を呼ぶ。


政宗は、少し驚いたような表情を浮かべて、でも、少し嬉しそうに微笑んで、幸村の隣へと、小走りで来た。
何だ。幸村×政宗ですか。

腐っている思考回路。はは、と自嘲気味な言葉を漏らしつつ、ケーキ屋への道を急いだ。





ケーキ屋には、まばらな人だかりが出来ている。
主に、女の人が多かったけれど。ケーキを見て、「美味しそう……」と呟いている人が居る。
店員に、ケーキを注文している人も居る。


ショウウィンドウに並べられる、ケーキを見て、幸村が手に力を込めたのがわかった。
政宗も、小さく、短く口笛を吹いた。






「うまそうじゃねぇか」


「そ、そうでござるな、美味しそうでござる…!」


「そだねー、幸村さんに政宗さんは、何頼むー?
は……そうだなー……」





店内に溢れる、甘い匂い。
それだけでも、幸村の食欲をそそるのだろう、幸村は本当に嬉しそうにケーキを選んでいた。
……女の子みたい、とか思っちゃ駄目なんだね! うん。


政宗さんは、直ぐにケーキを決めたのだけど、幸村はひたすら遅かった。
どうやら、苺のショートケーキにするか、チョコレートケーキにするかで迷っている様子。


「コチラも美味しそうでござるし、こっちも…!」と、二つのケーキを交互に見ては、唸る姿は、
見ていてなんだか少し可愛く思えた。


二つ、買ってあげても良いのだけれど、あいにく、手持ちはそんなに無い。
政宗が、「…遅え」と、少しいらだったように、つぶやいた。オイオイ、もうちょっと待ってあげてくださいよ!

そんな事を思いつつ、「はは……」と少々、苦笑をもらしつつ、幸村に言葉をかけた。





「…幸村さーん、決まった?」


「じゃ、じゃあ、こっちを…!」


「ん、わかった。注文してくるねー」





そういって、店員をショウウィンドウ越しに呼びとめ、注文する。
お持ち帰り用の箱に入れてもらい、お金を払って、二人と共に、ケーキ屋を出た。


途端、顔に当たる暖かいような、寒いような、そんな感じの空気。
日差しはポカポカと暖かいのだけれど、空気は少し肌寒い。


幸村が、「某が持つでござりまするよ、殿っ!」と、言って、
に手を差し出す。


…大丈夫だろうか。うん、大丈夫だよね。
幸村がまさか、そんな、……ケーキの入ってる箱を振り回しそう、な…そんなことしないよね!


そんな事を思いつつ、「じゃあ、お願いしようかな」と言って、幸村にケーキの入った箱を渡す。
すると幸村は、「某、大事に大事に持たせていただきますぞっ!」と、意気込んで、そう言った。






幸村がケーキの入った箱を振り回すことも無く、政宗が急に立ち止まることもなく、帰りは直ぐに家に着いた。


手を洗って、口をゆすいで。
その後、テレビを見ながらケーキを食べた。


甘くて、美味しい。甘いといっても、くどいような甘さではなく、控えめな甘さだった。





「…お、おいしゅうござります、殿っ!!」


「そうだね、美味しいよねっ」


「某、このような甘味、初めて食べました……っ!」





そういって、幸村は「か、感動したでござるよっ、殿ォォォ!!」と、言葉を続けた。
なんというか、此処まで喜んでくれると、なんか嬉しい。買ってよかった、って思える。

少し頬を緩ませていると、政宗も、「美味いな、これは」と言って、舌鼓を打っていた。





空は晴れていて、窓から入る日差しがポカポカした。
もうすぐ、春、だ。





NEXT


後書き。


…ケーキ。食べたい。とか思ってたんです…。(何)
昔の連載のストックがあるんで、見直してたら…、ケーキの話しがあったんで、
其れに大幅修正を加えて、(っていうか原型残ってません。)書いてましたー。


次のお話しは、お花見、ですかね!


2006.3.27
名前変換出来て無かった部分をできるように。教えてくださり有難うございました!