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過去は過去。未来は未来。 そう割り切って生きれる人は凄い。 記憶として残っているもの、 其れは全て、過去の物。 もう、戻らない、物。 Act27.記憶として、残っているもの 大声を張り上げて、走り出したのに。 自分の足の速さが、とてつもなく遅く思えた。 何で、こんなに遅いの。 何で、こんなにも弱いの? 何で、を守るため、元就が死ななきゃならないの。 元就が、を守るため、死んだとしたら。 は一生、自分の命に負い目を感じて生きていく事になるだろう。 あの時、がもっと強ければ。 あの時、が元就を助けることが出来たならば。 葛藤は葛藤、後悔は後悔でしか、無いから。 現在を、今を、後悔しないために、生きるしかないんだ。 お願いだから、もう少し早く走って、自分の足。 元就に、死んで欲しくない。生きていて、欲しい。 偽善者、かも知れないけれど。 は、そう願うから。 「…殿!!!」 唐突に、若い男の人の声が聞こえた。 瞬間、手を止め、その声がした方向に振り返った政宗。 は、元就の近くまで、やっと着いて。 自分の方向に元就を引っ張って、抱きつくように持った。 元就の首には、切り傷があり、其処から血が溢れていた。 は、自分の衣服をちぎって、その患部に当てた。 あともう少し遅かったら、元就は…。 其処まで考えて、思考を中断した。生きている、それだけで良いじゃないか。 本当に怖かった。 元就が死ぬかと思った。 本当に、本当に。怖くて、悲しくて。 涙が、溢れそうになった。 その時、元就の声が、少し弱々しいが、小さく聞こえた。 「…………」 「…も、元就……ッ 死ななくて、死ななくて……良かったよぉ…ッ」 いまさら、涙がボロボロ溢れてきて。 元就が小さく笑って、自分の鎧のついていない方の服の裾で涙を拭いた。 「…言ったであろう、我は、を、命をかけて守ると……」 「……っ、は…、元就に死んで、助けて貰う命…、いらない…ッ!」 何か話したいのに、言葉が出てこない。 少し戸惑っていると、又若い男の人の声が聞こえてきた。 「……長曾我部元親、おとしました。」 「ほお。Cool だねぇ。 四国、制覇…ってか。長曾我部の野郎は?」 「…成実殿が連れてくるかと。」 「…ふうん、首は取ってねぇのか。」 「…とっておいた方が、宜しかったのでしょうか?」 「いいや、良いぜ。それよりも。」 そう言って、政宗がこっちを向いた。 瞬間目が合った。 今さっきまで、の存在に気づいてなかったのだろうか、 政宗は凄く驚いたような顔を見せて、に近づいてきた。 …どうしよう、怖い。 毛利の服の裾を、少し力をこめて握る。 優しかった、温かかった。 だけど、其れは全て昔の事。 「…、……?」 「…ッ……」 名前を呼ばれ、怖くなった。 驚いたような、少し震えたような声だったけれど、怖かった。 政宗が、怖い。 そう、思った。 今の政宗なら、の首なんか直ぐに取ってしまうだろうし。 を、いたぶって殺すことも可能だろう。 死への、恐怖。 その恐怖が、を制覇していた。 「……なんで、此処に……」 「…あ…」 「もう、会えないと、思ってたのに─…!」 そう言って、政宗が手を伸ばしてきた。 手が、震えていたのに、気づけなかった。 震えていた、のに。 政宗の手が、自分の手に付いたとき、反射的に振り払ってしまった。 政宗が、驚いたような目をして、を見る。 「…嫌だ…!」 「……」 「嫌、触らないでよッ! 止めて、近づかないでよ…!!!」 「…、俺…」 「…っ、やだ、やだ、やだ……ッ!!」 頭の中は恐怖が支配していて、 全然言葉が思い浮かばなくて、“嫌”、“近寄らないで”と、しか、言えなかった。 会って言おうとしていた事も、全て、何もかも忘れてしまった。 政宗は、一瞬泣きそうな表情を見せたけれど、直ぐに苦笑をして、 言葉を発した。 「……ごめん、な。」 何で、謝るのか、分からなかった。 何に向けて謝っているのかも、分からなかった。 頭が回らないで居ると、後ろから又若い男の人の声が聞こえた。 政宗はその人の声を聞き、踵を返し、歩いていった。 「よーお、成実。捕まえてきたんだな?」 「はい、長曾我部元親、捕まえてまいりました。」 「Thank you!」 政宗が軽く口笛を鳴らして、そう言う。 元親を、捕まえて…。 成実さんの方を見ると、確かに両手を縛られた元親が立っていた。 政宗を睨むように見ている。 「Ha!何だよ、おっかないねェ!」 「…てめェ…。」 「…Ah…、まあ良いけどな。 なあ、降伏しねぇ?」 「…降伏…して、何になるんだ…」 「…何言ってやがる」 「俺の殺された部下は…、もう、戻ってこねぇのに…。」 そういって、元親は視線を落とした。 今、元親が政宗に降伏したとしても、誰も戻ってこない。 そんな事、当たり前の事。 元親は其れを信じたくないのか、政宗の「降伏しろ」と言う声に何も答えない。 「…なあ、最後にもう一度だけ、聞く。 降伏しろ。そして俺の下に付け、そしたら、お前は生かす。 …あそこに転がっている、男も。……も。」 「……転がって…、って…! 元就……!!!?!?何で、お前達…ッ」 元親は、至極驚いたように声を発した。 そんな元親を見て、政宗は、静かに声を出す。 「…自分の命と、仲間の命。 …死んでしまった者たちへの、未練。 どっちが大切か、考えろ!」 「……」 「死んだ奴ら、生きてる奴ら、どっちが大切かは、分かるだろ。」 「………」 元親は上を向けていた顔をまた、下に向け、小さく「…降伏…する…」と呟いた。 其れを聞いて、政宗は嬉しそうに「よし!」と言い、成実さんに「他の奴ら、呼びに行くぞ!」と、嬉しそうに言った。 成実さんは其れを聞いて直ぐに他の人を呼びに行く。 政宗も、子十郎さんも、一緒に成実さんに着いていった。 元親は、政宗さん達が見えなくなった瞬間、膝を砂浜につかせた。 「…元親…」 「…俺、一体、何やってんだろうな…」 「…」 「死んだ部下が、帰ってくる筈ねぇのに…、希望を捨て切れなかった。 馬鹿だ…、…俺は…」 どんどん、小さくなっていく、声。 その声を聞いて、元就が動かすと痛むであろう足を、 必死に動かし、から離れ、元親の傍に行き、自分の武器で元親の頭を叩いた。 「…ッ!?いってェ!!」 「…お前は、馬鹿だ、馬鹿過ぎて、呆れる。本当に。」 「……ンな、事…わかってるっつうの…」 「死んでしまったら、もう終わりなのだぞ。 分かっているのか?嘆いても、絶対に戻っては来ない。」 「……」 「その事を、わかれ。 …お前に生きていて欲しいから、部下達は戦ったのだ。 お前が、そんなに落ち込んでいてどうする。」 其処まで言って、元就は言葉を切った。 元親は、顔を下に向け、何も言う事が無い、と言った様子だった。 「お前が、家臣を大事に思っていたことは、わかる。 お前と居る時、お前の家臣も皆、笑顔だった。其れは、良い事だろう。 だがな、この時代は戦国時代。戦が、山ほどある。 家臣達と共に、戦に出る以上、死ぬことは予測できたはずだ。」 「…予想、出来たからと言って…、も。 心の準備は出来ないだろうが……」 「…お前は、弱い。 だからこそ、誰かの手を借りなければ立っておられぬ。」 「…」 「そんなお前が、 “誰かを助ける”?“蘇ることを信じたい?”? …馬鹿な事を言うな!我らは人間だ!神でも何でも無いのだぞ!」 「…ッ、でもよ…!」 「…今、出来る事!其れを一つあげるならば、 部下の冥福を祈る事では無いのか。其れが、一番だろう。 蘇ることを信じるのは、止めろ。 信じても、どうにもならない事が有ると、分かれ。」 「………。そう、だな……」 元親は、そう小さく呟いて、立ち上がった。 元就は、其れを見て、少し安心したように、元就は薄く笑った。 元就は、緊張が取れたのか、足をもつれさせ、倒れそうになった。 其れを元親が支える。 その後、少し苦笑し、声を発した。 「おいおい、元就、こんな…、ボロボロになって。なさけねぇの!」 「…う、うるさいッ!御主こそ、傷が、かなり付いているではないか!」 「…へーえ。うっわ。足痛いなー。」 「…痛くなど無い…、って触るな!」 「へ?痛くないんだろ?」 「…ッ、い、痛い…から、止めろ!」 「正直に言えば良いんだよ。 ……俺は、今から部下を埋葬しに行くけど。はどうする?」 元親が、少し苦笑しながら、に話題をふった。 は其れに「元親に、ついていく。」と言い、立ち上がり、元親の傍に歩き出した。 …それにしても。 あんなにも凹んでいたのに、元親は今、少し元気を取り戻したようだ。 きっと、元就のお陰だろう。 元就の、言葉には、少し棘があるけれど、 どれもこれも、全てきっと、元親に前を向いて欲しいから言った言葉。だから。 優しいな、と思った。 「……じゃあ、行くか。 元就、お前はどうする?」 「我は疲れた。此処で寝ておる。終わったら迎えに来い。」 「…おまえ…」 元親は、少し呆れたように言葉を発したが、もう元就は夢の中。 目をつぶり、寝息を立てている。 だから、元親の声は、聞こえていないだろう。 …っていうか、寝るの最強的に早くないか、元就。 そんな事を少し思いながら、元親の後ろを歩く。 元親は、おびただしい程の死体が有る、場所へと直行した。 血で砂浜が赤く染まっている。 むせ返るほどの血の匂いに、必死に吐き気をこらえる。 元親は、死体を踏まないように、進み。ある男の人の死体を、手にとって。 小さく呟いていた。 唇の動きで、…まあ、推測だけれど。“ありがとう”と言っているように思えた。 は、元親同様、死体を踏まないように、元親の傍へ行き、「どうしたの?」と聞いた。 「…こいつ…俺の一番の家臣で、さ。 …私が死んだときは、水葬してくださいね、って。言ってやがって。 …まあ、俺も半分少し冗談だと思ったから…“ああ、良いぜ!俺の手で、水葬してやるよ”、って。 言ったんだがな…。本当に、なるなんて…」 はは、と少し自嘲めいた様に、元親は笑った。 その笑いが何だか痛くて。は笑いを返す事が出来なかった。 元親は、その家臣を背中に背負い、又歩き出した。 無言のまま歩いて、ついた場所は、海。 海の近くでも、戦闘が有ったのだろう。砂浜に所々血がついていた。 太陽は赤みを帯び、その光を受け、海も赤みを帯びていた。 その海の中に、元親は迷いも無く入っていった。 それに着いていくように、も少し戸惑いながら、海に入った。 「……なあ、。 お前は、輪廻、って知ってるか?」 が元親の隣についたとき、元親は不意にそう言った。 が言葉に詰まっていると、元親は、背負っていた人を自身の手のひらに乗せ、海に流した。 海の潮に乗り、少しの間は浮いていたが、どんどん遠くに行きながら、沈んでいく、人。 「…輪廻?」 「ああ、輪廻。 輪廻って、……しらねぇか。」 そう言って、元親は苦笑した。 の方を向かず、海の、大事な家臣さんが沈んだ場所を見つめ、淡々と話す。 「輪廻、と言うのは…、肉体は滅びても、魂だけは残り、ずっと生き続ける…、 死んでも、他の人間として、生きている。…って感じか。」 「…へえ…」 「俺は、輪廻を、信じてる。 俺の死んでしまった家臣に、…又、輪廻、と言う物があれば、会えるだろ。 だから、俺は信じてる。…気休め、かもしんねぇけどな。」 そう言って、又元親は苦笑した。 輪廻、と言うものがあるならば。そう思って、生きていくのも良いかも知れない。 が、もし、死んだとしても。 又何時か、輪廻、で。元親達に出会える日があるのかもしれない、と少しだけ思った。 夕日が沈む、海が紅に染まる。 元親の頬が、その光を浴びて。 その光をまぶしそうともせずに、ずっと海と夕日とを見つめる元親の横顔は、 何だか、切ない程に悲しく見えて、 元親が、泣くのを、必死に我慢しているように、見えた。 →NEXT −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 水葬。はっきり言って長くてもう自分でも訳わからん。 読んでる人はもっと訳わからんね! 次のお話しは伊達メインかな、うん。 伊達の“ごめんね”には色々意味がありまして! っていうか、何でこんなにシリアス続いてるの、自分!ギャー。オアー!! 次の文もシリアスになる可能性大。 …ああああかん!はやく楽しいモノを! っていうか、実はというと、隠しがありまする。 元就が死ぬバージョン。よければ探してみてください。 わからなかったならば、スグサマに教えさせていただきます。 表に出すのは気が引けました。死ネタ嫌いな人も居るでしょうし……。 おひねり、というのは、WEB拍手に点数がついたようなモノです。 こちらのコメントには、返事がつきません…!すいません。 要望、感想など、お待ちしております。 2006.6.5 大幅修正 |